夜の保護区に、月が昇る。 月が昇り、歌声が上る。 歌声が上り――ぼとりと、フェンスをよじ登っていた人影が落ちる。その隣の人影は黙々と登り続けたが、その頭上にふわりと何かが落ちかかり、結局は先の人影の後を追った。 「よし、かかったかかった」 「悪あがきの浅知恵、といったところか」 月光の下で、フェンスを見上げる二つの人影があった。