「また君か」
「またあんた?」
互いに似たようなことを言って、互いに、似たように顔をしかめる。
片方は王立博物館の腕章をした二十代後半くらいの青年で、片方は下半身が魚のようになった少女だった。
「他に人いないの? 見飽きちゃったわよ」
「それについては、俺も同意見だよ。毎回毎回、保護区を抜け出してこんなところに売り払われてなかったら、顔を合わせる機会もないだろうのにね。何を考えてるんだ一体」
「うるさいわね。ちょっと、じろじろ見ないでよ、変態!」
「へんた・・・。――連れて行っていいですか?」
「ああ、頼むよ。いつもゴクローさん」
「仕事ですから。失礼します」
煩雑に出入りする警吏たちに軽く頭を下げて、青年は、大きな水槽を押していった。勿論、推進力には反重力を使っている。ほぼ成人した「人魚」が泳ぎ回る水槽は、自力で運ぶには大きすぎる。