一章

 教室の中は、苦痛の場所でしかなかった。友達もいない。先生も好きになれない。同級生は、ただの他人どころか、いつ加害者になるか判らない、怪物のようなものだった。

「幽霊みたい」

「あ、言えてる。この前、後ろに立っててさあ。何にも喋らないで、立ってるだけ。ぞっとしたあ」

「怖いよね―」

 そんな事を言われたって、直し方なんて知らない。自分が変えられるなら、とっくにやってる。

 登校拒否になってもおかしくないのに、そうしないのは、ただ弱いからだ。学校に行くことをやめて、これ以上家族から疎んじられるのが厭だから。登校拒否をするにも、何かしらの力が要る。

 私には、それがなかった。

 ――誰か、私を見止めて下さい。

 ただ、それだけを望んで、生きていただけ。死ぬ事どころか、閉じ篭る事も選べないほどに、弱かっただけ。

 私には、何もなかった。

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