四章
地味でいて、品のいい調度品。そういったものこそ値が張るのだが、この部屋にはそういったものしかなかった。多くではなく、あくまで控え目に。これが十代半ばの少女の趣味だと知れば、驚く者がほとんどだろう。
潦史も、感心した。しかもそれが、自分の妹であることに。今でなければ、そのことをほめるくらいはしただろう。
「ねえ、座ったら?」
素焼きの茶碗を意味もなく一回転させて、少女――麗春は呆れたような眼差しを向けた。そこでようやく、ぐるぐると部屋の中を歩き回っていた潦史の足が止まる。年齢よりもいくらかは幼く見える、拗ねたようなかおで振り向く。
「少しくらい落ち込ませてくれよ」
「落ち込んでたの? 怒っているのかと思ったわ」
「怒ってなんか、ない」
潦史が天界へ連れて行かれた翌年に生まれた麗春は、数えられるほどしかこの兄には会ったことがないが、二人は仲が良かった。そして麗春は、兄が存外に気遣い屋で神経質なことを知っている。もっとも、馬鹿に見えるくらい大雑把なのも兄の性格の一部なのだが。
今の態度は、半分以上自分自身に腹を立てている気がする。
「ねえ、お兄さん。愚痴くらいなら聞いてあげるわよ?」
初めて会ったときとは逆のことを言い、笑いかける。思い出して、潦史も照れ臭そうに笑った。ようやく、麗春の向かいの椅子に腰を下ろす。
「悪かった。急に押し掛けて、こんな態度取って」
「来てくれたことに文句なんてないわ。それに、こっちから呼ぼうかと思っていたくらいなの。とりあえず、私に鬱陶しい思いをさせた分、話を聞く権利はあるわよね?」
「…はい。その通りです」
「よろしい」
にっこりと微笑んで、麗春は手に入ったばかりの果実と菓子を用意させた。
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