虚言帳

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2008.8

2008 年 8 月 2 日 葉月。

 昨日は、薪能観に行ってその後友人とご飯食べてきました。

 正直、あまり身を入れて観られなかったのですが…話にあまり興味が…(狂言はがっつり観た)。でもあれです。
 行き渡らない明かりって、本当、闇を引き立たせるものですね。舞台に明かりが集まっていて(薪能、の名の通りに三部に分かれている最後の能の部は篝火が主だけれど照明も当てられている)、観ていると、自分よりも前に座っている観客は影としてしか認識できない。照らし出される舞台でさえ、十分に光が行き渡ってはいませんし。
 しかも能って、面をつけての演技。
 観客の中に、そして演者にさえ、人外が混じっていても判らないのじゃないかと思うわけですよ。祭の夜、つまりハレ。身分も性別も彼我さえも混沌としかねない「場」です。混じってたっておかしくないって!(力説)
 …なんて妄想してましたー(苦笑)。

 時間の関係で途中で切り上げて、仕事が終わった友人と合流。一度だけ行ったことのある、なんとなく好きな居酒屋に。
 三人で、結構たのんだ気がするのだけど、ほとんど飲んでないからか料金はそこそこ。外食でお腹一杯食べるのってあまりないな、そう言えば(よく食べます私は)。
 ロフト席だったのだけど、料理が下から受け渡されるという。汁物はちょっとこわかった(苦笑)。やーでも、ロフト、たまたま他のお客はいなくて居心地良かったー。
 しかし何故か、半分くらいはオタク話してた気がする…何故だ。

 それにしても、三人中二人は翌日も仕事という…。
 私はそもそもその予定だったのだけど、友人は休日出勤だそうで。うーん、そっちのが厭かも。

 まあそんなで、仕事行きたくねー、と思いつつ帰宅して、今日出勤したわけです(苦笑)。
 昨日は何故かやたらとばたばたとしていたのだけど、今日はそんなことなかったです。それでも、一時間ちょっと残業って…いくらか仕事見切ってきたのだけど。月の終わりと始めは立て込むからなー。
 そういえば途中、製造部の課長にものっそい悪い態度取ってしまいましたよ…。苛々してたから(未熟)。うー、嫌いな人ならどうでもいいのだけど(え)そうではないので、後悔。
 そして新製品の試食が六時ごろだったもので、思わず試食というより「食べ物だおいしい」という感じで食べてしまった(苦笑)。あ、そうか、試食があったから残業延びたのか(納得)。

 今PCで、基本ループで「ブルーバード」と「88」が流れています。たまに、違う曲も混じるけど。何回聞いたよこの二曲…(苦笑)。   

2008 年 8 月 3 日 酷暑。

 暑いと唸ってました。それでも、根性で十時くらいまで寝てた。(根性て)

『黄昏たゆたい美術館』…絵画修復士と色々な事件。
 この頃、突き抜けてない(現実感の乏しい、と言おうか)殺人物を読むと、結構些細なすれ違いで起きてしまっていたりして、もどかしくなる。…そういうお話なんだよ、ってのはわかってるのだけど、うーん、真に受けてしまう(というと何か違う)。
 この本自体は、短編集。絵画修復を生業にしている人(妻を亡くして八歳の息子を育てている真っ最中)が、仕事なんかで関わった事件など。殺人事件ばかりとは限りません。
 息子との関係や、貫禄ある(笑)家政夫さんはもっと掘り下げるのかとおもったらそうでもなかったです。
 こういった芸術関係の薀蓄ものによくある、「歴史(芸術)の謎」も、無理を感じられず解明されていていい感じ。

『酔郷譚』…魔酒で不思議な体験をする話。
 これも短編集。あらすじの書かれた帯を見て、うん? これ読んだことある? と首を傾げたのだけど、やはりこれ、というかこれの前作、読んだことがあります。作者の名前までは覚えてなかった。
 全てが全て、曖昧模糊とした感じ。うーん、幽幻、というよりは官能に近い…そこまで濃くない…?

 今見たCMで、「運命の人が男と女とは限らない」というコピーが。(CMではある男の人が取引先?の男の人とやたらとあちこちで遭遇するというもの)
 考えてみればそうだ…!(笑)
 しかも、どんな運命かが問題ですよねー。友達だとか師弟だとかならいいけど宿敵とか不吉を運んでくるとかだったら厭だなー。
 うん、あのシリーズ結構好き。

 夕方から、ちょろっと父の仕事を手伝って、その帰りに古本屋に寄ってもらいました(また)。
 『まつろわぬもの』が気になっているのだけどどうしよう。恒川光太郎の、『夜市』収録の話の後日談?のようなものらしく。せめて少し、読めたら買うかどうかの踏ん切りがつくのだけどなあ。
 あの話、好きなのですよね。だから逆に怖いというか…。気になるのだけど、物凄く気になるのだけど!

 今日図書館に行ったら、届いていた予約本が把握していた数の倍あって…借り切れませんでした(悔)。
 て言うか読みきれないよ! 間違いなく、何冊かは延長だー。
 とりあえず、読書期間突入です。先週はほとんど読めなかったものなあ。

2008 年 8 月 4 日 完敗。

 …眠かったんです。今日は一日。
 仕事終えて帰って、夕飯まで部屋で寝転がってたのだけど眠るほどの時間もなく。夕飯食べて本を読んでたらうとうと…気付いたら十時でした(没)。
 今日中に読みきりたかった小説はまだ半分残っていて、中途半端に寝たから眠気があまりないという。うー。

 夕飯時に丁度、高校野球今日の四試合目の八回表くらいをやっていました。
 いや…凄かった。ひっくり返すかとはらはらしたー。3−0の九回裏で、一番打者がホームラン(今日のそれまでの試合通してヒット二本だけなのに)、二番打者が一塁でアウト、三番打者がツーベースヒット、四番打者が三振、五番打者がフォアボール、六番打者が打ち上げてアウト。
 ホームラン、凄いけど惜しいなあ、と思ってしまったり。塁に誰か出てたら…。
 ううう、せめて西兵庫の試合くらいはしっかり見られないかな…いつだっけ試合日(おい)。

 昨日のCMの話を父にしたら、「黄色い糸で繋がってるとか」と返されました。
 き、黄色?(笑)

2008 年 8 月 5 日  大雨。

 いやー…何も、帰ろうとした定時に振り出さなくっても。
 会社で、三十分ほど本読んで小降りになったところで借りた傘差して帰りましたー。家につく頃には降り止んでた。…けど、三十分の間に雨脚が衰える様子もなく、いつまでいればいいのーと本気で思いかけた(苦笑)。
 用がなければ濡れて帰っても良かったのだけど、本屋に寄りたかったんだ…!

 『赤髪の白雪姫』の二巻買いましたー!
 絵が好きなのもあるけど、これだけ期待して、読んでがっかりしない漫画って珍しい。ああもう大好き。そしてこれからどうなるのー。
 …次巻、発売が来年ってさ! うー、でも雑誌買って読んでもそれはそれで…ううう、もどかしい。

『Snowblind』…因縁めいた館で起きた殺人事件。
 題名は、序章の「雪盲」でいいのかな、訳。…うーんん、厭な話。そして超常ものになるかと思った(苦笑)。でも、雰囲気あります。
 登場人物がそれなりに立っているのに、感情移入し辛いからまだ救われている感じ。端正な文章、というのもあるのかも。
 思わず読後、メフィスト賞受賞作かと出版社を確かめてしまった(苦笑)。

 先ほど友人からのメールで知ったのだけど、小学校の同窓会があるそうです。今月十七日。…ええ、まだ連絡来てないんですけど?
 友人曰く、二週間前に連絡を貰ってる子もいればまだの子もいるとか…そして友人は今日連絡があったとか。
 なんてばたばたな。
 うーん、高校の同窓会もそんなだったよ…? 何だ、私の回り、そんなばっかか? 誰だよ発起人ー(苦笑)。
 いやまあクラス会なんて、よほど皆の仲が良かったとか核になる人がいたとか計画練るの好きだ!って人がいるとかじゃないと、発起人とその仲のいい人たちの間で計画を進めて、その周辺部は後回しだろうけど。

 ドラマの「シバトラ」観て。
 うーんやっぱ二十半ばの男が女装で日常に紛れるのって難しいかー…と思いました。えっと、女になりたい男の人とか体と心が違う、とかいう人はまあ別として。男として育って男と自覚のある男性の話ですよ。
 あ、ドラマ冒頭で童顔の主人公がメイド喫茶で女装して働いてる場面がありましてね。
 …二十代半ばの男性が女子高に生徒として潜入して、って話を書いてたものだから気になって(苦笑)。書き始めたときから無理だよなーとは思っていたけど、こう、まさか女子高の生徒に男はいないだろう、ってので紛れないかなーとか…無理かなあ、やはり。
 まあそう言いつつも、ちょこちょこと書き直したら、ちゃんとサイトに上げたいのですがねー。折角書いたし(爆)、主人公とその家族や友人たちが結構気に入っているから。

2008 年 8 月 6 日 暑中。

 よーうやっと、暑中見舞いが書けそうです。七割方、仕事中の作です(オイ)。
 ここ書いてから、打ち込みと書上げを計ろうかと。えーと、基本的に、この数ヶ月中にPCメールやり取りした人には送るつもりでいますが…要は、今PCの中にアドレスが残ってるかどうかという問題です(え)。←アドレス帳には携帯電話のメールしか登録されていない
 うっかり忘れなければ一月後くらいにサイトに上げますが、先に読みたい方は一言メッセにアドレス投入してもらえると送ります〜。…いるのか?

 『大学院生物語』…とある旧国立分子生物学研究所の話。
 ええと…R県とあるし仮名との断りなく名前が出ているから、著者の体験が活かされているにしても一応創作、か、な? 「工学部水柿助教授」のシリーズ(苦笑)みたいな。
 語り手(?)は、上記研究所で大学院生や留学生の指導役をされている方。平らしいのだけど…あれ、役付きみたいな働きしてない…? というかあれですかね。よくある話で、肩書きが多いほど実質の仕事はない、というところ??
 結構年配の方らしく、少々抹香臭さ(苦笑)はありますが、意外なほどに読みやすかった。…うん、意外。読み始めたものの、これは時間かかるかなーと思ったらそんなこともなかったです。それだけ、理解しやすい文章を書きなれているということかな。うん、さすが指導役(違?)。
 指導した大学院生たちの話や、上司との問題や、他の研究者の方との関係や…あれ、これって主に人間関係について書かれてた? ご本人は、実験がお好きなようなのに。しかし、理事長には腹が立ちます(私無関係ですが)。
 読みながら、院に進んでいた友人はどんなだったのかなーとか、今現在ある研究所で働いている友人の職場はこんなとこなのかなー、とか。そして、文系の院ってどんなだろう。こちらは、ひたすら文献に埋もれてるの…?

 昨日書いていたクラス会の話。
 そもそもは、ある一クラス(の卒業生)で持ち上がった話が、他クラスの子に飛び火(?)して一学年合同になったのだとか。今日連絡がありました。
 先生方も出席されるとかで、そして会場(?)が家からとっても近くて(笑)、どうしようか悩み中。一応、友人が全くいない、という事態はなさそうなのだけど…どうしたものか。
 週末に返事をする、と言っているのだけど、そして携帯電話の番号を聞いて教えてアドレスも教えたのだけど…アドレス、間違えて教えた気がしてならない(爆)。メールが来ないから、多分その通りだー。電話しないとだなあ。
 とりあえず、小学校のアルバム引っ張り出してきてみた!←俄然行く気?
 
 「ゴンゾウ」、やっぱり細かいところが面白いなー。…ええと私既に、本筋を見失っているのですが(汗)。

2008 年 8 月 7 日 立秋。

 えーっと…昨日書いてた暑中見舞い、書き上げて振り返ると八割か九割方書けていたにもかかわらず続きが書けず、結局今日の昼(*仕事中)書き上げたという。
 そんなわけで、残暑見舞いに移行しました(爆)。
 ま、まあ、言いたいことは同じですし! というか私、本来おまけの駄文書くのにかかりきりで肝心の挨拶とかぐだぐだだしね!
 えーまあそんなわけで、届いた方(のうちどれほどがここ見てるのか)、閑なときにでも楽しんでいただけたら幸い。
 それにしても、PCにメール(正確にはメールアドレス)が残ってる人に送ろうとしたら、去年貰った暑中見舞いがそのまま残ってたりしてびびった。どんだけメールの整理してないんだ私。そしてうっかり、個人サイトの通販のアドレスにまで送りかけて慌てた(手紙的な内容も打ち込むからさすがに気付くけど…ただの通販申込者としか知らない管理人さんにいきなり掌編送りつけるとかありえない)。

 『人くい鬼モーリス』…不思議なひと夏。
 小学生の家庭教師に赴いた夏の別荘地で、人くい鬼だというモーリスに対面して、しかも人死にが起きたり土砂崩れで道が塞がれたり。爽やかでちょっと切ない話。
 うーん多分これ、例えば小学生くらいで読んだとして、その十年後にでも…というか「学生時代」を終えてから、の方がいいか?…読み返したら、きっと感想が違うだろうなあ。感想というか、注目するところがきっと違う。
 主人公と女の子の関係が、ちょっと淋しいけど、でもそれはそれであるよね…。

 小学校の卒業アルバムを見ていて、写真と実際は違うとしても。
 思っていた以上に、女の子、可愛い子が多くて吃驚した(苦笑)。男の子はそうでもなかったけど。そして自分を見て、あれこんな顔だったっけ、と思ったり。…いやまあ、自分の顔なんてあまりまじまじと見ないしなあ。
 しかし彼ら彼女らは今どうなってるのか。…うちの姉は、中学だったか高校だったかで顔つきが変わったもので、整形疑惑が持ち上がっていたり(笑)。
 そして、ある友人の文集でのアンケート(?)回答を見たら、当時から奴は奴でした(笑)。
 とても会いたい友人(と、今となっては呼んでいいのかちょっと躊躇うのですが…もう二年くらい会ってないし昔のことは忘れたい、と言っていたからなあ)は、きっとクラス会には来ないだろうな…。

 …ニュース番組を見ていると、意外にアニメのサントラ使われていたりしますね…それが判る私も私なのだけど。

2008 年 8 月 8 日 郷愁。

 郷を愁うも何も、私、実家から離れて生活したことないのですけどね(苦笑)。
 いやもー最近、駄目だ。一応まだ二十代なのに、懐かしくって懐かしくって仕方がないのですよね…思い出に浸るのはもっとこうさ、隠居してからでいいと…。
 多分本当ならもっと、仕事なり恋愛なりに活躍…熱中?してていい時分だろうになあと思うのですがねー。仕事単調な上に達成感とか何か上達するとかないし。資格確保にでもはしった方がいいのかなあ、今のままだと何事にしても勉強の仕方さえ忘れそう。
 小学校だの中学だの高校だの大学だの、懐かしみすぎだ私。

『ソリューション・ゲーム』…IT企業版「スパイ大作戦」。←帯にあったコピー
 ええと…ある大企業から子会社? 外部委託? の形で、形式上独立している会社(といっても新しく入った主人公を含め三人しかいない)の話。何でも屋と言うか…まあ、困った問題を解決しますよ、合法非合法問わず(え)、というような。
 主人公の距離の置き具合が(実際の友人なり恋人なりの身内として対応するのは別として)好き。
 章ごとにとりあえず話が終わる、連作形式。変な上司とか変わった上司(?)とかがいます(どんな)。関係ないところでは、芳賀さんが好きだなー。苦労をさらりと表に出せる有能な人。そして子煩悩(笑)。

『戸村飯店青春100連発』…中華料理屋の兄弟のある一年。
 高校卒業と同時に小説家になると言って、東京の専門学校に通うべく家を出た兄(でも専門学校は辞めた)、長男が出て行ったから店は俺が継ぐしかないんだろうと考えるまでもなく思っていた弟。
 兄の、周囲と本人、弟と周囲の捉え方の違いを何故かしみじみと実感してしまった(苦笑)。ちょっと掛け違い、というか、うーん、あるよなあ。
 しかしこれあれだ。北野君と、お兄ちゃんかっこいいー(笑)。

 加古川北敗退、香川も。←母が愛媛出身のため?何故か四国勢も気になるのが恒例
 あー、と思うけど、一番残念なのは当人たちだろうしなあ…。スポーツ観戦は、というかそもそも応援は、何をどうしたって当事者ではないところがちょっと苦手。

 小説書きたいなって思って書くけど、実際書いていくとどうにも下手で幻滅します。長編が特に。
 いっそ、書きたいなんて思わないといいのになー。読むだけでも十分でしょうに。

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「 助太刀 」

 見覚えのある揃いの羽織を着た集団が、一人の男を取り囲んで突き殺すのが見えた。なるほど、確かに見栄えはよくない。
 そんなことを思いつつ眺めていたら、後ろから、何故かうんざりとした声が聞こえた。
「なんだってこんなところに居やがる」
「えー天下の大通りに俺がいちゃいけない理由を教えてくださいー」
「語尾をのばすな気色悪い!」
 あまりに予想通りのしかめっ面に噴き出すと、睨まれた。任務中を示す隊服姿は変に堂に入りすぎて、おまけにぴりぴりとした空気のせいか、周りの人たちは視線を向けようともしない。逆にそれが、異常だった。
 まあそれでなくても、おっかない集団の出現と血に、人々は建物の陰に身を潜めるように窺っている。それでも、人の姿がなくならないところが物見高い。
「そっちこそ、どうしてここに? 見回りは違う通りでは?」
「あそこの奴が逃げて、追いかけてきた」
「それはそれは。まだまだ鍛える余地があるみたいだね」
「まあな」
 そう言いながらも、どうにかはなっている。集団戦法は、やはり有効なのだろう。命がけなのだから、人数で押せるなら当然そうすべきなのだ。
 それでも「武士」は、名誉だの見栄えだのを気にしがちで困るのだけど。
「この調子なら、俺の出る幕はなさそう」
「元からその気もなかっただろう」
「いやいやまさか。目の前で仲間が困ってたら助太刀の一本や二本」
「ふん、どうだか」
 鼻で笑う。険しい顔を崩さないのは、任務中だからだろう。
「信用ないなあ」
「そうでもないさ。ただお前は、助太刀じゃあ済まないだろ。――おい、行くぞ!」
 含みのある言葉を残して、ひらりと翻した隊服の色を残して、去って行ってしまう。
 まったく、あの人は気が抜けない。
「勝手に、一人で納得して行っちゃわないでほしいなあ」
 呟きながら、もしあのとき囲みが崩れて男が逃げようとしたらどうしただろう、と考える。いや、考えるまでもない。
 彼らがどうするかを見極めることもせず、一太刀で切り捨てただろう。

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 えーと…例のシリーズ(爆)。不意に書きたくなるときがあります。話としてまとまってないとか言わない。
 これまで「切れ端」に収納していたのを、「浅葱色」という単独で設置しました。…こ、これだけでもかなりの勇気が要ったんですよー…!(汗)←小心者
 しかし日付見たら、最後に書いたのが二年前でした。え…そんな前だった? 時間経過が怪しいなあ…。

2008 年 8 月 9 日 日照。

 日照時間短くなったよなーそうだよなもう立秋過ぎたよな、と実感するのは、お風呂のお湯がぬるくなりやすいからです。
 …えっとこれには説明が必要で。
 我が家はソーラー電池使用の湯沸かし器(?)を置いていて、日差しが強ければ、沸かさなくてもお湯が出るようになっています。たまーに屋根の上に銀色のパネル乗っかってる家見ませんか。あれ。
 で、これ、原動力が光ですから曇りの日(薄曇は問題なかったりもする)は駄目だったり、冬場のように日の出る時間が短い(強さも関係するのかな?)と、ぬるま湯くらいにしかならなかったりします。ちなみに夏場は、調整して水も混ざるようにしないと熱湯出ます。よく熱湯で入れて怒られる(学習しろ)。
 それが徐々に、お湯が出る量が減ってまして。いや、普通にお風呂入って食器洗ったりするのには問題ないのですが。でもやはり少しずつ変わってきていて、水の調整具合とかお湯の熱さとか。
 余談ながら、私は熱めのお湯が好きで、母はぬるめが好きです。が、風呂に入るのは母の方が早いことが多い…(私がだらだらと本読んだりPC使ったりしてるから)。効率考えるなら明らかに、入る順番逆なのだけどなー。

 『佐藤春夫集』…その名の通りの短編集。
 昨日読み終えていたのにうっかり忘れていた(苦笑)。えーと、読み始めたそもそもはお邪魔しているサイトの管理人さんが読んでらした『化物屋敷』が気になって(苦笑)。
 佐藤春夫自体は…多分どこかで名前は聞いた(もしくは見た)けど、どんな人だ何書いてんだ、というだけの覚えしかありませんでした(苦笑)。
 話の構成もいいけど、文体好きだなこの人。文体だけで読める。妻が浮気してるみたいなんだ、なんて言われる話なんて、だからどうだよ、って言うかその落ち、というだけの話でしかないのに読めるものなあ(「痛ましい発見」)。「陳述」にしたって、ただくどくどと語ってるだけですよ? いやー凄い。
 本来の目的だった「化物屋敷」はなんだかあっさりとしていて、「黒猫と女の子」(これは稲垣足穂。これも同じ動機で読みましたが、同じことを書いているのです)の方がわかり易かった…でも私、足穂ちょっと苦手かも。ちなみに、実録怪談。あ、怪談物語としては「女誡扇奇譚」の方が好きかも知れない(でもこれは多分実録じゃない?)。
 「指紋」が探偵小説として評価がある(?)らしいのだけど、私としては、「家常茶飯」の方が。だって、洞察力優れた(ちょっと変わった)友人を傍から語るのですよー、定番! あと、「時計のいたずら」とか。結構笑える(げらげらと、ではないけど)要素が多いですこの人の文章。だから好きなのか。
 読むのに結構かかったし短編集だった分だけにお腹一杯で、他も読もう、とまでは思えないけど…面白かったです。うん。気が向いたら…と言っても読む本山積みの今はあれだ(苦笑)。

 『PARTNER』九巻
 最終巻手前という感じ。今までの経緯が絡みに絡まってきてるのは、アメリカドラマを思わせる…って私あまり知らないですが、そのあたり。
 うーん、ドロシーがあまり好きではないのですよね実は…(爆)。

 えっとまた愚痴(?)なので、厭な方は速やかに去ってくださいー。

 頭の中でぐるんぐるん考えてる話があるのだけど、きっとこれ文章にしたら物凄く面白くなくなるんだろうなあ(いつものように)、と思うと滅入る。
 うーん悔しい。えっと、そもそも考えてる話が面白くはないんじゃないかというのは別にして。
 …あれ。ところで今ちょっと読み直してて気付いたけど、私が書く人って…酒好きと甘味好きの比率高くない…? 気のせい? 私が両方好きなせいでしょうか。そして異界の人(悪魔とか?)は甘味と親和性があるという前提は一体どこで植えつけられたのでしょう。謎だ。

 以下、そのぐるんぐるん回してる話の断片のひとつ。外伝的な位置にあります。本編では、ちょっと語って終わる予定。
 えーと暗くて血が飛んで悲劇(?)なので、というか惨憺たる話(??)なので反転ー。覚悟(苦笑)と興味のある方だけどうぞ。
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風が吹き抜けた。
空が驚くほどに青く、広がる緑が眩い。
「…へぇ」
 思わず洩れた感嘆だが、足元からはむっとした鉄の匂いが立ち上る。足は、ぐっしょりと赤に濡れていた。
 さてどうするかと視線を背後に転じたら、女が一人立っていた。
 腰まで伸びた長い黒髪に、白く整った細面。切れ長の双眸は漆黒の中に光を映し、臆することなくこちらを見詰めていた。
 風が、吹いた。
 血の匂いに、女はわずかに顔をしかめた。顰めた眉が、妙に色っぽい。
 そうして、女はごく小さく首を傾げた。
「我は食わないのか」
「…あ?」
「そこの男を食ったのは主だろう。それなのに、我のことは食わないのか」
 食ったと言っても、獣のように噛み荒らしたわけではない。ただ、胸を貫き、心臓を抉り出す。実を言えば、魂魄を喰らうのだからそれすら必要がない。血や肉は、言わば間食だ。
 しかし、見ただけでは殺したとしか思えない様を、女は看破してのけた。     
「主、力があるだろう。できるなら、その男を弔ってはくれまいか。燃すか、埋めてくれればいい」
「…何だって俺が?」
「ここは、我の気に入りの場所だ。主らが人を喰らうのは必要だから咎めはしないが、後の始末くらいつけてくれ。野の獣にだって、獲物の食べかすに土をかけるものがいるくらいだ」
 勝手な事を言う、と思ったが、広々として近隣の野山を一望できる眺めは素晴らしく、女が気に入っているというのもわからないでもなかった。
 そのくらいはいいかと、気が向いた。喰らった男を、血の一滴まで灰に燃やし尽くした。下の草は燃やさないよう、気を払う。
「見事なものだな」
 ぽつりと呟くと、女は、まだ熱いだろう灰を一握り掴み取り、風に流した。やけに、綺麗な光景だった。
「…知己か」
「ああ、おそらくは。我を抱いたことのあるうちの一人だろう。でなければ、ここに入れる道理がない」
「恋人か」
 何故か、女にそんな相手がいると思えず、声に意外さがにじみ出てしまった。女はそれを、にこりともせずに笑い飛ばす。
「そんな甘いものではないさ。我は、ただの木偶だ。子を生すのに必要なだけの生き人形。相手の顔もろくろく知りはせんよ」
 ただ暗闇で犯されるだけだと、女は嘲笑った。
「この男は、何をした? いや、想像はつくが。主ほどの力の持ち主が、偶然こちらに流れ着くわけがない。どうせ、使役できると勘違いして、この男が主を喚んだのだろう。そして、召還者を殺した主は、晴れて自由の身というわけだ。違ったか?」      
「いや」
 何故こんな話をしているのだろうと、ちらりと疑問が頭を掠めた。女を殺すとまではいかなくても、立ち去ればいい。それなのに、何故。
「それなら、何故ここに留まる?」
 見抜いたかのような問に、咄嗟には答えられなかった。女が、わずかに不思議そうに、こちらを見詰める。やがて、まじまじと見詰められ、思わず身を引いていた。
 気付いて、女が苦笑する。
「悪い。いやあ、主はなかなかに器量良しだと思ってな。うむ、我の好みだ」
「………は?」
「閑なら、ひとつ、付き合ってはくれないか。主、我と駆け落ちをするつもりはないか?」
「……………は…?」
 女は、からりと笑った。長い髪が風に流れ、掻き上げると白い首筋が見えた。
「もう、ここにいるのはうんざりだ。逃げたかったよ、ずっと。逃げられないと知っていたから、大人しくしていただけだ。でも、主なら――我を連れて、逃げてはくれないか」 
「…俺に何の益が?」
「我を好きにしていい。慰み者にするなり、売り払うなり、食べるなり。我は、なかなか特殊な魂魄だと聞いた。主も聞いたことくらいはあるのではないかな。輪廻の魂と、呼ばれているよ」
 聞いたことがある。どくりと、鼓動が跳ねた。
 それを手に入れれば、生涯飢えも乾きも無縁になるという。そして、次界を自在に渡る術も手に入る。至宝といってもいい、類稀なる存在。
 女は、寂しげに微笑んだ。
「目の色が変わったな。それほどのものなのか」
「証は」
「さて、我にはなんとも。ああ、そもそもここでは無理かな。気付いているのかどうか知らないが、ここは結界の中だ。おかげで我も、この年まで何に魂魄を奪われるでもなく生きてこられた。――ただ、生きただけだがな」
「…お前、そう聞いて、俺がここで喰らうとは考えないのか」
 落ち着けと言い聞かせる。変わらず冷然と立つ女は、何か切り札を持っているのかもしれない。油断させ、もう一度縛りつけようとしているのかもしれない。
 女は、貼り付けたような笑みを崩さない。
「考えたよ、今。主の顔色が変わったからな。――まあ、それでもいいさ。ここを出て行けることには変わりない」
「動くな」
 近付いても女はこちらをただ見詰め、手を伸ばして触れた瞬間だけ、一度びくりと怯えを見せた。
 細く白い指に、そっと歯を立てた。一筋流れた血を舐め取る。それだけで、深酒をしたかのような、酩酊感。酔いに囚われてそのまま肉を引き裂き、血を啜り、魂魄を貪り喰らいたい衝動に駆られる。
 どうにか自制できたのは、女の声が聞こえたからだった。
「それで…判るのか?」
「…ああ」
「どうなんだ?」
 改めて女を見ると、気丈に見上げた瞳が、不安に揺らめいていた。何故か、言葉を失う。
「我は、主にとって価値があるのかな。ないなら、いい。喰らわなくてもいいから、ただ殺してくれないか」
「何故、そこまで死にたがる」
 女は、唇を歪めた。泣くかと思った。
「言ったろう。我は、子を得るためだけの人形なんだ。多くの男に犯され、子を産めば即座に取り上げられる。望みなど持てやしない」
「ならば何故、自分で死なない」
「…術使いだからな。呪いをかけるなぞ、造作もないさ。我は、自死は封じられている。殺されそうになれば反抗するように、ともな。主ならば、我が抗ったとしても――殺せるだろう。頼む」
 自棄になったように言葉を吐きながらも、風にそよがれる女は美しかった。少し、気が向いた。
「ここを、出たいのか」
「…ああ!」
 わずかに落ちていた視線が上げられる。黒曜石に似た瞳が、得も言われぬ光を放っていた。
「わかった」
「いいのか!」
「必ず、俺のものになると約せ。それなら、連れ出すくらいのことはしてやろう」
「ああ、約束するとも!」
 女は、こらえきれないかのように抱きついてきた。ふわりと、甘い匂いが鼻腔を掠める。先ほどの血の味が、舌に蘇った。
「…離れろ」
「え?」
「…このまま、食われたいのか」
 わあと叫んで、女が離れる。しかし、笑顔だった。
 腕を伸ばせば容易く捕まえられるだけの距離を置いて、女は、嬉しげに微笑む。
「図々しく、もうひとつお願いしてもいいだろうか」
「…何だ」
「あ、ふたつだった。いいか?」
「いいから早く言え」
 あまりに浮かれる女を見ていると、本当に食われる覚悟があるのかと疑ってしまう。だが、なくとも奪ってしまえばいい。
「まずひとつ。主の、名を教えてくれないか。勿論、真名でなくていい。呼ぶのに、なくては不便だ」
 真名を知られれば、比較的容易に縛されてしまう。女はそのことを踏まえているようだが、呼ぶ必要があるとは思えない。そう告げると、女は懲りずに笑顔を浮かべた。
「これも何かの縁だ。言い忘れていたが、我は静(しず)。主は、何と呼べばいい?」
 ここで、好きに呼べ、とでも言えば真名を告げたのと同じことになってしまう。面倒とは思ったが、気まぐれついでに、最後まで付き合ってやろうと思った。そのくらいの余裕はある。
 それに、女はとても嬉しそうだった。
 女の足元に揺れる青紫の花を、指差す。無駄に派手で、たまたま、目に付いた。
「その花の名は?」」
「菖蒲(あやめ)」
「ではそれで」
「随分と簡単だなあ」
「文句があるなら呼ぶな」
「いや。短い間だがよろしく、菖蒲」
 ほのかに蜜を含んだかのように、女は名を呼ぶ。
 放っておけばそのまま突っ立っていそうで、仕方なく次を促した。まだ、ひとつしか聞いていない。女は微笑み、真っ直ぐに視線を向けた。
「菖蒲。子を与えてはくれないか」
「   」
 今度こそ言葉を失った。
 回復するまでに幾許かの時を必要としたが、その間女は、視線を逸らすことなくひたと見詰め続けていた。
「抱かれるのが厭だと、言ってなかったか」
 どうにか吐き出した言葉に、女は頷く。
「あれに我の意思はなかったからな。だが、菖蒲ならいい。育てることまでは望まないが、菖蒲との子が欲しい。――厭なら、いい。諦める」
「諦めると言うくらいなら…」
「少し、浮かれた。悪い、忘れてくれ」
 女の顔にはじめて、苦笑めいたものが浮かぶ。それがすぐに切り替わり、笑みになるところが慣れを思わせた。おそらく、諦めることには慣れ切っているのだろう。      
 そんなもの、知ったことではなかった。だが、女の体には興味があった。薄物の下は、無駄のない肉付きで、しかしふくよかに見えた。何気ない仕草に、艶かしさもある。なるほど男たちは、大いに励んだことだろう。
 そんな不躾な視線にも、女が動じた様子はなかった。これも、慣れているのだろう。
「行こう。どうせなら闇の降りる前に、景色を見て逝きたい」
「いや、食うのは少し待とう。その条件、呑んでやる」
「…ありがとう」
 言って、女は寄りかかってきた。胸に顔を押し付けるようにして、ようやく、女は泣いた。涙からも、甘い匂いがした。
 飽きるまではなと心の内で付け足したことも知らず、女は泣いていた。

 菖蒲が静に飽くことはなかった。
 それは、閨のことだけではなく、日々においてだった。部屋を借りて暮らすうちに、静は早々に庶民の生活に馴染んでいた。ただ無邪気に、楽しそうに生きる。それを眺めるだけで、何故か、菖蒲は飽きなかった。
 やがて静は子を身ごもり、徐々に大きくなる腹を抱え、それでも楽しげに暮らしていた。
 だからそれが起きたのは、静に飽いたためではなかった。
 出産を行い、そこで満ちた血の匂いに、菖蒲が我慢できなくなったためだった。それでも、静の懇願に応じ、子を産婆に託し、二人を住まいから出しただけでも上出来と言えた。
「ありがとう」
 最後に静が言った言葉を、菖蒲が――菖蒲と呼ばれたものが、認識したのは、その言葉が放たれてから随分と時が過ぎてからのことだった。その間をずっと、「それ」は、静の血に、魂魄に酔いしれていた。
 酔いから醒め、半ば無意識に戻った住家に、静の姿はなかった。あるはずがない。
 そこに至ってようやく、「それ」は知る。
 いつの間にか自分が、静を愛していたことを。そしてその人を、自分が殺したのだと。取り返しのつかないことを、してしまったのだと。
 それでも、「それ」には死ぬことも許されなかった。
 「それ」のなかには、静の魂魄が宿っている。もう泣きも笑いもしないそれは、しかし、確かに静だった。それをもう一度殺すなど、できるはずがなかった。
 狂ったようにただ生き延び、そうしてやがて、「それ」は知る。二人の子が育ち、官職としても知らしめるほどになる楽螺の中枢にいることを。そこはかつて、静を捕らえていた檻だったというのに。
 結局「それ」が生したのは、最愛の女を殺し、代りに、力を手に入れ、かつて女に過酷な仕打ちをした組織を太らせただけのことだった。しかも、「それ」と女の血を以って。

2008 年 8 月 10 日 午睡。

 うとうととするのが好きです。ぼんやりと眠るのが好きです。
 …でもあれだ。真夏にうっかり昼寝すると起きたあと汗だくです。そして暑さに負けず寝ていた自分にちょっと驚きます。

 『故郷に降る雨』…傭兵部隊の話。
 このシリーズなんとなく好きで。架空の国が舞台で、戦争する二国とその間の中立国とが舞台。主人公(たち)は、その傭兵。
 とりあえず、下巻…。(いや一応上巻である程度話はまとまっているけど)

 『サトシ・マイナス』…サトシ・マイナスの元にサトシ・プラスが表われて。
 えーとこれも多重人格もの…に、なるのか…? どっちかというと、青春小説っぽかったですが。
 申し訳ないけれども、三分の一過ぎたくらいからあー早く読み終わりたい、なぞと思っていました(酷)。う、うん、あまり好きなものではなかったようです…(汗)。

 昨日はたと気づいたので、題名の話。(何)
 話を書くときに、題名を先につけるか後につけるか、という問題(?)があります。私は前者が多かったのだけど、いつの間にかそうでもなくなっていまして、今や(仮)がつく場合が多いです。
 使っているソフトが、有名ですが「紙」というフリーソフトでして。これ、メモ帳にインデックス機能と改変即時保存機能をつけたものでして、題名つけないとちょっとややこしいのですよね。全ての書き出しを覚えていれば問題はないのですが(え)。
 でまあ、とりあえずつけた題名、眺めるうちにこれ以外思い浮かばなくなったなーというときもあれば、違和感があって書き上げてから他のものをつけたり、途中で変えたりと、まあ変遷めいたものがあったりします。
 そんな仮題を使っているうちのひとつに、昨日上げた断片の本編(わかりにくい)があります。
 で、これ、「黒の世界(仮)」としていた(副主人公の名前が黒/単純)のですが、昨日見直したときに何か違うなあ、世界って言うより…それに黒ときたら…と、「白と黒の風景(仮)」に変更。
 あれ…これって…『D.Gray-…』…(爆)。
 そう気付いて変えたいのだけど、でも白を削ると(「黒の風景(仮)」)、主人公黒になるし。もっとべたべたな題名にしようかな…(内容はある意味少女漫画になる予定)。
 と言うか題名つけるの下手なんだ。
 言葉の響きやら組み合わせやら考えるのは好きだけど、内容に合ってなかったり思ってるほど良くなかったり。むう。
 そう言えば、時代小説は格好いい題名多いですね。あまり読まないのだけど、題名を見て思わず手を伸ばしたら時代小説、なんて度々。

2008 年 8 月 11 日 自炊。

 …てほどのことやってませんが。でもそもそもろくに料理なんてしたことがないから、たった三食(三晩)でも意識としては(苦笑)。
 母が今日から帰省して(毎年恒例なのですが盆休みなんて存在しない私は置いてけぼり)、掃除は棚上げとして(え)、ご飯は食べなきゃなわけで。
 たまねぎのざく切りを調理酒とそうめんつゆで炒めた(煮込んだ?)だけの卵丼風ははじめてにしては多分上出来ー。というか、材料が材料なだけに妙なことにはならないだろうと思ったけど、レシピも何もないから、失敗しなくてよかったー。
 明日は天津飯で、明後日は焼き飯。…私にご飯を作らせると、どんぶりか味付けご飯になるんだ…。←好物

 「友人の実見譚」「黒猫と女の子」…『星の都』より。
 えー…先日の「化物屋敷」と同じ話、が、後者。他にも何編か読んだけど、辛うじて面白いと思えたのはこの二つ…収録作の半分以上、冒頭だけ読んで全て投げた。
 …えー、私本当に、稲垣足穂の作風好きじゃないようです。まあただ、小説というよりも散文という感じのものがまとめられた本だったようなので、小説読んだらどうかわからないけど。でもやっぱり苦手だろうな…(と思うから手を出さない)。足穂好きな人には申し訳ないけど、これは好みの問題だ。

 『女子弁護士葵の事件ファイル』…法律知識を織り込んだ短編集。
 実用書を兼ねているとまあ仕方ないかな、という小説具合…と言ったら厳しいか。まあ問題は、話よりも主人公のキャラクターが私の好みでなかったというだけのことかも知れないですが。多分、これ読んで主人公に共感できる(好意を持てる)女子って少なくない…?
 架空請求とか遺産相続の話は、頭の片隅に置いておこうかと思います。いつか役に立つかもしれない(立たないなら立たないでいいのだけどねー)。

 デラウェアかスイカ一玉を買って帰ろうと思って忘れてたー。ああ、網戸も直さないと…。

2008 年 8 月 12 日 敗北。

 天津飯…砂糖入れすぎた…(爆)。たれをかけてから気付いたので、もうどうしようもなく食べきりましたよー。甘かった。
 いやぁもう、具を入れすぎたせいか卵がスクランブルエッグ状になるし餃子は焼きすぎて一面炭になってるし。…えーっと、後年、胃がんになったら今日の料理が原因ということで!(大袈裟)
 そうして、ついつい衝動買いしたケーキが四個、冷蔵庫に眠ってます。今うち、二人しかいないのに(苦笑)。
 糖尿病も心配なところです。

 明日どうしようかなー、古本屋でもふらふらと回ってお昼どこかで適当に食べようか、図書館と本屋だけ行って家でぼーっとしてるか。
 …まあ、くだらないことで悩んでいるわけです(苦笑)。
 でも久々に、炎天下を自転車で走り回るのもいいなー。

2008 年 8 月 14 日 帰宅。

 というわけで(?)、母がお土産携えて帰ってきました。私は、ねぎとにらと牛乳を買って帰宅しました(何)。

 『ラブコメ古今』…自衛隊ベタ甘恋愛短編集。
 『くじらの彼』に続く短編集…続く、といっても、主要人物が自衛隊員だよーというのだけが共通なのですが。いやー…甘い(笑)。
 べったべたに甘くて、でも、不安要素があってそれを真っ向から受け止めて悩んで揺れているからこそ、甘さが引き立っているのですが(スイカにかける塩みたいな)。そういうの苦手なはずの私が楽しめてるのは不思議だなと思います(いや少女漫画好きだけどね?)。
 …物凄く余談ですが、妙な時間帯に電話がかかってきたときに母が「あんたちゃうん?」と言いつつ出るのですが、その度に「それが判るってエスパーかよ」と思うのですが、思った後で『図書館内乱』(だったと思う)の「あたしはエスパーか!」(by郁 正確さは期待しないでください)を思い出す…(苦笑)。

 『ステップファザー・ステップ』…職業泥棒がひょんなことから中学生の双子の見かけ上の父になる話。
 一度読んだことがあるのだけど、結構前で好きだった印象があったので、子供向けに(青い鳥文庫)挿絵つきで出ていると知って、挿絵入ったらどんな感じかなーと借りてみました。…とりあえず、中学生であの絵はないと思うな、双子…。
 へまをして両親がそれぞれに駆け落ちして家を出て行って残されてしまった双子の「父親役」をすることになった泥棒さん。屁理屈こねるのが得意(?)で捻くれているところが楽しい(え)。
 ここに収録されている他にもう一本、本来はあるのですが…どんな話だっけな…。またそのうち、児童書でない方を借りてこようと思います。気になってきた(苦笑)。

 えーと、母が熱心にバレーボールを観ているのですが(私は基本的にオリンピックあまり興味ない、というか騒げば騒ぐほどどうでも良くなる←天邪鬼?)、判定がきわどい場面があったようで。でも、審判は公正に(?)判断してくれたようで。
「○○さん、公正な判断をしてくれました」
 え、名前?と、思わず笑ってしまいました。いや…いいことにしても悪いことにしても、名前出して責任の所在をはっきりさせるのはいいことだと思うけどね、でも審判の名前を聞くことになるとは思わなかったなー(笑)。

 そういえば昨日は、朝ご飯食べて銀行に奨学金(の一部を)返しに行って図書館行って、古本屋回ってきました。
 回ると言っても、数年前にチェーン展開してた古本屋が潰れてしまってから、一軒一軒に距離があってあまり回れないのですけども(ってそれまでどれだけ回ってたお前)。
 やー、もう。
 空を見てはにやにやしてしまった(怪しい)。
 だって、絵に書いたようにいい天気で! しかも、快晴じゃなくて白いもこもこした雲(入道雲とか)がたくさんあって、真っ白と真っ青のコントラスト、綺麗すぎでした。
 もう、青空に白い雲って大っ好きなのですよ。そしてそれはやはり夏空がいい。冬は星空が綺麗だけど、昼は断然夏。
 それと、橋を渡ったのですが、橋からの光景にちょっと吃驚した。水面に空の青が映って、綺麗に青で。角度の問題で、私がいる場所の近くはそうでもなかったのだけど、遠くのところが。当たり前と言えば当たり前なのだけど、あまり見たことのない光景で思わず見入ってしまいました。
 …って、伝わらないよねー、いやもう綺麗で爽快でっ、でも伝わらない…だろうなあ。ううう。
 とにかく、自転車で走りながら実は、うっかり方向誤ってどっかにぶつかったり落ちたりしないだろうか、と冷や冷やしつつ懲りもせず空を見ながら走ってました(苦笑)。多分私、河原で空見上げてかなり長い時間ぼーっとできる。で、いつの間にか眠ってて気付いたら夕焼けとか薄闇とかになってるんだ(妄想)。
 あ、でも時間と共に雲はどこかへ去って行って青空だけになったのですが…家に着く直前(本当に近所でのこと)、青空を背景(?)にした山際を見たときに、何故かぎくりとした。本当、どうしてだか判らないのだけど…青と緑の対比に、何か引っかかるようなものでもあったのでしょうか(まさか)。…雲ひとつない空って何か作り物めいていて、私は、あの山と空が書き割りのようにでも見えたのかなー…?
  
 昨日、『回転銀河』の最新刊を買ってきました。四巻で終わりと言っていたから、続きが出るとは思ってなかった。連載再開、だそうで!
 えっとこれ、連作…オムニバス…? 世界設定が同じで、ある話の主人公が別の話の脇役にいたり、その後の話が(本人視点だったり別の人視点だったりで)語られたり、とか…えっとこれ、何形式…? 連作?
 あとがきで書かれてましたが、「痛みみや切なさがあってこそ」のこのシリーズ、というのが…納得。
 それにしても、何だあれ「クロニクル」! まさかこんなのくるとは思わなかったー! 『デイジー・ラック』という別シリーズの裏話、というか、別の人からの視点の話。このシリーズ、実はもうちょっと続きがあった、というようなことが書かれていたこともあって、気になっていたのですよ。続き、というわけではないけど、読めて嬉しかった。
 本当に、ちょっとした変化や当人だけのこだわりやささやかな積み重ねや、そんな諸々を描くのが上手です。この人の話も、恋愛だけが中心でも読める。恋愛、というか、人生の一端を書いてるような感じだから?

 今ほしいもの。ホットサンドメーカとリストバンド…。
 前者は、買おうかなーとネットショップを見つつ、今度電気屋にでも行って来ようかとか…あ、昨日行けばよかった(遅)。
 後者は、右手首が…。以前も度々あったのだけど、何か手の使い方が悪いのかなー。この頃、あっつい、と思いつつちょっと痛みかけたところで嵌めてるのですが、百均のだからかタオル地だからか、みすぼらしいことになってきていてしかも締め付け(ゴム)がゆるくなってきてる…。も、もうちょっと頑丈というか丈夫というか…そういうのがほしいなあ、と。
 うーんでもどちらも、ほしいと言いつつ差し迫ってほしいわけでもなくて、このままうだうだと流れるような予感が…ということで備忘録(え)。

 あー…干からびた蜥蜴の話を書こうと思いつつ…てかそれ思いついたのどれだけ前だ…(汗)。

2008 年 8 月 15 日 誘惑。

 睡魔に誘われ眠りの森へ…。
 やーもう今日の昼、事務所に人通りが少ないのをいいことに、ちょっと寝てました。どうせなら突っ伏したかったけどそれはさすがに。
 そして夕飯後、本を読んでいて…気付いたら一時間とか。アラームはいつ鳴った、携帯電話…!(汗)

 もう、六十三年。
 ある年急に二年分とか四年分とか進むわけではないのに、何故かいつも、その経過年数に…驚き(?)ます。驚くと言うか意外に思うというか…うーん、何だろう。よくわからない。
 両親共に戦後生まれですが、私は無条件に、戦争=こわい、という印象を抱いています。
 だから、一部で「戦争熱望論」(というと言いすぎなのか?)がある、と聞いたときに頭を掠めたのは恐怖、でした。しかも比較的年代の近い人が、実際始まれば一兵として戦場に行くだろう人達が。
 きっとそれは、私が昔ヒーローものに憧れたようなものだろうなあ、と思うとちょっと虚しい。…えっと、ヒーローに憧れたというのは、英雄になりたかったわけではなくて、否応なく「敵」と戦う状態になれば、「仲間」とはとても仲良くなるだろうな、そういうのは羨ましいな、というので。前世で仲間だった、とか、私たちは世界を救う選ばれた仲間なんだ、とか、一時はやったらしいそういうのと同じ…ですかね?
 ああ…戦争がこわいのは、国の為に、というのがこわくて厭なのは、いくつかの戦争を扱った小説を読んだのも関係しているかもしれない(実在よりは架空の比率が高いですが、私が読んだものは)。『はだしのゲン』は、泣きそうだったしね!(読んだ当時小学生)
 そして思い出すのは、実は「記憶の底」で哲也が見た祖父の姿だったりします。うん、あれは現実の流用だから。

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「知ってた? あなたのこと嫌いなんだ」
 放課後の教室。日誌は書くから先に帰っていいと言ったのに、彼は、面白くもなさそうに教室に居残っていた。他に人がいれば、こんなことは口走らなかっただろうにと、無性に腹が立つ。――誰に対してだろう、それは。自分か。
 彼は、きょとんとしたかおで無駄に瞬きを繰り返し、首を傾げた。
「誰が?」
「私が」
 沈黙が落ちる。
 私は黙って、過去の日誌を読んでいた。何故だか展開している連載小説を読むためだ。誰が始めたのか「今日のコマッタ君」というクラスの小松田をモデルにした――そもそもの発端はネタの多い小松田の記録もどきだったそれ。いつの間にかそれは、学園超能力バトルだったり学園メルヘンだったり学園SFだったりに発展している。みんな、楽しみすぎだ――かく言う私も。
 朝のうちに先に目を通しただろう彼は、わざわざ私の机の前にまで移動してきて、視線を向けさせた。笑っていた。
「嫌われるようなこと、澤田さんにしたことあったっけ?」
「直接はない」
「間接には?」
「命を大切にしてないところが嫌い」
 へえ、と言って、彼は一層の笑顔になった。怒ったなら怖くなかったのに。
「そうじの件? 咄嗟の行動でそこまで見抜いたんだ、君だけが?」
 随分とたくましい妄想だねと、言われた気がした。
 それは同時に、彼が方々から一種ヒーロー扱いを受けるようになった一件でもある。学期始めの大掃除のときに、それは起こった。
 窓を拭くために、男子生徒が二人、身を乗り出していた。途中で、外に出ればいいんだと気付いた片方が誘い、バルコニー状になっているところに降り立った。そうして、突風に押されて一人がバランスを崩し、もう一人が腕を掴んで押し戻し、当人は反動で落ちた。幸い、植わっていた木にぶつかって軽い骨折で済んだ。が、助けられた方は蒼白で窓枠にへばりついて震えたまま動かないわ救急車はやって来るわで、かなりの騒ぎになった。
 それが、大体一年前の話。そのとき私は、彼とは同じクラスではなかった。隣のクラスでやはり窓を拭いていて、内側からだったために、ばっちりとその瞬間を目撃した。そして彼は、受身を取るように身体を丸めたり頭を庇ったりはしなかった。
 もちろんそれも、突然のことで身動きすら取れなかった、とも言えるかもしれない。
 でも彼は、落ちる瞬間ですらなんだかつまらなさそうだった。
「手を伸ばさなければ良かったと?」
「小松田君が落ちればよかったなんて言ってないけど? って言うか、すぐにその一件だって思い当たるってことはやっぱり、自覚あったんだ」
 む、と、顔が歪む。笑顔が消えて、実のところほっとした。
 が、すぐに戻ってしまう。
「嫌いだ、って、それで?」
「別に、気になったからつい。さて、書き終わったから帰るわ。日直、お疲れさま」
 言い逃げだなと思いながら、荷物を手にした。あとは、日誌を職員室に持っていくだけだ。

2008 年 8 月 16 日 閑居。

 閑だなー、何故だ、と思ったら…お盆だよね当たり前だよね、という哀しい事実に行き当たりました。そ、そりゃあお盆でお休みの店多いもの…市場だって休みだものね…(没)。
 そんなわけで本来休日扱いな今日ですが、事務所の稼動人数が通常通り(むしろ今日より少ない場合もある)だったせいか、全くそんな気がしなかったんだ…でも家に帰ったらどこか行く予定があったのか早いなと言われましたよ。
 お盆なんて…前後がちょっと慌しい(主に取引先の事情)だけで何の益もないぜ…っ!(泣)

 えーと、読んでいた本を二冊、途中放棄(没)。
 一冊は…題名長いからもうどうでもいいのだけど、古野まほろの最新作。あらすじ読んでる時点でどうだろうと思っていて、図書館に入ったから借りたら二冊目で(一冊目はどうやら未購入)、うーんと思ったのだけど…十数頁で投げました。今までのシリーズは下ネタ思考が男の子だったからまだましだったのかなー。女の子で直な下話題はどちらかと言うと嫌いらしいと気付きました(遅)。いやそもそも下ネタ得意じゃないんだけどね…読めることは読めるのだけど(会話は反応に困るから無理)。ほのめかしとかは別にいいのですけどねー(多分傍から見たら線引きがよく判らないよ、私自身もよく判らないよ)
 もう一冊が、『神様のパラドックス』。映画化もした『神様のパズル』の作者です。これは…駄目というか、読み進まなくってあまり興味もなくて…『神様のパズル』はそうでもなかったような記憶があるのだけど、私が変わったのか今作が違ったのか。主人公(女子大生)が鬱陶しいなー、というのもあります(爆)。次の予約者もあるしもういいや、と。
 はー…駄目だなあ。
 そんなわけで(?)今は、『H2』読み返し中(笑)。もう何回目かわからなくて、展開も下手したら台詞も覚えているのですけどねー。それにしても比呂、かっこ良すぎだろこれ。
 
 明日は小学校の同窓会、なのですが…えっと私、出席の返事はしたけどそのとき十二時集合でご飯は半からの予定、とも聞いたけど…実は何か間違ってたらどうしよう。
 うっかりというか行き違いでどうも誤ったメールアドレスを伝えたようで、メールが来ない。電話するのは苦手なので返事をしてから今日まで放置と相成りました(爆)。
 一人、友人が参加するらしいのは知っているからメールすればいいのだけど、毎度毎度これでもかってくらいに返事の遅い(内容関係なく)子なので、何だかなーと思っているうちに面倒になってしまった(爆)。…まあいいか、近場だし、行ってみて間違ってたら電話しよう(え)。

2008 年 8 月 17 日 懐古。

 ってことで(え)同窓会でした。
 二階が貸切にできるから、とは聞いていたのだけど、全館貸切でちょっと吃驚した(笑)。えーと、比較的安めの料亭? そこで働いている子が同窓生にいるとかで融通が利いたらしいけど…ちなみに、我が家からは歩いて五分くらいの距離(笑)。
 わー誰が誰だかわからんー、というのが半分ほど、顔は判るけど名前…が残りのうちの八割ほど、顔見てすぐ名前判った子もいたにはいたけど。あ、判らないのは、四クラス分集まって四、五十人ほどいたから…当時から全学年名前と顔が一致したわけではなかったと思うし。
 とりあえず、思っていた以上に「友人」と呼べる友人が来ていませんでした!(爆) や、当時は親しかったはずだけど気付くと…あれぇ? な人は結構いたのですが。
 そして、結構ぽつんと座っていたので(汗)、先生が帰られて少ししたら(勝手に)引き上げました。…いやだって明らかに浮いてたし(そもそも馴染もうとしてないよな)、そこそこ飲み食いしてお腹が張ったら眠くなったし(爆)。
 いやでもまあ、先生に(少しとは言え、そしてろくに喋ってないとは言え)お会いできて嬉しかったです。
 あとは、小学校の中学年くらいに喧嘩したきり中学まで絶縁状態(相手は私を見る度顔を背け、私は完全無視していた)だった子と、話ができてよかった(苦笑)。いやー、(今日別の子と話していて)来ると聞いて、和解できるといいなあ、未だあのままだと厭だなあ、と思っていたのです。もうお互い、当初の喧嘩の発端すら忘れてそうだし(爆)。以前と顔つきは変わったけど、変わらず美人さんでした。
 そう言や…変わってないね、とやはり言われました(苦笑)。そこは多分もっと変わるべきなんだぜ、私…(笑)。
 楽しかったは楽しかったけど、場違い感は否めませんでした、はい。明らかに系統が違うんだ! 化粧してなかった女子って多分私だけじゃないか今日?(苦笑)←それだけじゃないけども

 『隣の怪 蔵の中』…実録怪談。
 十五話収録。…ええと実は私、文章で読む実録怪談ってあまり怖くない…何故なのかよくわからないのだけど。小説や漫画の一場面(しかもあまり怖がらせようという意図がないものだったり)の方が、夜中に背後を気にしてしまったりするのだけど…あれかなあ、感覚を切ってしまっているのかなあ。同じようなことが身近で起こると怖いから、と。逆に創作だと、あるわけがないと言い聞かせられる分怖がれる、とか?
 ああでも、「女子寮」は怖い。絵的に。…いや、悲鳴が、か?

 『H2』読み終えました。もう色々と頭に入ってるから、読むペース早い早い(笑)。
 春華とひかりが、どれだけでも厭な女になるだろうにそうならないところが、少年漫画だなーとか。そっちのが好みでいいのです。どろどろの恋愛話に興味はない。
 そしてこれ、というかあだち充の野球漫画ってスポ根じゃないなあ、と思っていたのだけどようやく気付きました。そっかこれ、技術向上とか伸び悩みとかないんだ。恋愛で色々と交錯して思い悩んでるけど。そっかー、ある意味で少女漫画なんだなあ。(でもあだち充の少女漫画が一作しかないのは受け入れられなかったからか?)
 やーでもお約束で爽やかで今風でなくて(笑)、落ち着いて読める漫画です。

 「コードギアス」見てて…これ、今月一杯くらいで終わり?←調べたら判るけどまあ
 終わり方…ルルーシュも死ぬか、逆に、ギアスを与える力(何って言うんだあれ)を受け継いで不死になるかじゃないかとかいう厭な…。

 あ、昨日、キャラ投票設置してみました。
 …いやまあここ二回くらい、企画はまるっきり空振りで終わってるので今回もかなという気はするのですが…ていうかそもそもトップページのアクセス解析見る限り、一日一人か二人くらいしか来てくれてる人いないしねー。まあ、更新してないしなあ…。
 えーとでもまあそれだけに、一票でも入れば何か掌編でも書くと思うので、希望ある方はどうぞー。九月あたまくらいで適当に終了しますので、お早めにー(苦笑)。
 設定項目が十五までで、少ないなーと思ったのだけど、よく考えれば、多分余りますね(爆)。
 初期設定で猫屋の三人くらい設置しようかと思ったのだけど、管理人の設置でも一票が入るようで。何だその哀しい投票。

2008 年 8 月 18 日 選択。

 えーっと今日これを残業して帰ったら明日閑だろうか、残して帰ったら残業することになるだろうか、と考えて、置いて定時で帰って来ました。見極められんよ。
 明日は友人とご飯を食べるので、残業したくないのだけどさてどうだろう。
 ところで、次の土曜と日曜の夕飯が連続外食になりそうで、家(母)のご飯が好きな身としては微妙…。ろくに外食をしない家なもので、外で夕飯食べるって何か特別な気がするのだよね。旅行とか。で…そんな非日常は頻繁に要らん、とか…昼食はさほど思わないのだけど。

 『人質とあたし』…ある架空の国の権力争いと個人。
 最後の方になっての転身(?)は、おおっ、と思ったのだけど、これ…終わってないよ…? 巻数が振ってなかったからてっきりこれで終わりと思ったのだけど、まだまだ続くのでしょうか。元々がネットで公開していたもののようだから作者はそのつもりなのだろうけど…以後も本になるかは、もしかして売り上げ次第?
 うーん…正直なところ、ネットでの公開だったら読んでないけどお金を払って購入してまで読まないなあ、これ。…いやあ、PCモニタで字を読むのって疲れるし、図書館でなかったら手には取っても棚に戻した。←後半ともかく前半はこのサイトの存在意義に喧嘩売ってないか私
 でもまあ、視点がころころ変わるのが苦手で、えーっと内乱起こしてる片割れの王子(ただし図書室で泣いた後)と転身(?)した後の主人公(?)と姫(って言うの?)以外がキャラクターとしてちょっと苦手、というのがあるかも。特に養子の王子(?)さー、うーん。好みじゃない。

 そう言えば昨日、同窓会で再会した子と話していて「結婚は薦めへんけど恋はしなー」と言われました。あ、ちなみに彼女は既婚者。
 恋ねえ…。
 考えてみれば私、恋なんて初恋以来してないんじゃないかなー。つまり、中学以降全くってことですね!(爆)
 やー、恋愛している友人(中学時代には身近にいた。それ以降もいたのかもしれないけど少なくとも気付けてない)を、かわいいなー、いいなー、とは思いましたけど。今はもう、姉が結婚したからいいか!とか。(そういう問題?)
 それより男友達がほしいんやけどなー、と以前別の友人に言ったら、それって恋人つくるより難易度高くないかと突っ込まれました。う、それもそうか。でもなー、色々と男子の生態(笑)について、突っ込んで訊ける相手がほしいのだけどなあ…くっ、兄か弟がいれば!←どんどん恋愛から離れて行く

 月末は、仕事するか友人と読書会(?)するか歴史博物館の講座聴きに行くか…うーんー。

2008 年 8 月 19 日  食事。

 友人とご飯食べてきました〜。…彼女は明日も仕事なのに、ちょっと悪いことをした。
 行こうと言っていた店がまだお盆休みなのか潰れたのか、明かりが灯っていなくて、表で客引きしていたお店にふらりと。
 居酒屋ですが、店内明るくて値段と味と量がそこそこ釣り合っている感じで、お酒の種類が多くて、店員さんの感じが良くて、他のお客との距離が近いのがちょっと難点だけど、機会があれば次も行こうかなーというお店でした。
 食べながら、仕事の話とか共通の友人の話とか。あと、来月一緒に別の友人のところに遊びに行くから、その話とか。…あ、到着の時間とか明日にでもメールするよE!(ここで言っても)
 旅行、彼女は会社の人には行ったこと自体を言わないつもりでいたらしいのだけど、職場から直行なのに荷物訊かれるって…(笑)。そして今回、JRのぐるりんパスを利用するのだけど、そもそも電車にあまり乗らない様子の友人。一緒に行動するからいいよね、と言ってましたが…切符に説明書きついてるから読めよ、と念押ししたけどどうだろう…(苦笑)。
 ちなみに切符購入時、駅員さんに戸惑われ、しかも最低二人からでないと購入できないはずのところ、一人分で発行されかけたよ(笑)。

 ところで今日友人との待ち合わせ場所に行く途中、派手にエンジン空ぶかしして走っている馬鹿に遭遇しまして。バイク。
 やー私、バイクのエンジン音あまり好きじゃないんだよねー(バイク乗りたいとか言ってる奴が)。普通にしてても結構音するのに、わざわざふかすとか。騒音対策で誰か取り締まれ。ってかそれ、色々と傷めるだけで意味ないし。カッコいいとでも思ってやってるんだろうけど、そう思えるのってごく一部だねー、数の問題じゃないけど少なくとも私はそっちの側には回りたくないな。大きな音立てたがるのってあれだよね、よく吠える犬の類。
 願わくば、いつか奴がそのかっこ悪さに気付いてのた打ち回りますように。(ささやかな願い)(でも多分ないよな)(そして地味に性格悪い)

 えーとよく行くサイトの管理人さんがコミケのスタッフをされているようで、そのリポート?を読んで、コミケって…と思いました。
 ある四コマ漫画で、お花見って暴走した遠足だね、というネタがあったのだけど、コミケって…暴走しすぎた文化祭(一部体育祭)?
 しかしまあ、そのレポート、と言うかレポートを書かれている方の日記とか見てると、あー私世間知らずなんだろうなーとしみじみと思います。社会人の自覚ってナニ、って規模の(うわぁ)。…職場がぬるま湯ってのもあるのだろうけども…そうなってくると、周りに恵まれてるのも良し悪し?(あ、その方の周りがどうこうという話ではなく)

 ……ものっそい関係ないけど、今、「笑い飯」の西田さん見てたら『もやしもん』のひげ(名前忘れた)にしか見えなかった…!(笑)

2008 年 8 月 20 日 睡魔。

 今日は…寝たり起きたりな一日だった…(没)。
 というか、起きたら十一時前とか。そうか…涼しくなってきたから放っておくと遅くまで寝てるんだな…(夏場は暑さに目が覚める)。
 いやもうほんとうに…本読む→眠くなる→寝る→起きる→本読む→眠く…夕飯食べるまでエンドレースっ。一体今日私は何やってたんだ(本当にな)。
 次の日曜に行く京都の地図どうしよう(もうどこかの本屋で観光本適当に買おう)、読みたい漫画一気購入したいから古本屋行きたい(月曜に厭でも近くまで行くからそのときでいいや)、という…投げてる、投げてるよ私…。

 『PARTNER』十巻…最終巻。
 引っ掛けに思惑通り引っかかった自分が悔しい…(苦笑)。

 えーと、携帯電話用の猫屋のメールマガジン(サイトに載せているものを配信するだけで書き下ろしはないです)が、先日、配信に使わせてもらっているところの出しているメルマガに紹介掲載されたとかで、登録が三倍くらいに跳ね上がってまして…(元々そんなに人数いないけど)。
 これ…明日になったらどのくらいに減ってんだー、と思うとちょっと…(苦笑)。
 そう言えば、「台風の目」がもう四ヶ月くらい新しいの出してないとかで警告が。そして、この間の配信分をまだサイトに上げてなかった。わーさぼりまくりー。

2008 年 8 月 21 日 眼鏡。

 会社に忘れて帰ってきた…目薬も…(没)。
 えっと眼鏡は合計三つ持っているのですが、一つは度が弱くて(これはもう使ってない)一つはちょっときつい(と言っても実際強いわけではなくてPC使うには強い)のです。見えすぎて頭痛い…。

 『現代怪奇小説集』…その名の通り。但し、ここの「現代」は1988年(苦笑)。
 えーとこれも目的は中の一遍だけで…「怪談宋公館」。幽霊のわんさか出て来る館。雇った現地の人がどんどん辞めて行くのに、住み着いた日本人(そう、住み着いた。戦争中の「強国日本」で軍人さんたちが仕事の為に徴収している館だから)があまり怖がっていない風なのが逆に怖い、かも知れない(笑)。
 何作か、もういいやと投げてしまったけど、面白かったのも数編。うん、アンソロジーはそういうのが楽しい。
 結構な時間をかけて読んだから前の方は忘れてしまったのだけど、「ウールの単衣を着た男」「生きていた死者」は面白かった。前者は、精神ものに落ちがついてしまってちょっとあれだけど。「逆立ち幽霊」は舞台が首里だからかなあ、中国っぽかった。「奇妙な隊商」は、三崎亜記に通じるものが…いや、三崎さんがこの話を知っているかどうかなんて知りませんが。
 作者紹介の、編者のにじみ出る感想が何か面白かった。

 さっき父と話していて、私の中で『蟹工船』のあらすじが『女工哀史』だったことが判明しました。何故だ(苦笑)。
 えーっとあれ、どんな話?
 (調べた)
 …どうして入れ替わってたのかが判らない。なんでー?

2008 年 8 月 22 日 読書。

 今日は本屋行くんだ!と思いながら仕事をこなして、それなのにうっかりそんなことを忘れて残業に突入しかけました。どんな記憶力の持ち主だ私。

 本屋での目的は、漫画二冊と京都のガイドマップ。ワンコインのやつをどうかなーと思っていたのだけど、思っていた以上に嵩張る割に地図が微妙で却下。掌サイズのやつにしました。
 京都は何度か行っているけど、ガイドマップ買ったのはじめてだなー(今までは行き当たりばったりか友人が持っていた)。
 ついでに(?)、古本屋に寄ってここでも漫画三冊と小説一冊。やー…ほしい本あると思わなかった。←失礼?
 …ところでレジで、「売れた!」という声(店員さんが言った)が聞こえたのだけど、それは一体どういう経緯で発された言葉だったのか。
 一、買おうと思っていたのに先に私が買って悔しい
 二、入荷したばかりで即売れて吃驚
 三、値段下げた途端に売れて苦笑
 とか…とりあえず三件浮かんだのだけど、これのうちのどれかか四のその外か。店員同士の会話は、度を越していなければ気にならないけど、どうせならいなくなってから。気になるじゃないか(笑)。

 『ケータイ・ネットを駆使する子ども、不安な大人』…「肥大化するインターネット。コミュニケーション装置としての功罪」が副題。
 導入は、佐世保の小学生が友人を殺害した事件。ネットでのトラブルが原因の一つか、と騒がれたあれ。
 んーと、内容はともかく、どうもバランス悪いな…というのが感想。構成の問題ですか。正直、最終章はほとんど斜め読み(爆)。
 本のデザインは結構好きかも。表紙に、制服姿でノートPCを見る女の子。めくった中表紙では同じ体勢でこちらに目線。各章ごとに、雑踏で携帯電話を操作している写真。

 痴漢を現行犯で捕らえたのが実は女装した男子生徒で誰か引っかかるか友達と賭けをしてた、って話を書こうかとして、まとまらなくて投げました。というか、どこからそんなネタが浮かんできたのか…。
 まあ落ちをつけるなら、実はふざけた賭けが目的じゃなくて痴漢に困ってたよく乗り合わせる女の子のために、とか。それくらいしか思い浮かばない(貧困)。
 やーでも痴漢、私は遭遇したことないけど(中高は遭いやすい電車やバスに乗ってなかったし私服だったら狙ってくる物好きはいない)、友人に酷い被害にあった子がいたな…。あれも、もっときびしく取り締まれと思う(罪の意識なんてほとんどないんじゃないか?)けど、冤罪が多かったりそれを逆手にとって美人局みたいな被害詐欺があったり、を思うとどうにもなー。

 髪と爪を切りたいなーと思いつつ…とりあえず、漫画読みたい。

2008 年 8 月 23 日  溝端。

 まさかこの友人とこんなにも溝があるとは…と知った夜でした(何)。

 えっと、順を追っていきましょう。

 明日、友人Aと京都に行ってきます。高台寺で百鬼夜行展をやるとかで。←先日別の友人と京都に行ったときにポスターを友人が一瞬だけ見かけた展示。それを聞いて「滋賀くらいまでなら行くけどどこでやってんだ!」と言っていたら後日JRの広告で発見、今に至る。
 で、京都は実はあまり観光名所に足を運んでいないしそこで大学生活送ったってわけでもないから全く詳しくないのだけど、何度か行って、きらびやかで散歩にいい(交通網発達してるのに!)お隣さん、のイメージが。
 そして私、出先だろうが何だろうが、そこそこおいしいと思うものが食べられれば何とも思いません。地元名産を、と思わなければ、極論、泊りがけの観光旅行で夕飯ファーストフードでも問題なし(いやさすがにしないと思うけど)。
 が…友人Aは違ったんだな。
 そんなわけで今、食で揉めています。現在進行形で(爆)。…だって多分私、高いもの食べたってよくわからないし、そういうのって苦手だったり食べたくなかったりな食材や調理法が多かったりするのだものー…。
 まあとにかく、揉めてます。まだ、明日(もう今日だけど)の待ち合わせ時間も決まってないという(笑)。いつ寝られるのさこれー。

 やあ、しかし吃驚。以前は友人Aも、似たようなこと言ってたと思うのだけど…いつの間に何が変わったのやら。
 でも、面白いものです。うん、私の書きように怒ってないといいのだけど…(え)。←メッセでのやり取り(ちなみに私はほとんど絵文字を使わない)

 あー眠い。昨日もそれで寝たの一時半ー。

 そして今日夕飯は、会社の人と食べていました。よくわからない団体だった。
 やー、まず開始時に人が集まらなくって微妙で…おまけに一番の年長者が仕事関連のこと語ってたし…最後の方なんて、結構だれてお開きムード側がいたのにがんがん喋ってるし…(ちなみに私は全く話を聞いてない。他で喋ってたり呆けてたりしてた)。
 お口直しにどうぞー、と持って来てくれたライチを食べようとして、汁を額に飛ばしたのはここだけの話(苦笑)。
 …えらい長居してたなー。6:30入りで出たの10:30くらい?

 わーい決まったー。
 いつも(最終的に)投げ遣りで(これは予定に織り込み済みで)行き当たりばったりです。計画性ってナニ。

2008 年 8 月 24 日  秋風。

 天候にも恵まれ(?)、京都行って来ましたー。

 お目当ての百鬼夜行展は、まあ…余禄という感じで(苦笑)。でもあれ、現代作家さんのやつがあったけど、その複製でもいいから販売していたら何千円かまでなら買ったのに!
 そして、しょっぱなから道を間違えてずれた位置にある霊山歴史館(幕末維新ミュージアム)に迷い込む(笑)。
 私は宣伝看板を目にしたときから行きたいー行きたいーと言っていたのだけど友人に却下され、それなのにたどり着いてしまったからと、観て来ました。乙女さん(龍馬の姉)、豪快だな…!(笑)←窓に手紙の文章が書かれていた
 勢いで、トランプを購入して新撰組の羽織を着て記念撮影(爆)。鎖帷子を着てみよう、というのもあったのだけど、なかったです、鎖帷子。出張中…?

 お昼は、昨夜(?)さんざん揉めたものではなく、アフタヌーンティーが食べたい、という私の発言で行きの電車の中で友人が携帯電話で検索して、行けそうなところを選び出し、藤井大丸の中のお店で、念願のアフタヌーンティー。ソファー席で、うまりながら食べてきました。幸せー。
 あー、なんで姫路にはアフタヌーンティーやってるお店がないんだ。それとも、私が知らないだけであるのかなー。

 バスで下鴨まで移動して、宝泉というお店でお茶。
 少しの間、場所がわからずうろうろ。私は、ただ友人について行くだけという(爆)。
 途中、古本屋(新古書)が二件あったのだけど、素通り…(泣)。旅行に専念しろと言われました。旅行にはほんとの一期一会も含まれるんだー!(新古書もほしいものはたくさんあるけど地域の古書店で不意に民俗学の本を買ったりするのも楽しい)

 で、京都駅に戻って大阪で途中下車してご飯。
 ここでようやく(苦笑)、古本屋(新古書)に寄りまして。人が多くて吃驚したのだけど、今日、インテかどっかでイベントがあったのだそうな。あーなるほどそれでー。
 ご飯は、中華のコースをたのんだら…思っていたより多かった…。そしてお互い好き嫌いが多くて、綱渡りのような交渉をしつつ(牛肉のオイスターソース炒めでシメジ食べるからピーマンよろしく、とか)、くらげ以外完食。
 あー、食べた食べた。

 いやそれにしても、夜風、涼しいですねー。下手したら、寒い。 
 今年はそもそも夜、結構すごしやすかったけど(と今日友人に言ったらそれは君のとこの周りが田んぼだからだ!と言われた…そう?)、残暑が短いですね。あ、でも暑さ、戻ってくるとか言ってたような気も。

 明日は免許の講習ー。二時間ほどって…面倒だなあ。

2008 年 8 月 25 日  講習。

 初心者講習行って来ましたー。いやあれほんと…受ける意味って何?(苦笑)
 まー結構面白かったですけど。人の話聞くの好き。話し慣れてるなー、毎週(週一である)この人なのかなー、とか。ビデオも、つくりがちょっと面白かった。

 お昼をたまーに行く中華料理屋で摂って、読みたい漫画を購入しようと古本屋に行ったのだけど、結局止めてしまった。
 うーん、『うしおととら』でも読み返そうかなー(同じ作者)。…あれ考えてみたら私、この人の本、まともに買ったことない。←酷い読者
 で、家帰って『もっけ』を読み返していたら、うっかり眠ってしまって気付けば夕食…何やってんだ私。何やってたんだ本当。

 目を閉じても開けても変わらない真っ暗闇、というのが好きです。
 清水寺の胎内巡り、まだ行ったことないのだよなー。青春十八切符がまだ一枚残ってるから、平日にでもふらりと行ってこようかな。六道寺でも訪ねて、四条の辺りでふらふら買い物でもして…。
 うーん、さてどうしよう。
 とりあえず明日は、今日が給料の締め日だったので仕事が溜まってます(爆)。二連休の上に締め日休んだからな…残業確実です。

2008 年 8 月 26 日 残業。

 思ったよりは短く…でも、月末に出かけたいがために休みを入れたので、今週は残業続きだー(没)。
 まあそうは言っても、家が近いしかえったらご飯も用意してくれているし。かなり楽な部類ではあるのですがね。やること自体は地味な打ち込み作業が主で…嫌いじゃないのだよなあ、そういうの(苦笑)。
 しかし、前の商品切り替え期にちょっと手を抜いたせいで手間が…(爆)。

 えーとこの頃、本を読むのも書くのもあまり熱心でなく…えっ、その二つにやる気がなくなったら私の趣味って何だよ?とちょっと焦り気味(苦笑)。
 やー、映画とかドラマとかアニメとか、映像見るのも好きですけど、うちは基本、テレビがつきっ放し(誰かが何かしら見ている)なものだから、あまり見るに見れないのですよねー…。いや観てますが。
 まあ…いいか(え)。

 実際問題(?)。
 「台風の目」が最終発行から四ヶ月が過ぎまして(六ヶ月を過ぎると休刊扱いになって発行に手間取る)。さーてどうするかな、と。
 本編(というか長い話)も考えているのだけどまだろくろく書けていなくて、短いのも思い浮かんだからそれを、と思ったのだけど…それすら書き止っているという。
 うーんー。

2008 年 8 月 27 日 懐古。

 昔、を語りだすと年取った証拠だよー、と言いますね。
 …そうか、年取ったのかー。
 そしてきっとそれは、この先ひしひしと思うのだろうなー。一応今はまだ、若者の部類に入るはずなのですがね、私。
 そういや大学の…四年生くらいのときに、教室でたまたま居合わせた一年生(のはず。十九の誕生日とかって話が聞こえたから)が、「階段昇ったら息が切れてさー、年取ったわー」と言っていて吃驚したものです。そ、そこは、年云々じゃなくてただの運動不足じゃない? てか、二十代でも大概だけど、十代にそんなこと言われたら還暦の人とか、どうすれば(苦笑)。

 『女には向かない職業』…新米探偵の話。
 題名だけは聞いたことのある小説、というのを図書館の新着の棚で見つけたもので、思わず手に取る(苦笑)。
 訳文独特?の言い回しに戸惑ったりしましたが、面白かったー。何と言うか、強くあろうとする女の人(といっても少しとは言え私よりも年下なのだけど)の背中を見ているような気分になりました。心情がかなり書かれているのに、どうしてだろう。「彼女」という表現がよく出て来るからかな。
 でも、何人もの女の人が出て来るけど、そして男の人もだけど、幸せな人が少ないのが…しんどい。ある意味ハードボイルドだから?

 世界情勢(?)の話をしていて困るのが、私が近現代をよく知らないってことですね。
 世界史は好きだったのだけどさー。近現代は興味がないのと時間配分(と記録量が多いがために大筋が取りにくいほどに細かくなる)の問題で流すように授業が展開されたおかげで、あまり記憶に残っていないという。
 まあこの頃、「へたりあ」のおかげで(笑)いくらか改善されたのですが。でもやっぱまだ、過去の方が得意だ。

2008 年 8 月 28 日 予定。

 明日一時半出勤てなんですかーっ?!(半笑)
 いやまあ…給料日と気付かず休みを入れた私も私なのですが(いまだ手渡しなのでばたばたとしている)。
 それにしても。いやもういいけど。行くけど。残業手当つくはずだし…多分。
 ようやく、病院行こうかと決意した矢先に…。とりあえず、図書館を午前中に…と思ったけど、別段今急ぐものはなくて、日曜にも行けそうだからいいかなー。午前中に病院…どうしようーってか、どこの病院行けばいいんだ。

 あ、そう言えば昨夜、もさもさと作業してました。
 えーと、(遂に)閉鎖したよーとの連絡を受けて友人のリンクを消して、そして思い立って同盟やらサーチやらに登録してみました。トップに張っていたサーチも消滅してから結構経っていたし。
 サイトでの登録でなくて、作品を登録できる、というサーチがあってちょっと感動。「中華小説同盟」さんにもあったのだけど、契約切れているのか消滅していました…(没)。あ、あったら是非とも探したい小説があったのに! 誰か、陸羽の小説書いてないかな。ある程度史実に沿ってるやつ。読みたいのだけどなあ…(陸羽ってのは「茶経」というお茶に関する書をまとめた人。お寺で育ったけど逃げ出した(?)という)。
 そんなわけで、トップ頁の下側がちょっとにぎやかになっています。テキストリンクの方がすっきりして好きだけど、華やかさではやはりバナーだよねーと貼っつけてみました。ご興味あれば、ぽちっと旅立ってくださいませ。

 九月過ぎたら、一挙に更新できそうな話があります。うん、多分九月過ぎたら…十月くらいには全部載せきれるかなー?
 書き終わっていて尚且つしばらくは大幅改変はしなさそうで固有名詞もややこしくない(「深紅に浮かぶ月」が止まっているのはルビを振るのが面倒なため…)ので、おそらくは。
 えっとあれです。日本刀で結構血まみれな話。自己満足度が結構高いですが(爆)。

 そして、ようやっとですが、「台風の目」に前回配信分(四ヶ月以上前…)を追加。
 ついでに、リンクをちょこちょこいじってみました。

2008 年 8 月 29 日 睡眠。

 よく寝たー。
 いやあれです。九時くらいに、十時から子どもが勉強に来る(母が自宅で勉強を教えている)と言われ、朝食だけ食べて、自室に引き篭もって気楽に本読みながら、主に二度寝(え)。
 昼食まで寝ました。寝すぎてか熱中症になりかけたのか、起きたら頭が重かった…(没)。
 しかし雨凄かったです。夢うつつに雷の連打(?)とか聞いた。夕方には上がったけど。

 で、午後から会社行ってきました。働いてきました。うちには半休の制度はないはずなんだが…(苦笑)。
 忙しい時間帯だけいて、終わったらとっとと帰ろーと思っていたのに、意外に今日中に終わらせておいた方がいいことが多くて、思っていたよりも一時間ほど長くいました。いっそ定時までいようかと思ったけど割りときりよく間が空いたから帰って来た。
 わ、私のせいじゃないよ?という間違いが何個かあって焦った…。なんとかなったからよかったけど。

 『妖たちの時代劇』…江戸が舞台の不可思議な掌編たち。
 江戸時代の考証をされていた方が、合間に書き溜めていた掌編。ご本人は亡くなられているようだけれど、残っていたものを選んでまとめたのが本書のようです。
 んー、残念ながら好みではないのですが(爆)。でも、雰囲気があると言うか、読んでいてはじめ、これは江戸時代にかかれた物なのか?と迷った。そういう意味では凄いですよね、これ(いや私江戸時代の文章そうたくさん読んでませんが)。
 物語の内容は好みではないのだけれど、でも、うーん…何か好きではあるなあ、これ。何が、何故、と問われると困るのだけど。

 ところで今日帰り、服屋(量販店)に寄って帰りました。
 昨日のチラシでタンクトップが挙がっていたからあるかなーと思ったのだけど、昨日だけだったのか、見当たらず。いや、もしかしてこれ?というのはあったけど…フリルとかレースとか、いらないから。何ならランニングシャツ呼びのやつでもいいからさ…(イメージの問題だろそれ)。
 この数年、夏場はノースリーブが好きです。どうせならもっと早くさ…この先どんどん、腕出してると目の毒になる危険が…(爆)。
 ポロシャツのような感じのノースリーブ、を探しているのだけど、お目にかかったことがありません。まあそれ以前に私、あまり服を見ないのだけど。思い立ったようにスーパーで買ったり商店街とか歩いててセールの店先をのぞくとかそんなで。
 仕方ないから(?)、七部袖のブラウス(?)とパーカーとミリタリー風の…何と言うんだあれ。ボタン閉めたらワンピースになりそうな感じのやつ…と買って。
 服を買いながら着ない(実は似合わなかった、どうも同じ服を着倒してしまう、新品は着辛い、などなどの理由から)ということが度々あるから、さてこれらはどうだろう。余談ながら、未だ、小学生のときの服が外でだって着られるよ、な状態でクローゼットにあったりするんだ…。

 そう言えば今日多分、夢を見たのだけど(おそらく二度寝のとき)………考えている途中の話かと思い込んで、うっかりしているうちに忘れてしまった……(没)。
 出だしと情景と雰囲気は覚えてる。それしか覚えてない。少女漫画みたいー(そして現代SF)という、珍しい(私にしては)ものだったのに。そして、ちゃんと筋を覚えてたらそれで一本書いたのに。←
 第一印象がこんなに悪い人はいなかった、と、小説に起こすなら書き出しはそんなです。第一印象最悪だった最愛の人、ってのは定番ですよねー(苦笑)。
 どこかの観光地化した小島に、その人と二人で行くことになって。そこでの「私」は、多分二十代半ばか後半くらいの女の人。恋人もいて、一緒に来ることになった男の人も恋人と面識があって。その恋人が「きっとこうなると思ってた」と言ったのは覚えてる(そんな断片)。
 SF設定は、予知とか予見とか、そのあたりだったはず。何か二人で逃げてたよ。タイムスリップ、リープの類もあったかも。
 うー、思い出せない…。悔しいな…っ!

 明日多分残業だけど明後日休みだー。友人との約束入ってるんだー。←活力

2008 年 8 月 30 日 道理。

 まあ…昨日休み(一応)で明日休みを入れて、月末決算と価格変更を終えてしまえるなんてないですよね。
 三時間ほど残業したけど、まだ取っ掛かり…あれ、四時間?
 最後の一人になったのだけど、忘れ物を取りにきた人と遭遇して、「誰が残ってるかと思った」って。いやこっちこそ、誰が入って来たかと思ったよ(裸眼だと顔が判らない)。
 で、ジュース奢ってもらいました(苦笑)。わー甘やかされてるー。

 えーと「台風の目」の話。
 今、短めのやつを書いているのですが、それが終わったら本編。長いの。
 で、それ終わったら一区切り、ということでメールマガジンを一旦、廃刊にしようかと思っています。それ以降、を書くかどうかが判らないものだから。
 ただ、そこから数十年後の違う主人公たちの話を書きかけていまして、そっちの目処がついたらこれをメールマガジンにできないかと…「台風の目」ほど長く続くとは思わないけど。その告知をしつつ終わり、にできたらいいなーと。
 …あ。まだ、セレンとの出会いの話(?)書いてなかった。……廃刊はその後、かなあ…しかし予想外に続いてるなこれ。はじめは、一本目の本編だけでしか考えてなかったのに。
 しかし、色々と書きたいものをその都度書いていたら色々混ざってきてる…登場人物の口調とか行動とか…(没)。

2008 年 8 月 31 日 満喫。

 歴史博物館であった講演(?)、れきはくアカデミー「幻灯とおばけ」を聴きに行って来ました。
 兵庫県立歴史博物館、が正式名称なのですが、そこの学芸員の方がされる…講義? 以前にも一度、「妖怪としての貨幣」というのを聴いたのですが、元々「妖怪」という興味あるキーワード(笑)に引っかかったこともあるけど、お話がわかりやすくて大好きです。小松和彦さん(妖怪の分野で妙に有名になってしまっている学者さん)のお弟子さん(?)だとか。
 今回の企画展示が「光と影のワンダーランド」というものだったのだけど、先にその展示を見てから講演に行こう、と思って展示室に行ったら、そこに香川さん(その学芸員さん)がいらっしゃって、来館者にさらっと解説をしてくださっていたという。私もお話を聴きました。わーい。
 展示は、入ってすぐに中国やインドの影絵。裏に回ると、ちゃんと影も見えました。そしてこの影絵、影だけを見るものと思っていたら(それにしては色とりどりだなーと思っていたら)、両面から見られるものだそうな。←香川学芸員の解説
 でまあ、色々な影絵だとか覗いたら絵があって遠眼鏡で覗き込んでるように見えるやつだとか(浅草の縁日の図、で見かけるような)。将門眼鏡ってのがあって、わざと角を作ったガラス。それで見ると、一つのものがいくつもあるように見えたり、ばらばらに一部しか見えなかったり。将門が七人いた(分身の術? 影武者?)、という逸話からそんな名らしいです。
 そして最後には、体験コーナー。簡易映写機とか…えっとあれ何て言うんだ、円の内側に絵が貼ってあって、側面スリットになってて、回してスリットから覗くと絵が動いてるように見えるやつ。それとか。
 講演(?)は、とても興味深く拝聴しました。メモ取りまくり。…しかし、後で見てちゃんとわかるのかな(汗)。
 江戸期(近世)は、妖怪(不可思議なもの、でもいいけど)はない、ないからこそあるものと見做して楽しもうじゃないか、そのための道具立て(例えば幻灯)を作り出そうという気風があったとか。ところが近代(現代も)は、現実をそのまま映すはずのカメラやビデオカメラに不可解なものが映る(まあ実は技術や構造の問題もあるのだけど)から、妖怪はいるんじゃないか、と逆転してしまっている(それがスピリチュアルブームにもなってないか)、というのが結びでした。
 ああ…なるほど。うん、そうだなー、「いない」ことを土台に楽しんでいたのに、逆にそれが迷信を丸ごと信じていたと映って、それを(見当違いに)あざ笑う側の方が実は迷信を信じてしまっている、というのはあるかも。今。
 民俗学は、生活の流れを眺めて、それが今どうなっているのかというのが面白い。
 
 この講演(?)が聴きたいがために、比較的時間がある休日に月末決算やその他諸々を片付ければいいところを断念して休みにしたのですよー。うん、間違ってなかった。
 こういうのは一期一会だからなあ。

 そしてこれ、一人で行くつもりだったのだけど友人が一人、時間あるから付き合ってもいいよーと一緒に来てくれました。横で寝てましたが(苦笑)。
 終わってからお茶して、彼女がお兄さんの結婚式に着る服を見たいといっていたのでふらふらと。
 お茶、初めて行ったところで、ひっそりとあってちょっと気になるというから入ってみたのですが、ゆったりと雰囲気は良かったなー。シフォンケーキをたのんだら、妙にずしりと食べごたえが(笑)。や、おいしかったですけど。私のシフォンケーキのイメージは軽やかふかふか、だからちょっと吃驚した。
 服は、あらかじめ目星をつけていたらしくてわりとすんなり。よく似合ってました。いやそれが規格が、あつらえたのか?と言いたくなるくらいに嵌ってまして。やーそんなこともあるのですね。そして、姉の結婚式にパンツスーツで出席した私には何の助言もできませんでした(爆)。でも、人が綺麗な格好してるの見るのは好きですよー。可愛らしい。
 関係ないけど、スーツって好きなのですけどね!(何) 着るのも見るのも。スカートよりはズボンだなー。そして黒が好き。ホストじみてない感じに、色つきシャツとか中に着込んでとか。
 閑話休題。
 ふらりと通りがかって目にした服を衝動購入。先日買ったのとデザイン似てるのだけどね…(苦笑)。そして着てみたら、二の腕が太いからか肩幅か、ちょっと肩周りがきつい。しまったー!
 タンクトップがさ…生地の量少ないし凝った技巧や何やもないのに、下手なTシャツより高かったりするのが…いっそ、生地買って自分で縫うべき?(爆)

 『文豪怪談実話』…文豪たちの実話怪談集。
 とりどりに。皆さん、あちらこちらでいろんな経験をしたり、聞き及んだり。また…好きなんだねーと言いたくなる(笑)。
 実体験の怪談自体興味があるのですが、複数人が体験してそれぞれに原稿を書いているというのが面白い。それぞれに見解が異なっていて、しかもその中で「誰々はこう書いているけれども」という、原稿上で手紙のやり取りじゃあるまいし、と苦笑してしまうようなものも。
 目次見てちょっと呻いたのが…佐々木春夫と稲垣足穂の幽霊屋敷の話が併録されているという…。こ、これが先にあったらこっち読んで終わってたよー? …ああでもそうすると、佐々木春夫の他の文章読もうと思わなかったか。それはちょっと損してたかも。
 気になったのが、…川端康成だけ実録じゃないように思えるのは気のせい…?

 えーと以下、先月載せた思い切り趣味に走った(いやいつもだろ)SF?話の、二章目。これまた無駄に長いです。
 書きっ放しなので、まあ色々とあるかと思います。突っ込み(指摘)を頂けると助かります。こんなもの載せるなよってのには…明日には頁変わるしね!←
 …今、というか結構前から三章書いているのだけど(そして四章は四月一日の限定裏においていたやつ)、書き進まないー。あと三分の一なのに、そこでつっかえてるよ。

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 その朝佐々木恭二は、途轍もない絶叫に叩き起こされた。
 去年の夏、自分を庇った兄の死以来ほとんど部屋を出ずにただ生きているだけの恭二は、それを聞いてもただ震えるだけだった。頭からタオルケットに包まり、必死に耳を塞ぐ。
 それが母か父の声かもしれないと考えついたのは、絶叫が聞こえなくなってしばらく経ってからだった。
 おそるおそる階下に降りた恭二は、そこで愕然と凍りついた。
 人の形をした炭の塊が、そこにはあった。おまけにその塊から広がったものか、申し訳ないようにしかし確実に、床に炎が上がっていた。
 そして突然、頭を殴られたような衝撃が起きた。しかし実際に殴られたわけではなく、炎からは距離を置いた位置で膝をついた恭二の頭の中に、誰とも知れない声が響き渡った。そのほとんどが意味を成さない絶叫で、多くが恐怖と苦痛に彩られていた。
 あまりに多くの声に一つ一つを聞き取ることなどできず、ただ、頭が割れそうに痛い。怖い。
 意識の遠のきかけた恭二を、支える手があった。そしてその手が触れたと感じた瞬間、恭二は今度こそ意識を失った。触れた手からは、あまりにも多くの声が――感情が、聞こえた。
 恐怖や必死さ、聞き取れないたくさんの声。そして、その中に恭二への憎しみと失望、愛情を感じ取っていた。
「恭二、立て!」
 父にそう言われたときには恭二は意識を手放していたが、自分自身が恐怖と混乱の只中に会ったに違いない父は、息子を見捨てることはなかった。
 しかし、恭二が意識を取り戻したのは、体を強く打ったためだった。
「…とお…さ……?」
 目の前に、炎に飲み込まれる父の姿があった。
 生きながら焼かれる苦痛、恐怖、絶望。全てが恭二に流れ込んできた。そしてその奥にかすかに、恭二に生き延びろと呼びかける願いまで。
 そして恭二は――強すぎる感情が頭に流れ込んで、再び意識を失った。 

 恭二は限界だった。少なくとも、そう思っていた。
 もう何日も、満足に食べていない。幸い水は水道管がほとんど無事らしく適当に飲めるが、食べ物はそうもいかない。道端の草でも食べられる種類はあるというが、恭二に見分けが付くわけもなく、炊き出しをしているところもあるらしいが、人の多いところには近寄りたくもない。
 どうやら自分は、人の考えていることが聞こえるようになってしまったらしい。
 母と父の死を呆然と受け止め、何度か人の内面に触れて気絶を繰り返してようやく確信した事実は、何一つ救いも生きる手立てももたらしてはくれなかった。
 出火した母から燃え移った炎に家は呑まれ、全焼は免れたお陰でわずかなりと持ち出せたものはあったが、人のいるところにいられないのではお金があっても意味がない。
「…あ…」
 誰かが近付いてくる、と判ったが、もはや動く気力もない。 
 二つ、少年と少女の「声」が近付いてきて、倒れている恭二を見つけ、驚いて駆け寄ってくる。純粋な心配と不安の声。不安には、恭二の得体が知れないことや死んでやしないかということなど。そして――精神感応か、と、「声」がした。
「京、先に戻ってセンセーに急患って伝えてくれ。ああ、道は向こう通って」
「…わかった。けど、後で全部説明!」
 少女の「声」が遠ざかって行く。しかし、少年は近付いては来なかった。いや、近付いては来たのだが、その前に呼びかけがあった。れっきとした、言葉で。
「おーい、少年。意識あるなら反応見せろー。ないなら担いで行くぞ、どっちやー」
 何事だと思いつつ、意思を総動員して頭を持ち上げる。だが、少し離れているだろう少年の姿を見るほどには、持ち上がらなかった。
「よしわかったー、とりあえず意識あるけど動けはせんのやな? 今からそっち行くわー、耐えられんようならさくっと気絶させるから言えー」
 何か無茶な事を言っている。言っている上に、聞こえてくる「声」も本気だ。
 呆気に取られた恭二は一瞬、勝手に聞こえてくる「声」すら気にならなくなっていた。相手はおそらく恭二のこの妙な力に気付いていて、それでいながら助けようとしてくれている。一体何者だ、と咄嗟に「声」に耳を澄ました恭二は、だが、少年の声に気を散らされた。
「しっかりしろー、一応頼りになるはずの医者がおるし、食べるもんもとりあえず、ってそうや、いいもんあるわ。いやあ、家の冷蔵庫整理に行ったとこでなあ、運がいい。ほら、これならいけるんちゃうか? …触れるぞ?」
 ひやりとした手が触れて、一旦、恭二の意識は闇に呑まれた。
 気絶にはすっかり慣れてしまい、そこから意識を取り戻すのも慣れたものだった。
 苦労して開けた目には、丸太を並べたような天井が映った。そして、覗き込む顔に気付く。
 おそらく、恭二よりはいくつか年上だろう。高校生くらいで、人の良さそうな顔つきの少年。驚き、心底安堵したような笑みを浮かべる。――それが、封印したかった記憶を呼び起こす。
 だが彼はすぐに、心底申し訳なさそうなかおになった。
「ごめん、気絶させるつもりはなかったんやけど…今、平気か? 点滴打って、脱脂綿とかで一応水も飲ませとったけど、飲むならそこ。俺、邪魔やったら出てるけど、いけそうなら話したいんや。大丈夫そうか? きついなら、落ち着くまで待つ。ここは山ん中で、まず他に人はおらへんし」
 言われて気付く。「声」は、ほとんど聞こえていなかった。恭二を見下ろす少年の、心配げなものが聞こえるだけだ。
 正直、こわい。人の心の声など聞きたくはないし、少年と関われば、厭でも思い出してしまいそうだった。それでも、今何がどうなっているのかは、知りたかった。
「…っ」
「あ、やっぱ咽喉渇いてるか」
 そう呟いて差し出されたストローを吸う。スポーツ飲料の味がした。以前はそうも思わなかったが、妙に甘ったるい。そう感じても、飲むのはやめられなかった。
 ストローはペットボトルに差し込まれていて、それを丸一本飲み干してようやく、人心地付いた。次はお腹がすいているのを感じたが、そんなこと言えはしない。
 だが、言う前から相手は知っているようだった。
「お粥でも作ろか? お腹すいてるやろ」
「…いい」
 今度は出すことができた声はそれでもかすれていて、おまけに、この数日はもとより一年ほどをろくに会話もせずに過ごしていた。聞こえる声が、自分のものでないような違和感があった。
 だが少年は意に介さず、そうか?と首を傾げる。
「先に…話、って」
「ああ、なるほど。えーっとじゃあその前に、はい、ゼリーとアメちゃん。少しは腹の足しになるやろ」
 時間のない時の朝食に、と宣伝していたのを見たことがあるパックから直接すすれるゼリー飲料と、やたらに種類のあるアメがいくつも。恭二の寝るベッドの取りやすいところに並べて、少年は椅子に腰を落とした。ずっと、そこにいたのだろうか。恭二が意識のなかった間も。
 妙な気恥ずかしさと、病気のときに看病をされているような安堵感。不思議と、厭な気分はなかった。
「場所、ここで大丈夫か? うるさいなら、もうちょっと離れるけど。最終手段は、無線機あるし」
「…何を、知ってる…?」
 少年の気遣いが明らかに恭二の突然身についた能力を踏まえたものであることに気付き、安堵感も何もかも吹き飛んだ。厭な汗が吹き出る。
 うわ失敗した?との、少年の「声」も聞こえた。
「失敗って、何…」
 どうにか体を起こして、少年を睨み付ける。できることなら出て行ってしまいたかったが、今の恭二にはそれだけで精一杯だった。一体、体はどれだけ弱っているのだろう。
 少年が焦るのが判った。
「そ、そのあたりを説明したかったんやって! 無茶するな、栄養状態とかぼろぼろで倒れて一日寝通しやったんやぞ、センセー戻ってるし何かあったら俺じゃ対応しきれんかも知らんのやから! 変なことする気はないから、頼む、休んどってくれ!」
 「声」からもその言葉に嘘はないような気がしたが、離れて聞こえる「声」はあくまで相手の考えの表面上で、少年がそのことも理解しているなら、繕うこともできるだろう。
 恭二に睨み付けられたまま、少年は唸った。が、目を逸らそうとはしない。
「信じられへんかも知らんけど、俺、見た奴の能力がどんなのか判るんや。多分、君がその能力を持ったのと同じ原因やと思う」
 そうだとすればどれだけ不公平なんだろう、と、恭二は思う。少年は身につけた能力に害されることはないのに、自分は、聞きたくもない人の「声」を聞き、こんなにも弱っている。
 そんな恭二の感情に気付いていないかのように、少年は言葉を続けた。
「で、能力に関してやけど、どういう状態かも判る。君が誰かに触られて気絶するのは、自分を守るためにやってることや」
「守る?」
「ああ。離れてても考えてることを知ることはできるけど、触れての方が確実に深く知れる。でも、そんなことは知りたくないと思ってる。だから、判る前に意識を落として断ち切ってるんや」
「…だから?」
「ものは相談。俺に触れてくれたら、警戒する必要がないって判るはずや。考えてやってのことじゃないやろうから難しいかも知らんけど、試してくれへんか?」
 唖然とした。この少年はもしかして、馬鹿なのか。
「…意味がわかって言ってる? 勝手に、心の中見られるのに?」
「勝手ちゃうやん、俺が許可してる。そりゃまー、こわいって言ったらこわいけど。俺やって人に知られたくないことくらい山ほどあるし、自分でも意識してないとこで何考えてるかわかったもんちゃうし、ちょっと家庭環境複雑やからそのへん、どろどろしてない保証もないし」
「じゃあ」
「でも、このまま話とってもらちがあかんやんか。俺、説明とか苦手な上に下手やし。補足なら後でいくらでもうってつけの人らがやってくれるけど、まず信用してもらわな話にならへん。体調回復したら、それ、使いこなせるように訓練もしなあかんし。信じてもらうなら、その能力やし、これが一番手っ取り早くないか? …厭なもんまで見せたら悪いけど」  
 少年の心配の比重は、どちらかと言えば恭二にあるようだった。本当に馬鹿なのかも知れないと、先ほどとは違った意味合いで思う。それとも、偽善か。
 そんなもの――触れれば判る。
「…いいか?」 
 黙っていると、おずおずと声がかけられた。恭二は少年を見て、ゆっくりと頷く。差し出された手を、恐る恐る握った。
 いつものようにたくさんの「声」が聞こえて、意識が落ちる――と思ったときに、叱り飛ばされた。『しっかりせい!』との「声」に、『無理なら一旦手を離すか』とも。今までにないことで、驚きに、気を持ち直す。
 そうして随分と長い間、恭二は少年の「声」を聞き続けた。
「無理やったか?」
 手を離すと、心配そうに少年が声をかけてきた。何故そんなことをと思っていると、『短かった』からだと、「声」が教えてくれた。恭二が思っていたよりもずっと、実際にかかった時間は短いようだった。
「…違う」
「え?」
「ごめん…飛鳥さん」
「いや謝られるようなこと、って名前、言ったっけ俺?」
 首を傾げ、恭二が口を挟むより先に気付く。何故か、顔を輝かせて。
「成功したんか! うわ凄い、名前も判るもんなんや!」
「…能力、判るんじゃ…」
「いやだって具体的にどんなとかわからへんし。えーと、自転車の乗り方判っても実際は乗ったことないみたいな? …っと、で、信用してもらえるか?」
 浮かれていた顔を引き締める。変な人だな、と恭二が思ったのは決して悪い意味ではなく、少しおかしくなってしまった。
 笑ったのは、本当に久し振りだった。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ。んじゃとりあえず、おかゆ作ってくるから待っとき」
「飛鳥さん」
「ん?」
「後で、ちゃんと説明してください」
 う、と笑顔が歪む。やはり、さっきのあれで全て済ませた気でいたらしい。そのあたりまでも十分に、恭二には読み取れていた。
「苦手だからって避けてたら、いつまでもそのままですよ?」
「うー…努力はするわ」
 克服した奴に言われると堪えるなー、という「声」が聞こえて、遠ざかっていく。
 それを見送って、恭二はベッドに体を戻した。体は重いがようやく、安心できる場所に来られた気がした。それは、もしかすると関西に引っ越してきてから初めて。
 恭二がこちらに引っ越してきたのは、去年の春、中学の入学と同時だった。それまでいたのは千葉の都心だったが、特に違和感はなかった。ただ、明らかに言葉が、会話のテンポが違った。そもそも人付き合いは得意ではなかったが、それは決定打だった。
 徐々に学校に行きたくなくなって、そうしたものは周りにも判るのか、簡単にいじめの対象になった。そして――気遣ってくれた兄を、殺した。
「…っ!」
 燃え死んだ両親の姿が脳裏に蘇る。
 家族は皆――死んだ。そのうちの一人は恭二が殺して、二人も見殺しにした。それはまるで、死神か寄生虫のようだ。命に寄生するもの。
 父に触れたときに聞こえた、憎悪の「声」。優秀で人当たりも良かった兄を、欠点ばかりの自分が殺した。だからそのことは、こんな能力を身につける前から知っていた。だが、だからといって突きつけられて傷付かないかと言えば別だ。
 父も母も、思っていたに違いない。代わりに――恭二が死ねばよかったと。
「…っ」
 急に、頭が痛んだ。何かに強く押されるような、脳を直接押し潰されているような痛み。
 声もろくに出せない痛みがあると、初めて知った。
「おーい、ねぎ抜いた方がいいか? あんま食べてないなら、シンプルに出汁と卵…」
 戻って来た飛鳥が、恭二の異変に気付いて一瞬立ち止まり、駆け寄る。伸ばされた手を、咄嗟に振り払った。今、「声」まで聞いている余裕はない。
 飛鳥は躊躇せず、薄い夏蒲団ごと恭二の頭を抱えた。
「ゆっくり、息、して。使いっぱなしやった反動が来てるんや。口、開けて」
 言った通りにできないでいると、あごを掴まれた。聞こえる「声」はひたすらに必死で、気を取られているうちに、口の中に投げ込まれた何かが、舌の上で崩れた。
 砂糖だと気付いたのは、しばらく経ってのことだった。
「ごめん…超能力が脳に関係あるらしいってのは、わかってたんや。でも、わかってなかった。ごめん…!」
「飛鳥さんの、せいじゃ、ない」
 飛鳥自身が超能力に戸惑っているのは、心に潜った恭二が知っている。それでも、喉が渇くことや甘いものが欲しくなることを、知ってどうにかしようとしているのは、むしろ凄い。謝られる理由はどこにもない。
 だが、後悔も本当のようだった。
 痛みの消えた恭二は、そう知らせてぐったりとベッドに横たわると、泣き出しそうな飛鳥を見上げた。
「悪いことしたと思うなら、約束して。…飛鳥さん、誰かの役にたたないならいる価値がないって思ってる。そのためなら、自分が死んでもいいって」
 飛鳥が息を呑む。
 これは飛鳥の心の奥底に沈んでいた考えで、本当は口にするつもりもなかった。飛鳥が動揺しているのを見ると、言うべきではなかったかとの後悔もよぎる。
 それでも、恭二はやめなかった。
「そんなの、間違ってる。それじゃあ、そうやって残された側はどうすればいい? 庇って死なれて、謝ることも文句も言いようがなくて、そんなの、ひどい」
 飛鳥のことを言っているのか兄のことを言っているのか、わからなくなる。
 自暴自棄になって車道に飛び出した恭二を庇って代りに死んだ、兄。決して同じではないけれど、重なるところのある飛鳥に、恭二は勝手に見立てて言えなかった文句を口にしているのかもしれなかった。
「簡単に、死んでもいいなんて思わないで」
 表情を凍りつかせた飛鳥は、ふっと息を吐き、遠くを見るような目をした。
「…そっか、そんな風に考えてたんか、俺」
 驚くほどに感情の抜け落ちた声で、『声』も息を潜めている。恭二は、迷いながらも手を伸ばしていた。無性に不安になっていることに気付く。だが触れるよりも先に、飛鳥の手が恭二の髪を掻き回した。
 それでようやく聞こえた『声』は、それまでであれば耳を澄ますだけで聞こえる程度のものでしかなかった。そしてそれは、言葉を裏切らない。
「不安にさせたらごめん。とりあえず、火にかけたままやしおかゆ作って来るな。――ああもう、そんなかおするなって。最大限努力はするから」
 笑顔で、飛鳥は背を向ける。
 それが拒絶のように思えて、言わなければ良かったと、後悔を落とした。

「奈良山京です」
 笑顔と共に差し出された手に、恭二は戸惑っていた。
 まず第一に、握手をする機会などこれまでまずなかった。日本にはあまりない習慣で、その上恭二はこの一年を引き篭もり、その前はそんな社交行為の必要がない子どもだった。
 そして第二は、恭二が触れれば深くまで心を探れる能力を持っていると、目の前の少女は知っているはずだった。
 まだある。
 第三に――滑らかで柔らかそうな小さな手に、その持ち主の少女の美しさに、のぼせ上がっていた。恭二と同い年だというが、こんな少女と机を並べていれば授業どころじゃないだろうとぼんやりと考える。
「おーい、聞いてる? 聞こえてる? 見えてる?」
 目の前で小さな手が振られていることに気付いて、ようやく我に返る。少女は、怪訝そうに顔をしかめて恭二を見ていた。わずかに少女の方が背が高いが、ほぼ同じ身長で顔の位置も近い。思わず、真っ赤になって目を逸らした。
「あ、あの、触ると…こわくない、ですか?」
「怖く思いたくないから、わざわざ手ぇ出したんやん」
 そう言って、有無を言わさず恭二の手を掴む。思わず頭の中が真っ白になった。
 恭二が今突っ立っているのは、株式会社タシロの研究製作所西宮支部、の、ロビー。飛鳥に出会って、既に一月近くが経とうとしている。その間恭二は、躍起になって能力を封じる努力を行っていた。
 その努力のかいあって、『声』を聞き流すことも、触れてもわざとでなければ深いところまでは潜らないこともできるようになった。
 そこで飛鳥から示された二択が、タシロの持つ保養地で山暮らしを決め込むか、他者と混じっての生活を再開するか、だった。だから恭二は、ここに来た。
 そして――少女に出会った。
 ここまで一緒に来た飛鳥は、少女を妹と言って簡単な紹介を終えた後、荷物を置くから案内するようにと少女に頼んで立ち去ってしまった。そうして、今に至る。
『同いやのに何で敬語?』
「敬語?」
「あ、わかった? やっぱり触るとちょっとはわかるんや。でもとりあえず、それだけなんやろ?」
「…え?」
 何を言っているのかがあまり理解できない。呆けて少女を見ると、今度ははっきりと、顔をしかめた。
「もう、頭回ってないなあ!」
 強気に放たれた言葉に、びくりと身がすくむ。はじめは親しげに近付いてきたのに、ノリが悪いと離れていって、やがては悪意を放つようになったクラスメイトたち。息苦しかった教室を思い出して、そしてそこにつながった兄のことを思い出しそうになる。
 少女は、掴んだ恭二の手をゆすった。
「あのな、触れるだけで何考えてるかわかられるのはこわくて厭やん。でも、仕方ないやろ? 選んでそうなったわけちゃうんやし、頑張って勝手に盗み見するのも防ぐようにしたんやし、ただ避けるだけも厭やし違うやん。だから、確認したかったん」
 まだ、声が出ない。
 京は、うーんと声を漏らし、もう一度恭二の目を覗き込んだ。あまりにも躊躇いがない。
「さっき、何がわかった? 今、何がわかる?」
「…なんで敬語、って…もどかしそうに、してる…?」
「はい正解。ついでにごめん、標準語気持ち悪い」
「っ」
 思わず手を振り払うと、京は呆然としていた。驚きの感情に、失敗したと思うものの、またクラスメイトたちを思い出していたたまれなくなった。彼女も同じだろうかと、怯えていることに気付く。
 だが京は、恭二の怯えなどものともしなかった。
「ちょっとなにそれ、振り払わんでもいいやん!」
「…みーやーこー。今のはお前が悪い」
「お兄? 立ち聞き? 性格悪!」
「降りてきたらお前がべらべら喋っとったんやろ。文句言う前に謝る」
「えー? なんであたしが?」
 怯えていたせいかひたすらに京に気を取られていたせいか、多少距離があるとはいえ、飛鳥が戻って来ていたことにも気付かなかった。『声』である程度の位置は判ると思っていたのだが、思っていた以上に不完全なものだったらしい。
 しかし考えてみればそれはそれで、封じることには成功しているような気もする。
 とにかく今は、目の前で繰り広げられる兄妹の言い合いを、馬鹿みたいに突っ立って眺めていた。二人とも、憎しみめいた『声』は聞こえない。
「気持ち悪いっての、言われて厭やろ」
「感覚なんやから仕方ないやん!」
「関西弁きしょいとか言われてみ」
「うるさい知るかあ!」
「ほら」
「…それなら言ってくれたらいいやん。そんなん、言われなわからへんもん」
 ふてくされたように言って、ちらりと恭二を見た京は、ごめん、とかすかに言って小さく頭を下げた。言葉よりも、『声』がはっきりと謝っていた。
 恭二が固まっていると、歩み寄った飛鳥が軽く頭を撫でる。
「悪いなー、こういう奴で。俺も人のこと言えんけど」
「あ! お兄、あたしと同じこと言ったんちゃうん。図星と見た」
「…言ってはなかったけどなー」
「あーあ、ちょっとだけ見直したのに損した。慰謝料を請求します」
「あほ」
「…あの」
 二人の会話に口を挟むのは勇気が要ったが、どうにか声を絞り出すと、二人は言い合いをやめて恭二を見た。冷や汗が、背を伝う。だが、これは飛鳥にも、ずっと聞きたかったことで。
「勝手に心読まれるのに…こわく、ない…ですか」
 不思議そうな『声』と、呆れたような『声』と。
「だーからー、さっき言ったやん」
「でも、やろうと思ったら、いくらでも…」
「やるん?」
 真っ直ぐに見つめられ、少し距離があるのに間近にいるかのように息苦しくなる。その間に、手を掴まれた。
「気付かれることもなくできるんやろ? でもそれ、するん?」
 問い詰められているわけではなく、確認されている。答えを間違えれば、京も飛鳥も、離れて行くだろうことはわかった。
「したく…ない」
「じゃあいいやん。問題なし。あ、でも場合によっては避けるから。いちいち気にせんといてな? ほら、汗だくのときに近くに誰かにおってほしくないとかみたいな」
 にこりと笑って、京は手を離した。それを少し残念に思って、恭二は、そう思ったことに慌てる。
 京の態度に恋愛感情めいたものは虚しくなるほどに感じられず、つまりは望みがない。それなのに恭二に好かれたところで、嬉しいはずがない。
 それにしても兄妹だなと、半ば無自覚に恭二は意識を逸らす。
 何も言われずに二人を見て血縁と気付くほど姿が似ているわけではないが、持っている空気や強さが、同じ質をしている。それが、一緒に過ごしてきただろう時間を思わせた。仲のよさも滲み出ている。
「で? お兄、何で戻って来たん?」
「ああ、そうそれ。叔父さんたち、食堂に集まってるらしくって」
「あ、そなん? じゃあ行こ、食堂地下やから。あ、恭二って料理できる?」
「きょ、恭二?」
「え、名前違った?」
 含みなく不思議そうに首を傾げてから、ああ、と京は大きな動作で手を打った。
「ごめんごめん、順番間違えた。苗字で呼ばれるとお兄と紛らわしいから、名前で呼んで? で、こっちだけ名前呼びもあれやから、名前で呼ばせてもらうな。もう、お兄が割り込むから」
「俺のせいか? お前の強引っぷりは、思い通りの順番通りにやっても面食らわせたやろ」
「えー?」
「厭なら厭って言っとけよ。流されとったらそれで定着するからな」
 とりあえず移動ー、と言って、飛鳥は恭二と京の肩を掴んで押す。
 保養地にいた間訓練に付き合ってくれた飛鳥だが、未だに恭二に触れることに躊躇いがない。散々付き合ったし慣れた、と本人は言うが、むしろ逆に警戒させそうなものだ。何しろ飛鳥は、恭二の無軌道だった力を目の当たりにしているのだから。
 それなのに。
「え、ちょ、ちょっと、何で泣いてるん!?」
「わあ?」
 京の慌てた声に比べ、飛鳥はのんびりとしている。それでも、二人ともが本当に驚いて慌てているのは判って、止めようと思うのに止まらない。人前で泣くなんて――泣くなんて、恥ずかしいのに。
「あー…お前がいじめるから」
「ええっあたしのせい?!」
 そんなわけがないのに、少しだけ本気にしている京。恭二を気遣って、身をかがめてくれている飛鳥。
「僕――こ、ここに、いて、いい、の…か…」
「おってくれる方が嬉しいんやけど?」
「何でここまで来てそんなことで悩んでるん」
「だっ…そん、資格…っ」
 飛鳥に抱きしめられるように背を叩かれ、京は頭を撫でてくれる。まるで子どもをあやすかのようで、それが一層に不安を掻き立てた。
 ここにいて、荷物になって、厄介者になるなら。こんなに優しい人たちにさえ疎まれ、悪意を向けられるようになるなら。――そうでなければ、兄のように、殺してしまうかもしれないから。
 不安だけが大きく膨れる。触れたところから、二人が親身に心配してくれていることが判って余計に、膨らませる。
 溜息が、聞こえた。
「何でおるだけで資格がいるんや?」
「敢えて資格とか言うなら、その力で好き勝手しようとしてないところとか、思い上がってないところとか?」
「邪魔やと思うなら、とっくに放りだしてるって」
「そうそう。ちょっと厄介かも知れへんけど、そのくらい、あたしたちだって一緒やし。いちいち資格とか言ってお伺いたてなあかんなら、あたしらもここにはおらへんわ」
「って言うか、今更それ言われるとさすがにちょっと傷つくなあ」
 はあぁと、飛鳥が大きく息を吐いて、恭二の肩にうなだれるように頭を置く。そうしてからきっぱりと顔を上げた。
「大丈夫。恭二はここにおっていい。俺が決めた」
「あたしも」
 にこりと、京が笑いかける。
 そうして、三人は歩き出した。恭二は、泣きそうになりながら決意した。二度と、彼らを疑うことはやめよう。

「ん、健康状態戻ったな。検査結果も、特に異常はなし、と。そっちから何か訊きたいことは?」
 数日をかけて移動を繰り返してあちこちの検査を受けて回り、最終が岩代という医者の問診だった。
 岩代は、恭二ら同様にタシロのビルに寝泊りしている。飛鳥の言う「三巨頭」のうちの一人だ。ちなみに他の二人は飛鳥の叔父とタシロ経営者の身内。三人ともが恭二の能力を知っていて、さすがに接触はさりげなく避けられるが、共同生活を送っているせいもあってか、馴染んできている。
 恭二の岩代の第一印象は、スキンヘッド、だった。白衣でなくサングラスに黒スーツだったりすると、一般人には見えないだろう威圧感めいたものも持ち合わせていた。
 飛鳥と京は能力の制御訓練中ということで、恭二は一人で岩代との面談だ。
「あの…この能力、脳が関係あるって聞いたんですけど」
「ああ、まだ仮説だがな。俺はあまりそっちは突っ込んでやってないんだが…人の脳の働きがまだ完全に解明されてない、って話は知ってるか?」
「そうなんですか?」
 ドラマでやってたんだけどなあ、という岩代の「声」が聞こえたが、俺もリアルタイムで見てないしなあ、という呟きも一緒に聞こえた。
 昔のドラマだろうか。少し気になるが訊いたら嫌がられるだろうか、と考える。考えを覗き見されて気分のいいはずがない。
「大まかな予想やら特定できてる部分もあるにはあるんだが、個人差が大きくて、どれが個人差でどれが共通かの境がはっきりしないってのもある。DNAが解析されたって話は知ってるか?」
「え。あ、はい…聞いたことは…」
「DNAってのは、解析したはいいが成分だけわかっても一体何がどう働いてるのかわからん、もしかしたら働いてないんじゃないかっていう部分がわんさかあるんだ。聞いたことあるか?」
「は、はい。あの…ジャンクとか何か、そういうのですよね…?」
「そうそれだ。脳ってのも同じでな。物としては、数多くの医者やら何やらが解剖してるし、ここに刺激を与えたら指を触られたような感覚がある、なんてこともわかってる。でも、そうやってわかってるのはごく一部だ。おまけに、さっきも言ったが人によって違ってたりもするしな。虫の声を聞いたときに右脳が反応する奴がいるかと思えば、左脳が反応する奴もいる。で、だ。使われてるのも一部らしいんだな。難しい数学の問題を前に必死に頭しぼって考えたところで、実は脳の大部分はさぼってるんだ」
 恭二と向き合いながら、岩代は、軽く自分の頭を叩いて苦笑した。
「だから、超能力が使われてるときの脳の様子を調べたら、活発になってる部分があるにはあるんだが…果たしてそれが超能力が原因かというのは、まだ断定はできてないんだ。使ってないときにも一応反応はあるし、おそらく超能力自体がなかっただろう頃の記録は残ってない。超能力がない人との比較も微妙でなあ…そもそも、脳のこと自体がよくわかってないしな。それでも推論は立てられるんだが、結論出すのはもっと慎重に行こうぜってことで、目下探求中だ」 
「…はあ…」
「そう、呆れたかおするなよ」
 え、っと慌てて顔に手を当てるが、岩代の「声」からは、負の感情は感じられない。顔も、苦笑に留まっている。
 そこでふと、恭二は首を傾げる。
「あの」
「うん?」
「脳の使われてなかったところが使えるようになって、それで今までなかった力が使えるようになった、ということ、なんですよね?」
「ああ。仮説だがな」
 意地や慎重さというよりはどこか面白そうに、岩代は「仮説」との注釈を入れる。だが恭二は、自分の疑問をまとめるのに手一杯だった。ここにいる人たちは厭がらずに恭二の言葉を待ってくれるが、それでも、緊張してしまう。嫌われたらどうしようという、恐怖も付いて回る。
「その…だからって、僕以外の人にまで影響を与えることなんて、あり得るんですか? えっと、あの…凄く遠くのものまで聞こえるようになるとか、足が速くなるとか、力持ちになるとか、そういうのだったらわかるような気がするんですけど…人の考えがわかるとか、幻を見せられるとか、っていうのは…脳の働きでどうにかできるもの、なんですか…?」
「んー」
 腕組みをして、椅子の背に体重をかけて天井を見上げる。恭二は、そんな岩代を息を潜めて見詰めた。色々と考えているのはわかるが、断片的なのと専門用語が多いのとで、あまり意味が掴めない。
 やがて、腕組みを解いた岩代は、頬をぺしと叩いた。
「いいか、これは俺の推論だ。どっちかと言や、漫画寄りのな。それでもいいか?」
「はい」
「そうだな。何か考えたり、体を動かすときなんかに、脳はその情報を伝えようとするだろ。それが、何でやり取りされてるか知ってるか?」
 恭二の知識は、ほとんど小学生のときで止まっている。だが、刺激が必要とでも思ったのか、部屋に入れられたテレビをつけっ放しにしていたことは度々だ。中には、教育番組も含まれていた。
「…電気信号、とか何とか…」
「はい正解。ごく微量だが電気を流して、足動かせーとか昨日何食べたっけ、とかやってるんだよ、生き物ってのは。幻肢っていう、切り落としたはずの体の一部がまだあるように感じられる、って症状があるんだ。これはどうも、切断で一度はなくした、親指なら親指の、動きの指令を出したり感覚を受けたりする部分が、別の場所にうまれることでできるらしいんだ」
「…?」
 一生懸命についていこうとはしているのだが、理解が追いつかない。
 そんな恭二に気付いたらしく、岩代は人差し指を額に当てて目をつぶり、眉間にしわを寄せた。思わず、もういいですといいかけるが、岩代が目を開ける方が早かった。
 唐突に手を伸ばして、恭二の頬をつつく。仰天して、目を見開いた。
「こうつつかれると、頬を触られてるってわかるだろ? でも幻肢のある奴は、例えば、頬を触られたと思うのと同時に、指を触られた、とも思うわけだ。もちろん、指をなくすまではそんなことはなかった。指をなくした後に、何故だかわからんが、別の場所に新しい電気信号の回路が生まれちまったわけだ。で、それを利用して義肢を動かせるようにするって研究が進んでる。折角生まれた機能だ、上手く繋げば血の通ってない作り物でも自分の意思で動かせるようになる」
「…それは…本当の話、なんですよ、ね…?」
「ああ。まだ完璧じゃないがな。まあとにかく、生き物ってのはそんなふうに、いくらでも適応が利くもんなんだよ。だからこれも、適応の結果じゃないかと思うんだ」
「適応…ですか?」
「そうだ。その結果、脳の電気信号の力が強くなったとしたら、どうだ? 自分の中の電気信号を他人にも強制的に狙い撃ちで発動させれば、幻覚くらい見せられるかも知れない。他人の電気信号を拾うことができれば、考えていることもわかるかもしれない。…まあ、考えや動きってのはその電気信号を受ける側が問題になるんだからそれだけじゃないだろうが、大雑把に言うとこんな感じか。これ、俺の仮説」
「…でも、どうして…」
「あの日、何かが起きた」
 あの日、という岩代の言葉に、苦い感情が重なった。あの日。両親が死んだ、多くの人が亡くなり、今も続いてるその始まりとなった、あの日。
 岩代はかすかに、自嘲気味に笑った。
「それが何かなんて訊くなよ? とにかくその何かで、脳に異変が起こった。その結果、発火したり液化したり、それまでになかった能力が生まれたり。一見変化がないように見える俺たちも、実は何か変化してるのかも知れん。…知ってるか。発火やら液化やらでの死亡は、明らかに十代に少ないんだ。それ以下やその上は、性別も年代も、モンゴロイドだろうが違おうが、割と似たような割合で死者が出てる。いやまあ、未だに行方不明者も多いからはっきりとは言えないんだがな。人種に至っては、圧倒的にモンゴロイドが多いから、何とも。それでも、それが正しいとして仮説を立ててみようか。超能力は、発火する代わりに生まれたとは考えられないか。逆に、超能力が生まれ損ねて、発火に至ったとでも言えるかも知れんな」
「……何らかの脳の異常で、この力を持つようになるか死ぬか、だった、と…?」
「まあそんなとこか。しっかしまあ、お前さんといい奈良山きょうだいといい、我慢強いな。俺なら、御託はいいから結論だけまとめろ、って怒鳴ってるところだ」 
 どう応えたものか、岩代はあっけらかんとそんなことを口にする。
 そうして不意に、笑みを消す。それだけで、凄味があった。
「ここからは、内密の話だ。奈良山きょうだいと恵梨ちゃん、ザキ以外には緘口令、ってことで。まあそのうち、秘密にする必要もなくなるだろうがな」
 ここで生活をしている者以外には話すな、ということになる。何かと出入りする者は多く、たまに泊まる者もいるが、定住に至るものは今のところはいない。
 頷くと、岩代も頷き返した。
「ようやく、一連の件を解明する体制が整えられつつあってな。幾つかの企業やら大学やらの連合で、一応中心に日本政府ってことになってる。タシロもそこに一枚噛むらしい。まあ、具体的に何が変わるかって言うと、扱えるデータが格段に増えるとか外部からの依頼が来るかもしれないっていうとこで、お前さんたちにゃ直接の関係は少ないんだがな。ここまでは、言えば表向きの話だ。出入りしてる奴らにも、恵梨ちゃんが話をすることになってる」
 で、裏なんだが、と言いながら岩代は机の上を探った。何か探しているようだが、やたらと物の積み上げられた事務机からは、なかなか見つけ出せない。
「ここみたいに既に調べ始めてるところは多くってな。超能力のことも、たどり着いてるところがある。もっともこれは、お前さんたちくらいの年代のあたりで噂になってることの方が詳しいらしいがな」
「噂?」
「ん。ああ、噂だ。二階建ての家を跳び越えた人影とか何もない手から炎を出したとか、少し前なら都市伝説で笑い飛ばす類の話だ。親を亡くしてストリートギャングみたいに徒党を組んでる十代が多いらしいが、そこで噂になってる。中にゃ、当事者もいるだろうしな。お、あった」
 岩代が引っ張り出したのは、ビニール製のリストバンドだった。金具もしっかりとしているのにどこか安っぽいのは、タシロが売り出している、子供向けの特撮物の派生商品だからだろうか。丁度、恭二が幼稚園に通っていた頃に放送されていたものだから、覚えている。通信機でありながら武器にもなる、隊員たちの必須小道具。
 意外に覚えているもので、懐かしいと思いつつも何故ここで出て来るのかと困惑して、恭二は岩代とリストバンドを見比べた。
「そのかおは知ってるな? 何とか戦隊のグッズらしいが、とりあえず、これが丁度よかったらしい。希望があれば、時計や指輪にも変更できるらしいぜ。つけとけ」
「これ…ですか?」
「ああ。発信機がついてる。どこの誰がやってるのか知らんが、超能力者狩りが起きてるらしくてな」
「――え?」
「研究のために連れ去られてるとも、私設軍にしようとしてるとも聞いてるが、今のところははっきりしない。が、急に姿を消した、それもどうやら超能力が使えたらしい奴ってのが結構いるらしいんだ。他の企業のところでも、そういった話が出てる。縁あって関わってた奴が、急に姿を消した、ってのがな。勿論建前上、今回の共同体制に参加してるところでは危害が及ぶような検査も研究も、被験者の意思を無視した調査も認めてないが、建前は建前だし、今回参加しなかったところもある。気休めみたいなもんだが、一応な。玩具だが、無線もついてる。おいおい、もっとしっかりしたのも用意するとさ」
 手渡されたリストバンドは、ビニール特有の手触りと、思っていた以上の重みがあった。
 ひたひたと、不安が恭二の胸に押し寄せる。この数日の慌しさに紛れていた不安までが一挙に押し寄せ、自分でも、かすかに手が震えているのが判った。
 底の見えない淵を覗くような、妙にぽっかりとした気分でいる恭二に、不意にふわりと、暖かな感情が触れた。
「センセー、戸ぉ開けてー」
「勝手に開けて入れー」
「京抱えてるんですって。あーけーろー」
 呑気な飛鳥の声に我に返り、面倒そうに立ち上がりかけた岩代よりも先に立ち上がり、戸を開ける。そこには、京を抱えた飛鳥が立っていた。
 京はぐったりとして気を失っているのか、目をつぶっている。京を横抱きに抱えた飛鳥の腕からは、赤い血が流れている。
「っ…!?」
「恭二もおったんか。あ、それ。俺の赤やで」
「…………え?」
「おーい、戸口で話してないで入れー」
 ぽかんと立ち尽くす恭二の横を通って、そうやった、と苦笑した飛鳥が部屋に入る。とりあえず、京を診察用に置かれている寝台に横たえる。
 そうして、恭二を振り返った。
「邪魔して悪い、ちょっとセンセー借りるわ。座っとき」
 利き腕から血が出ているというのに、のんびりと恭二を気遣う。入り口近くに置かれた椅子を指差し、自分は、さっきまで恭二の座っていた、岩代の対面の椅子に腰を落とす。
「ちょっと京が暴れて、頭打ってもて。診てもらえます?」
「ああ、そりゃいいが…とりあえず腕出せ」
 驚きもせず、岩代は飛鳥の傷口を洗い、消毒して包帯を巻く。またやったのか、この頃は落ち着いてたのに、という「声」が聞こえて、気付けば恭二は声を出していた。
「何…何が、あったんですか…?」
「あー。京が自分の幻で錯乱して、止めようとしてちょっと引っかかれた。よくあることやから、気にすんなって。な、グリーン」
「…はい?」
「グリーンやろ? 俺、レッド。京はピンクな」
「いや、あの…何の話ですか」
 包帯を巻かれた飛鳥は、確かめるように何度か腕を振って、うん?と首を傾げた。ポケットを探り、出てきたのは恭二が手にしているリストバンドの、色違いだった。
「これ。あとは、ブルーとイエローとホワイトとブラックやな。って残りのが多いやんか」
「なんで戦隊物の話…」
「え、だってこれそれのやろ? まだ在庫あったんやなーって感心したんやけど。京が欲しがったんやけど、けっこうな値ぇしたから買えんかった思い出の一品。でもこの無線、十メートルしか使えんってのは詐欺やと思うな」
 怖がるのが馬鹿らしくなった、といえば言いすぎだろう。だが恭二は、いつの間にか震えが止まっていることに気付いた。飛鳥は、いつもそうだ。根拠もなしに、安心させてくれる。
「その話は置いといて、飛鳥、どうした京ちゃんは。この頃は安定してきてただろうが」
「ああ、それですか。うん、見せる幻を選んだりできるようになったんで、攻撃できるようになりたいって言うんで、その練習を」
「攻撃ってお前…」
「悪夢でも見せられたらできるでしょ、攻撃。相手のイメージだけ引き出すのができるはずなんですけど、今は自滅してますね」
「そんなこと…どうして…」
 恭二は、思わず口を挟んでいた。岩代も苦いかおをしている。
 どう言えばいいのかわからなかった。そんなことを京にさせる飛鳥を責めるのも、何故飛鳥がそんなことの相手をするのかと言うのも、何かが違う。焦燥感だけが募った。
 飛鳥は、あっさりと肩をすくめた。
「自分で自分を守れるなら、そうした方がいい。出番がないように努力はするけど、完璧じゃないからな。危ないとは思うけど京もやる気やし、止めるほどの理由がない」
「でも…それなら、飛鳥さんがやることないんじゃ…」
「ここで一番暇してるのは俺やし。幻と現実の違いもくっきりわかるから、被害も少ないし。えーっとあれや、テキザイテキショ」
 怪しげな発音をする飛鳥からは、気負いも悲壮感も感じられない。あまりに当たり前のようで、返す言葉が見つからない。岩代も、諦めているようだった。
「じゃあ…僕が、攻撃できるようになりたいって言ったら、協力してくれるんですか?!」
「うーん。もうほとんど、俺にできることないけどな。読まんようにしてるのをやめたらいいだけやし。それより、我流でいいなら空手とか教えよか?」
「え?」
 恭二自身何を口走ったのかと疑うような発言だったというのに、返事はさらに予想外の方向にあった。そういう問題なのか。
「小さい頃から男手が俺しかおらんかったから、これは強くならな、と思って、色々かじったんや。迷惑かけたくないから、どこも昇進試験とか受けんと辞めたけど。ほら、ああいうとこって基本、喧嘩禁止やから」
「…お前さんの先行きが不安になってきたぜ」
「えーっ、何でですか。最大限、生き残る努力してるだけじゃないすか」
 恭二と岩代は、揃って溜息をついた。眼が合う。
 強くなろう、と恭二は思った。それこそ、昔見た戦隊の人たちのように。飛鳥や京を止めるには、どうやらそれしかなさそうだ。せめて、足手まといにはならないようにしなければ。



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