翌日、晴れ渡った空の下で、アイリーンはコンラートと対していた。
朝の試合からは大分経つというのに、会場は、コンラートが見事に上官を打ち破ったこと、無名の顔を見せないアイリーンの快進撃、そして、その二人の剣さばきがよく似ていることで沸きかえっていた。
闘技場からは、特等席に座る、身代わりのヒルダがよく見えた。
「上達を祝うべきかな、教えた側としては」
「ずいぶんと、余裕があるようね」
「君は、ぴりぴりしているな。過度の緊張はよくない」
開始が告げられているが、二人とも動かなかった。話は、盛り上がる人々にまぎれ、他へと届くことはないだろう。
これは手合わせではないのだと、言い聞かせる。負ければ――しかしそこで、迷う。顔も知らない他国の王子よりよほど、コンラートは近しく、いい「結婚相手」なのではないか。元々の目当てがアイリーンに付属するものだったとしても、他も似たようなものであれば、変わりないのではないか。
何が最善なのか、わからない。
「試合中に気を抜くのは悪い癖だと、言っただろう」
打ち付けられた剣に、我に返る。本気ではなかったそれに、練習のような打ち合いが続く。打ち込んでも、いなされる。
一度、それを止めて距離を置く。
コンラートは本気ではなかったに違いない剣戟に、息が上がる。昨日の勝ちをすべて重ねても、かなわない気がした。
全てを込めて突いた剣は、あっさりと跳ね上げられ、手元を離れた。勝者が決まり、会場が沸いた。青空に、こだまする。
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