月の兎は、毎日夢を見ます。
夢の中では、黄金色の、何か風に揺れるものの間を走っていました。空には、やはり黄金色のまるいものが浮かんでいます。
月の兎は、仲間から「ススキ」や「月」という言葉は聞いて知っていても、それが何を指すかは、よくわかっていませんでした。
ただそれは、地球に行って来たという兎から聞いた話によく似ていました。
月の兎は、そこに行きたくてたまりませんでした。
「ねえ、どうやったらチキュウにいけるの?」
「簡単さ。星の降る日に、地球に行く星に乗せてもらえばいいんだ」
聞いてすぐに、月の兎は地球に行きました。
でも星は、一つも最後まで一緒に来てはくれませんでした。みんな、どこかへ消えてしまいました。
月の兎は、夢の通りの光景によろこび、はしゃいで、やがて――かなしくなりました。
ここには、仲間も見慣れた風景もありません。
「僕――帰り方聞いてないよ」
大変な事に気付いた月の兎は、いつまでもいつまでも泣き続けました。そうして夜が明けて、また夜が来ても、泣き続けました。
月の兎は、今も月を見て泣いているのかもしれません。
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