遭遇


 柔らかな草地に浮かび上がった魔法陣は、青白い燐光を放っていた。

 ややあって、その中心に長身の男が浮かび上がった。筋肉質の引き締まった体つきで、髪は短い。武人にはよくある外見特徴だが、男の瞳は赤く、髪も、オレンジ色という人には在らざる色をしている。その上、男の全身は魔法陣が放つとの同じ光を纏っていた。

 赤い瞳は、迷うことなく魔法陣の手前に立つ少女に向けられた。

 少女は、年のころは十二、三。纏ったローブとうなじのあたりで束ねた長い黒髪が、異界からの召還術の余波で起きた風になびいている。

「よお、どう――どうした、シュム。眼が据わってるぞ」

「――カイ」

 男と少女は陣の内と外で親しげに名を呼び合う。が、男の腰はやや引け、少女は、見かけを裏切る凄みを放っていた。

 ぎろりと、少女が男を見る。ほとんど、睨んでいる。

「呑もう」

「あ、ああ…?」

 少女が陣の中に真っ直ぐに差し入れた手におずおずと男が触れると、風と光が消えた。夕暮れ手前の街外れに残されたのは、一回り以上は年が離れて見える男と少女だけだった。

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