虚言帳

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2008.7

2008 年 7 月 1 日 ところで先月のタイトルがしりとりだったと気付いた方はいらっしゃるったのでしょうか

 早いですね、今年ももう半分が終わってしまったよ。
 でも、七月は何故か「よっし!」という気分になる。何故だ。誕生日があるからか、梅雨が終わって、夏休み(今や縁はありませんが)の始まる月だから?
 まあ何にせよ、元気になれるのはいいことだ。

 『雨の塔』…外界から孤立させられている場所で生活する少女たち。
 図書館でふらっと手にとって。外界からの隔離、鳥篭の中、というのは、実際になるのは厭だけど眺めるのは面白い、と思う。寄宿舎とか。これもまあ、全寮制の学校、ですが…高校と思っていたら大学で、ちょっと吃驚した。
 四人の少女、二組の同室者たちが描かれています。四人とも、地の文での表記が苗字なのが面白い。下の名前だったら、きっとべたついた印象になっただろうなあ。
 もっとどろどろと隠微な感じになってもおかしくなかった内容なのだけど、そうでもないところが不思議。単に私が敢えて感情移入をしなかっただけかもしれないけど、絵を見ているような…いや、ガラス細工でもないし…ステンドグラスでも、見てるような印象の小説。

 隔離された学園、というとどうしても、恩田陸の『麦の海』…だったっけ何だあれは、『三月は深き紅の淵に』を基にした長編シリーズのあれを思い出す。それでなくても恩田さんは、「閉じられた世界」を好んで書いていると思う。
 実はちょっとそんな話を書いているのですが(あまりに冒頭で止まっているから中表紙のアンケートのところには載せられなかった)、私のはもっとコメディー調ですからねー(と言いつつ私が書くと無駄に暗くなるのが厭だ)。続きを書きたくなってしまった(苦笑)。
 …折角(?)なので、書けている部分まで掲載。主人公の名前すら出ていないという罠(笑)。久々に一人称視点です。

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 見知らぬ教室で居眠りをしていた。
 ぐるりと周囲を見回すと、ありふれた、でも、今まで私が通ったことのあるどの校舎よりも豪勢だと判る教室。三十六個並んだ机と椅子には、教卓真ん前の私以外誰も、座っても立ってもいない。
 机に突っ伏したままでも眼に入る私の腕は、黒色の厚い布地に包まれていた。袖口には、蘇芳色の三本線。上体を起こすと、セーラー服と判った。スカーフも蘇芳だ。
「どこ、ここ…?」
 素朴な疑問は、静寂に飲み込まれた。
 窓の外はいっそ絶望的なほどに晴れ渡っていて――
「死神でもひなたぼっこしてそうやわ」
「っ」
「誰?」
 噴き出したような気配があって、とりあえず廊下に向けて言ってみたものの、返事はなかった。代わりに、軽い足音。
 思わず駆け寄って力任せに引き開けた扉の向こうには、角を曲がる人影があった。でもそれは言葉通りに「影」で、本当に人型だったかどうかすら、実は自信がない。
「もー、わけわからーん」
 呟いて、へたりと扉にもたれかかった。目を閉じる。

「お目覚めになりましたか?」
「ふえ?」
 聞き慣れない堅苦しい声。というかここはどこだ。揺れている車の中――?
「あ」
 うわやらかした、と思いつつ、とりあえず体を起こす。車の後部座席を占領して眠り込んでいたらしい。今日はじめて袖を通した制服も、どうにもしわができている。まあ、セーラーの冬服だからわかりにくいけど。
 そこで再び、声を上げそうになった。
 さっきの夢。人のいない見たことのない教室で目覚めたあれ。今と同じ格好をしていた。…まあ、だからどうってこともないのだけども。
 髪を手櫛で梳きながら、前を見る。ミラー越しに、運転中の秘書の人が一瞥を寄越したのが判った。苦笑も呆れも見られない。無表情で、何が楽しくて生きてるのか、と思わせる。それとも単に、雇用主の隠し子の面倒を見させられている現状が不満なだけだろうか。 
 とりあえず、頭を下げておくことにした。
「すみません」
「いえ。お疲れになったんでしょう。そろそろ到着です」
 淡々と、好意や気遣いが感じられない代わりに皮肉や嫌味も感じられない声音で返ってくる。こういう人は嫌いじゃない。ただ、そうですか、と返した私の顔は、バックミラーで見る限り微笑していた。とりあえず笑顔を見せてしまうのは、癖だ。
 窓の外をぼんやりと見詰めると、なるほど、田園風景の中にぽこりと、いっそ異様とさえ言えそうな校舎群があった。
 ちょっと見ただけでは、博物館か個人の豪奢な邸宅か、と思いそうな建物。大雑把には、中央に校舎が固めてあり、北側に宿舎が、南側にそれ以外の関連施設が配置されているとか。ああ、教員宿舎は西側。正門からすれば裏側だ。その後ろは山裾だったりする。
 ちなみに、私がそれらのことを把握しているのは、今朝方閑すぎて、学園案内のパンフレットを熟読してしまったから。
 それによると、この来栖学園は戦後間もなく創立された。全寮制で、幼等部から高等部まで男女合わせて一万数千人ほど、生徒でない者も含めても二万人は超えないだろう人数が暮らしているらしい。
 最寄の駅と商店街までは、車で一時間弱。辛うじてでも都市部と呼べそうなところに出るには、そこから更に電車で一時間ほど。ちなみに、学園に至るバスはなく、タクシーを呼ぶか学園の車を借りるしかない。必然、実務に関わる関係者も、ほとんどが宿舎生活というのが現実だとか。
 ネットで調べた情報によると、わけありで入学する生徒が多いとか。一例を挙げるなら、親が大物政治家で、それを恃みに万引きから始まり見初めた少女を妊娠させた挙句に母子共に殴り殺した馬鹿息子。さる大家の近親婚でできてしまった娘。そして面白いのが、それらの一方、汚れきった外気にさらしたくないという理由で入学させられた箱入り娘と息子たち。
 さて私は、どちらの理由だろう。…まあ間違いなく、前者なのだろう。
 ちなみに、来栖というのは創立者の苗字で、特定の宗教的象徴とは関係がない。が、それに乗じてか単に創立者か関係者が思うところがあったのか、宗教学が選択授業に取り入れられているのが珍しい。
 来栖学園には大学も大学院もあるが、それらは打って変わって、県庁所在地の華やかで適度に田舎な一角にあったりする。
「必要なものがあれば、いつでも声をおかけください」
「はあ」
 はて、常に「父親」の傍らにいるはずのこの男に、私は何を望めばいいものか。
 そうそう、私がここにいる理由。それは、生物学上と多分法律上も親子になる新城宗佑(あらきそうすけ)にある。 
 突然出現した「父親」は大手企業の代表取締役で、しかもその企業は、色々ときな臭い噂の絶えないところだった。多分、ヤのつく人々と直結のつながりがあるのじゃないか。
 ところで母親は、今頃第二の人生を踏み出せているはずだ。彼女に幸いあれ。己の子どもではあっても憎しみしか抱けない男の子どもでもある私を、愛情は注げないまでも、よくまあ虐待ひとつせずに育ててくれたものだと思う。私ならきっと、中絶したかそれが間に合わないなら密かに殺すか捨てた。
 そのところの事情を知ったのはついこの間なのだけど、そこではじめて、母からの愛情が感じられない理由を理解した。どうせなら、もっと早く教えてくれていた方が、私に悪いところがあるだろうかと思い悩まずに済んだというのに。
「ところで、本当にいいんですかね。むちゃくちゃ高そうなんですけど、学費とか」
 密かに死体を始末するのよりきっと高い。
 そんな物騒なことを考えているとは知りもしないだろうが、秘書の人は、バックミラーで見る限りはやはり無表情に言った。
「気になさるようなことではありませんよ。むしろ、貴女の意向も聞かずに決められたのだから、立腹されてもよろしいのでは?」
 リップク…なかなか漢字変換ができず、ちょっと困った。小娘相手に固い言い回しを使わないで欲しい。というかこの人、出会った当初からずっと敬語だけど、馬鹿らしくはならないのか。
 秘書の人は、多分二十代半ばくらい。でも、落ち着きすぎの雰囲気からすると、もっと上なのかもしれない。何と言うか、得体の知れない空気がある。
 長めの前髪は細いフレームの眼鏡が上手い具合に散らして、これで笑顔でも見せられたら、二枚目俳優ですと言われてうっかり信じそうになるだろう。でも、ずっと無表情。一月ほど前に出会って、昨日今日はほとんど一日中一緒にいたというのに、のっぺりとしたそれしか見たことがない。
 ついでに、指がすらりと長くて、ピアノでも弾かせたら凄く似合いそうだ。
「思うところがあれば仰ればよろしいでしょう。十数年に亘って養育を放棄していた父親です。そのくらい、当然の報いだと思いますが?」
「八幡さんって、あの人に対して容赦ないですね」
「日頃の行いの成果ですね。それと失礼ながら、八坂です」
「え。あ、うわ、ごめんなさい! 神社つながりで覚えてたらうっかり」
「…いえ」
 今の間は何だ、怒らせただろうか。鏡越しの能面からは何一つ読み取れない。
 しかし本当に、つかめない人だ。でもまあ、嫌いじゃない。うん、むしろ好きかもしれない。
 とはいえ、あまり知らない人なのだからなんとなく距離はある。というか、物心ついて以来、それを一切抱かない人がいただろうか。多分いない。まあいいか。
 私が投げやりな自問自答をしているうちに、正門前に到着していた。ゆっくりと、車が止まる。そして秘書の人は、当然のようにシートベルトを外した。   
「少々お待ちください」
「はい?」
 ドアを開けて外へ。何事かと見ていると、秘書の人は、これも当たり前のように、閉ざされた正門の端にあるインタフォンらしきもののところまで歩いて行った。何か話している。
「…つかれた」
 するりとこぼれた呟きに、自分で驚いた。が、納得する。
 うん、疲れた。
 前の家では、看護師という多少不規則な労働形態の母は、いないかいても眠っているかお互い顔を合わせないようにしているかで。人が傍にいるだけで、こんなに疲れるものなのか。
 …しまった。寮生活なんて、これ以上に人だらけじゃないか。昨日今日は少なくとも秘書の人だけで、ホテルはそれぞれに一部屋だった。寮だと、たしか相部屋。いつも他人がいる生活とはどんなものだろう。駄目だ、想像の埒外だ。
 流されるままだった行動を少し後悔したけど、もう遅い。
 正門は開きつつあって秘書の人も車に戻ってくる。そしてそれ以前に私は、どんなことをしても生きてやる、というほどの気概がない。どこをどう探したって。「父親」の庇護下にいれば楽ができると、知ってしまっている。
 ――まあ、いいや。
 なるようになるさ。「ケセラセラ」のメロディに乗せて、そんなことを嘯く。
「お待たせしました。まず、生徒会室に向かいましょう」
「はい?」
「ここは極端なほどに生徒の自治が進んでまして。必要なものも注意事項も、とりあえず全て、生徒会から受け取る必要があります」
「――日曜やのに、仕事してるんですか?」
 自転車にも軽々追い越されそうなくらいにのろのろと敷地内を走る車の中で、正直、呆れ返った。生徒の自治はパンフレットやネットにも特色として挙がっていたけど、いくらなんでもやりすぎじゃないのか。
 だけど秘書の人は、涼しい無表情で肯定した。
「ここでは、生徒会が国会のようなものですからね。ただ、本物よりも活動的かつ広範囲に及んだ上で身軽ですが」
 熱意や責任感はこちらの方が強いかもしれませんね、と、さらりと厳しいことを口にする。
 そして淡々と、着きましたよと、エンジンを切ってシートベルトを外す。
「私もご一緒しますので、少しお待ちください。ああ、荷物は後で運びましょう」
「一緒って…一人でも行けますけど?」
 助手席に乗せていた書類ケースから目当てのものを見つけ出したらしい秘書の人は、体ごとひねって私を振り返り、無表情に首を傾げた。
「お聞きになってませんか? 私も、事務職員としてここで暮らすことになっています」
「え?」
「臨時雇いですが」
 そう言って秘書の人は、A4の紙を差し出した。そこには、八坂篤朗を三ヶ月間雇うといったことが書かれている。採用通知か。私が読み取ったのを確認すると、するりと用紙を戻す。
「母校で教鞭をとる、というのもやってみたかったんですが、あいにく、教員免許を持っていませんでした」
「母校?」
「はい。わけあって、中学から高校まではここの住人でした。OBというやつですね」
「はあ………?」
 懐かしいな、と言いながら、顔はやはり無表情だ。私の視線に気付いたのか、彼は息だけで微苦笑した。
「表情がなくてすみません」
「え? えー…謝るところですか、それ?」
 と言うか、自覚してたのか。突っ込んでよかったんだ。
「お怒りになる方は多いですよ。悪い癖です」
「それはまた、習得の難しそうな。ポーカーにでも明け暮れてたんですか」
 何をどう言ったものか迷って、くだらないことを口走る。もう少し、回転の速い脳みそか気の利いた脳みそを持って生まれたかった。うん? この二つは、もしかすると同じ物だろうか。とにかく、最低に近い応答だろう。
 だというのに、一瞬。ほんの一瞬、彼は、ひらりと微笑んだ。 
 もっと笑えばいいのに、という、きっと無神経だろう言葉を飲み込んで、私は別のことを口にした。微妙に気が動転している。
「それじゃあ、生徒会室の位置を教えてください、先輩」
「そうでしたね。申し訳ありません」
 詫びられ、じっと、彼を凝視した。
「何か?」
「ずっと気になってて、でも少しの間ならいいかと思ってたんですけど。そうじゃないなら言います。気を使わなくていいですよ。あなたを雇っていたのは、私じゃなくて私の父だとかいう人ですから」
「けれど、間接的にはやはり、雇用主でしょう?」
「でも今は、学校に雇われてるんでしょ?」
「ああ。実は、給料は二重取りになります」
 さらりと。
 つまりは、ここに残るのも「父親」の指示ということらしい。「父親」が何をしたいのか、さっぱりわからない。        
 母がどうしようもない経済難に見舞われたと思ったら、唐突に出現した「父親」。それらを片付ける代わりに私の親権を手にしたかと思えば、一緒に暮らすでもなく、中三の十一月という中途半端にもほどがある時期に、陸の小島に入学させられた。
 仮説一。
 母からは視界に入れるのすらおぞましく思われているにも拘らず、感謝されなくても役に立ちたいと思うほどに愛している。今まで姿を見せなかったのが不思議なくらいの、いや、やったことを考えればそれは当然なのか、とりあえず、金持ちで献身にあふれたお役立ちのストーカー。とすると、過去に母をレイプしたのも、突っ走ってしまった若気の至りか。これは、嫌われていると理解しているだけましな部類に入るのかも知れない。
 仮説二。
 実は、母から話を持ちかけた。脅迫の類だ。なるほど、今まで嫌々私を育ててきたのは、こういったときの切り札としてということか。今ならDNA鑑定も容易く、私が誕生した一件は一度は警察沙汰にもなったらしいから、立証は可能だろう。長々と切り札を温存して今に至ったのは、これまではそれほどの危機がなかったからだろうか。
 仮説三。
 何らかの理由で、「父親」に直径の血縁者が必要になった。金持ちで顔は十人並みなんだから今でも遅くはないはずだけど、急遽必要になったのかもしれない。そうすると、入学は一時の隠れ蓑か。しかしその後に何が待ち受けているのか。ううむ、政略結婚くらいしか思い浮かばない。
 他にもいくらでも仮説は立てられるだろうけども、突っ込みどころを踏まえた上でありそうだと思えるのは、今のところ私にはこの三つくらいしか考えられない。     
 しかし、私係にされてしまったということは、この人は秘書ではなかったのか。まあどうだっていいけど。      
「間接的にでも私も雇用者なら、命令ということでお願いします」
「何がご不満で?」
「慇懃無礼っぽいところが」
 つい即答してしまったけど、彼――ええと、八幡は違って八坂青年(?)は、無表情にまじまじと、私を見詰めた。そうして、柔らかく微笑んだ。
「気が向いたらそうしましょう」
「…実は遊んでませんか」
「さあどうでしょう?」
 そう言えば、「父親」を批判していた気がする。雇用主に忠誠というわけではないのか。でもそうすると、はて、私の世話係でいくらもらって納得したのやら。それなりに自尊心やら矜持やらがありそうなのだけど。少なくとも、小娘相手に仕えてよしとする人ではないような。
 まあいいや。
 

2008 年 7 月 2 日 だからといって、どうという話ではない



 えーと、重い…かもしれないですが。上が「悪ノ娘」で下が「悪ノ召使」。(以下、ネタばれなので反転)
 これ見てて、あーでも命を引き換えに「生きてくれ」ってのは、呪いでもあるなあ、と思ったりもしました。
 いやだって。
 その価値がわからないなら別だけど、そうでないなら、だってもう簡単には死ねないわけじゃないですか。辛くっても、苦しくっても、後を追いたくたって。
 そこを深読みすれば、復讐にもなるよねえ…とか。死によってですが自分は解放されて、相手は残される。それまでのお姫様暮らしで、真っ当に考えれば、その後が幸せにいける可能性は低いし…なったらなったで、一生後悔するだろうし。…とか、黒いことを考えるに至ってしまいました(苦笑)。

 『警視庁刑事の事件簿』…実際の事件を例に挙げた刑事たちの行動。
 著者は、元刑事。まあ、そういう話です。意外に(?)読みやすい。

 「ゴンゾウ」…面白いかも知れない。や、雰囲気好きだなーと思いつつ見てたら、最後の方の…えっ、と思わず画面を凝視した(苦笑)。
 軽いノリで、一話完結型で行くのかなーと、新人の悩みも小規模に解決されたところで気を抜いて、片手間に観ていたら…たら。細かいところだけど、病院から連絡受けた人の反応が、何かよかった。←二人撃たれて、死んだ、との連絡が来て呆然とそれを伝えたのだけど、どっちがだ両方か、と怒鳴られて慌てて縋るように無茶苦茶な訊き方をした
 これは、結構期待、かも。  

2008 年 7 月 3 日 けれども、戻れません

 …改めて、昨日、思いっきり何してたんだろう私…。
 いやもう、大から小まで、ミスがあちらこちらに。…本気で私、昨日寝てたんじゃないのか。目を開けて、手を動かして喋りながら。

 そう言えば昨日、気付いたら切れていた傷の原因が不明。会社で朝、味噌汁作り終えて気付いたら切れてたんだよなー。
 左手の人差し指の根元(掌側)に、一センチほどの切れ目。ちょうど皮一枚か二枚分切れていて、血も出てないし痛くないから、どうでもいいといやいいのだけど…どこで何やらかしてこれ?
 包丁の扱いはさすがに気をつけているし、それ以外に切れそうなものの心当たりは…まさか、豆腐のパックや揚げの袋? …だったら厭だなあ(苦笑)。

 あー、アフタヌーンティーを楽しんで(?)みたい。でも今ちょっと検索かけたら、一番近くでやってそうなのは…神戸。
 ううっ、何故大学時代に思い立たなかったんだー!(大学は西宮で神戸は通学路)(でも当時お茶に千円を越えたら多分手を出してない)

2008 年 7 月 4 日 それってどうなの…

 免許更新の手続きに行ってきましたー。運転免許取得から二年(正確には保持から二回目の誕生日)で更新なのだけど、取った翌年に二輪取ったから一年延びてます、私の場合。
 …前回、開始日を間違えて行きかけたあれ。そして今回も見落としていて…初心者講習、別の日なのですね…しかも一月後。月曜って…あまり休んでくれるなって言われてる曜日ー!
 あれですね。土日が休みの勤め人は、即日受け取りのところに行った方がいいみたいですね。私はまだ、休みはある程度自由が利くからいいけど…。

 『ものいふ小箱』…不思議な話、を詰め込んだような本。
 怪談と言えば怪談だけど…不思議な話、だなあ。感覚として。うん、こういう感じ好き。

 昨日の「コード・ブルー」は微妙だったなあ…期待していた分、うーん。
 設定としては、小説(漫画でも可)だと面白そうなのだけど、ドラマでやるとばたばたしてるだけで終わってしまう感じ。
 …ただ、藍沢(だっけ?)を見て、思わず、「あっ手塚(by『図書館戦争』)がいる!」と思った(笑)。あちらよりも重症な感じですが。

 今日は一日ぼーっと。
 母が外出していて、面倒で昼と夜は二食、会社のうどんだったのですが…そのままきつねうどん、も飽きたので、昼に焼きうどん、夜にカレーうどん風味にしたら。
 …えっと、自分で食べる分にはいいけど、人には振舞えないな!というできでした(半笑)。焼きうどん、焼きが足りなかった…キャベツはともかく長ネギの生はきつい(緑色の部分)。食べたけど。カレーうどん風味は、だしにルーをひとかけら入れただけという横着ぶりです(笑)。
 あとはあれだ。ずっとPCでアニメ流しっぱなしにしてたせいか頭痛い…気になるけど誰か持ってないかな、という漫画に『リボーン』が加わりました(苦笑)。

 ところで、母のお土産。鳥取なのに熊本産メロン…何故。
 というか鳥取って、私、十月に行く予定なのにー! 何か、先越された気がする!(笑)

2008 年 7 月 5 日  そして、時間は過ぎる

 …何かもう、私の注意力のなさっていっそ脳の欠陥とか言い張った方がいいレベルな気がしてきた…(不謹慎)。
 そんなわけで、無駄に残業してきました。…というか、余裕ある方がミスをしがちなのですよね(全部が全部とは言わないまでも)。やはりそれは、集中力の問題ってことになってくるのか…?

 『ジェネラル・ルージュの凱旋』…救急病棟部長の収賄疑惑。
 私服を肥やすためじゃない収賄ってのはさ…法は犯しても人間としては真っ当(かも知れない)から困るよね…。再読です。将軍、格好良すぎ(笑)。
 初読だと勢いで読んだけど、うん?ってとこも多々。いやまあ別にいいのですが。それにしても、暗喩が多いですね。気付いてなかった。そうかー、それが戯画めいた感じをさせてるのかー。妙に作り物っぽいなあ、というのが不思議だったのだけど、これか。←勝手に納得
 そしてやっぱり、田口先生が好きだ(笑)。忙しそうなのにのんびり、の空気を放つ人。そして最後のぎりぎりのところで、料理の乗ってないちゃぶ台をひっくり返して相手の足だけを止める感じ(何)。

 そう言えば昨日の「魔王」。…これ、伊坂さんの小説のドラマ化かと思っていた時期がありました(笑)。や、だってこれもちょっと異能が絡んでて犯罪物だったような…(読んだことはない)。今、漫画化もしてるから一連の動きかと。
 いやまあそれらは措いて。
 これ…ツッコミどころがありすぎて、いちいち突っ込んでいたら(性分)疲れてしまった(苦笑)。隣で父も見ていたのだけど、苛々する、見ん方がいいな、と結論を下していましたよ。←これもツッコミで
 だってこれさー。韓国ドラマの翻案、とは聞いていたけど、社会の様子もだけど、警察機構、多分かなり日本と韓国では違うはずですよ(というかこれを見て思った)。身内や知人が関わる捜査に参加させるか、敢えて外すか、という判断も違ってくるだろうし。何より、正当防衛が成立したからってそのテの不祥事(?)があった人が警官になれるとは思えない…多分今もそうじゃないのか。それとも、一切の記録から消し去ってるとか?
 そういった違いを、確実に噛み砕いて大筋だけ使って「別物」にしてしまうか、比較的近い空気のある昭和の戦争後とかに時代設定をおくとか(しかしそうなるとなおのこと警官になれないですが)、そういうことをしないと厳しいよ…設定として。
 それにしても、刑事さん走りすぎー(笑)。撮影大変だろうなあ、とぼんやり思ったり。
 そして、生田斗馬は好きだけど、大野君(下の名前知らない)の顔はあまり…髪型のせい、が強い気がすけども。←地味に致命傷?

 明日は、図書館行って本屋も行って。『夏目友人帳』がでているはず(嬉)。

2008 年 7 月 6 日 どうして、そうも逸れる

 えー…何か放置していた話(手書き)の打ち込みを再開しました。…移り気すぎだろ私。

 『悪魔は天使の胸の中に』…ある連続殺人の話。
 元FBIのプロファイラーと、男やもめの現場刑事が登場人物の核。…でもなー、私あまり、プロファイリングとかサブリミナルって効果薄いと思っているからなあ…。
 だってプロファイリングって、統計と心理学に基づくものではあるけど、例外はどこにだって多分にあるものだから、当たり外れも当然あるわけですよ(可能性として七十パーセント、とか言われても)。だからそうなってくると、統計学を基礎においた占いとどう違うの、っていうさあ…一資料としてはあっていいと思うけど、この小説に出て来るみたいにずばずば「当たる」というのは何か、違和感。
 プロファイラーさんが辛い過去を抱えながらも闘う美人さんで、刑事さんが自己を律する正しく人望厚い人。ううん…(唸)。

 「Tomorrow」見てました。面白そうな感じ。
 ツッコミどころは勿論(え)ありますが、設定からして、興味を惹かれる。
 八年前まで医師だったけれど今は転職して市役所員の主人公が、破綻寸前で外部から招いた医師にして経営学を身に着けている新任医師の来た病院に関わる、という話。菅野美穂の看護師さんがいいんですよー、言いたいこと言っちゃって、挫けて反省して立ち上がる感じの女の人で。
 それにしても今期、医療ものと刑事ものがちょっと大目、ですね。どちらも好きですが。そして「ROOKERS」は二期連続?(と言ってもバレーであまり回数いってませんが)

 ところで、ふっと思い出して話題になった(?)二点。

 タロットカード。
 小アルカナと大アルカナの二種類がありまして、前者が二十二枚、後者が七十八枚。(…と覚えていたのだけど、今ウィキペディアで調べたら前者が二十二枚、後者が五十六枚であわせてタロットカード、との説明が。あれ?)
 日本でおなじみなのは、小アルカナですね。0の愚者から始まって21の世界まで。
 ちなみにこれ、私、両組とも持っているのですよね。一時、小アルカナなら大雑把に意味も言えました(苦笑)。読んでた小説の主人公がタロット占いが得意な女子高生で、そこから興味を覚えて。大アルカナは、持っているだけですけどね〜。多分、購入時に見たきりじゃないか(汗)。
 懐かしいなー、高校受験のとき、受ける高校これで決めたよー(え)。…いや、縋った藁と言うか最後の一押しというか、ね?
 何故この話題、と言えば、ドラマの「魔王」で小道具に出ていたからという。

 菅原道真。
 私、世界史専攻でしたが日本史も結構好きですよ。問題は、中学時までしか体系立って学んでいないから、知識のある年代とない年代、ある事柄とない事柄の知識量の差がえらいことになっていることでしょうか。あ、でもそれは世界史にしても同じだ(爆)。
 この人、唐が内紛やら何やらで落ち目になっているからもう国交は切った方がいい、と言った人(そして反映された)。で、そういった行動が藤原氏の目についてしまって、九州に左遷されたのですよねー。当時、政治の中心は京都。手紙届くのでさえ、下手したら何ヶ月とか。遠くに行っちゃったら、もうやれることないですよ、政治的には。
 「東風吹かば 匂いおこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ」という歌が有名。そして後を追ってきた、という飛び梅の逸話にちなんで、太宰府天満宮では梅ヶ枝餅を売ってますねー。(頂き物の「伝言」が、それにちなんだ話です)
 この人の死後、朝廷で異変があったり敷地内に落雷があったりで、怨霊になったぞーっ、と大騒ぎして祀り上げたのが、北野天満宮。
 いやあでも左遷とかって、実はぶちぶつこぼすの見せ掛けだけでそこの生活楽しんでたら面白いのになあ、と思ってしまったりします(笑)。だって、権力遊び好きな人ばかりじゃないでしょうよ。
 えーとこの話題はあれだ、地球温暖化云々、環境破壊云々、の番組見てて、アメリカのハリケーンを天罰だ、というようなことを言っていて、どうせ天罰ならホワイトハウス行けよ、弱いところにいっても意味ないだろ、道真公に慌てふためいたのは直近に影響あったからなんだぞ、と連想したところから(爆)。

 連想ゲームは面白いです(違)。

2008 年 7 月 7 日 だって…厭だ…

 行かないといけないのは判ってるのですが…歯医者。
 こればかりは、自己治癒力云々でどうにかなる話でもないし、むしろ、放置すると悪化するし…親知らず、横倒しってことはあれですよね、放置すると虫歯になりやすいし、抜くとなると切らないと抜きようがないよね…(怯)。
 な、なかなか踏ん切りがつきません(没)。

 『平台が待っている』…ある出版社の若手営業さんの日常小話。
 何気ない、でも引っかかる日常の「謎」をこうかな?と解き明かしていく営業さん。
 うーんまあ…書店や出版社の裏話、に興味があってほのぼのが好きな人にはいいのじゃないかな。主人公に気負いがなくて、そこは好き。
 最終輪の書き下ろし、やっぱりつなげちゃうのか!と思ってしまったり(苦笑)。
 余談ながら、この人の小説は『片耳うさぎ』が一番好きかも知れない。

 「あんどーなつ」、ほのぼのといい感じ。とりあえず、次も見よう。
 「CHANGE」は、次が最終回ですかね? 今何回目だ、全十回というのは見たのだけど。終わりに向けて、まとめに入ってしまったのがちょっと残念。
 そういえば今日から、この辺りの地域では「薬師寺涼子の怪奇事件簿」が始まります。おっかなびっくり見てみる(苦笑)。…いやーこのシリーズは、二作目くらいまでは好きだったのだけど、今はあまり好きではない、の、ですがね…(黙)。
 あと気になっているのが、「ここはグリーンウッド」のアニメ。撮ってまだ見ていないのだけど、…どうして今頃?

 手書きの話の打ち込みが面倒でなりません。
 …いや、手書きで打ち込み、が一番好きな形式ではあるのですけども。更に言えば、打ち込んだやつを打ち出してもう一度見直す。で、どれも順々に話が違っていく、と。
 でも、打ち込むのが面倒ー。

2008 年 7 月 7 日 そう言えば

 某遠山に、「星に願いを。…原稿ください」とおくったら、「一年に一度の願いがそれでいいのか…?」と返されました。
 おまっ、そう思うなら原稿寄越しやがれーっ!(泣)
 ちょっともうあれですよ…「天球儀式」、予定では年明けには打ち上げも終わってるはずだったんだよ?!
 …そしてお星様は、まだ願いを叶えてくれていません…(没)。

2008 年 7 月 8 日 

 …つくづく、私のしゃべり方って苛っとくるだろうな、と思った日でした…(どんな)。
 いやーでもあれだ、きっと私、私とは友達になれないだろうなー、と思うのですよね。うん、きっと無理。

 『シチュエーションパズルの攻防』…銀座のバーで広げられる有名作家の推理。
 叔母の経営するバーで働くことになった文学部大学生、が語り手。これも日常の謎、かなあ。というよりはむしろ、「理屈と軟膏はどこにでもくっつく」を連想してしまいましたが(苦笑)。
 んー、私にとっては可もなく不可もなく。

 「シバトラ」、かわいー!(笑)
 いやこれ、面白いどうこうより、可愛い、とカッコいい、でしょう(笑)。それにしても小池徹平、ああいう風に見せられたら二十歳超えてるとは思えないなあ(しみじみ)。次は高校への潜入だそうで。うん、生徒に見えるよ。
 頼りになる友達に、懐いてきた可愛い女の子に、無茶苦茶な上司に色物の先輩、特異能力、と、盛りだくさん。漫画っぽいノリ、と思ったらやはり原作があって漫画でした(苦笑)。
 あと気になるドラマは、「正義の味方」くらい、かなあ。このドラマ、話はあまり惹かれないのだけど、志田未来が出るなら見たい。

 それとついでに(?)、「夏目友人帳」と「薬師寺涼子の怪奇事件簿」も見ました。
 「夏目〜」、あの絵がアニメになるってどうなのか、と危ぶんでいたのだけど、気にならなかったです。良かった。原作自体がいいのは勿論なのだけど、でも何と言うか…何度か読んだ話でそれをアニメで見て、泣くとは思わなかった…。「もうさびしくないね、レイコ」…ってああもう…!
 OPもEDも、とりわけ目を引くものではないのだけど、「らしさ」が伝わっていいな。OPに子狐がいて、密かに嬉しい(笑)。
 そして夏目、漫画だと白黒だから何も思わなかったけど、色素薄いな! 漫画特有の不自然さじゃなくて、実際にありそうな色だから、少し不思議な感じがしましたよ。で、あれだ…色っぽいなー、と思ったり。名を返すときとかさ!
 「薬師寺〜」は、アニメオリジナルの話とは聞いていたけど、これまでに出版されている小説版の後、に時間軸がおかれているのかー。しかし、判りやすいようにだろうけど、いちいち事件の名前つけないんじゃないかなお涼…いや、逆につけそうか?
 OPが、ルパンっぽいなー、と思いましたがどのくらいの同意が得られるでしょう(苦笑)。大人の色気を目指すぜ!みたいな(?)。
 何か、地上波で無差別(?)に流されるアニメというよりは、ほしい人だけがわざわざ購入して見るOVAみたいだったなあ。まあこれは…サラリーマンが読む警察小説とか、あのノリだよねえ、このシリーズ自体…。

 …このところ、想像(妄想?)が微妙に暗い方に流れてまして…困ります。暗いのと「大人向け」(苦笑)とで、自乗で困る。
 好き嫌いはともかく、平気ではあるのですが(今の比較的万人向けになる前の「モーニング」読んでたし)、年齢制限の警告とかサイトに出したくないなあ…(微妙な境界線)。
 まあ、そのうち飽きるでしょう。うん。…とか言いつつ隔離部屋作ったときは笑ってやってください…。

2008 年 7 月 9 日 けれども、まあ、頑張りますよ…

 打ち込んでも打ち込んでも終わらないのは何故ですか…(字が詰まりすぎてどこを打ち込んでいるかすぐに見失うから)。
 それでもあと数枚ー。いや、それ全部打ち込み終わったところで、話は最後まで書けていないのですが(爆)。

 『21』…中学校の同級生が自殺した、という話(え)。
 途轍もなく仲の良かった中学校の同級生たち。その一人が自殺して、皆がその理由を思い出と共に思い返す、という趣向。ほろ苦い感じ。

 今日、夕立がありまして。
 布団干していたのですよね、で、まだ日は出てるけど仕舞うかなーと取り込みに庭に出て。敷布団を引き上げ、掛け布団を抱えたところでぽつりと雫が。
 いやあ、危機一髪。物凄いタイミングでした。うん、よくやった私!(偶然)

2008 年 7 月 10 日 だって、世界は止まってはくれないから

 書いた(書いている)話の、ある三本が全く同系の設定だと少し前に気付きました。そ、そこまで好きかその設定…!←自分のことだけど知らなかった
 えーとあれです。『台風の目』と『闇夜の晩』と『黒の世界(仮)』。…真ん中、今下げているし最後はサイトに上げてませんが。
 あ、「いつか命を奪う人と一緒にいる」というのでいくと『月を仰ぎて夜を渡る』もか。
 しかしまあ、じゃあ三本のうちの一本どれに絞るか、と言えば、前二本はとりあえず書き上げているから今は最後、になるのですよねー。書き終えるとなんとなくそれはそれでもういいような気がしてしまう。『台風の目』、はじめは最初の一編で終わりのつもりだったしなあ。
 非情な人が誰かとの関わりで絆される、というのが好きなのでしょう、多分。それでいくと『旅の行方は誰も知らない』も、同じだ…(苦笑)。←いやもっと落ち込むべきなのか?

 『ドラキュラ城の舞踏会』…ルーマニアで発見された古城に日本人女性の肖像画があった、という話。
 ううん…何か、中途半端。古城に吸血鬼がいて、そして一方の女性はテレビの企画で城に行って、しかも死んだはずの母親が語りかけてきたり、とか…面白そうな感じではあったのに、回収しきれず終わっている。続くの、これ…?
 何かのシリーズの途中の巻でも読んだのかな、私。←調べる気もない

 『<本の姫>は謳う』三巻
 う、うわーんっ、早く次の巻!!
 この人の話は、世界がきっちり組まれているから、読んでいて安心。物語の見せ方も上手いし。はじめに分量を決めているから、というのもあるだろうけど、後付設定もなさそうだし。
 
 そのうち、私にも「草原の只中に和菓子」(byあとり硅子)が、なんて夢想できる年ではさすがになくなってきてしまったのだけど、でもだからといって何か確固たるものがあるわけでもないのですよね。やっぱりまだ、未来を思うと不安だし。
 漠然と不安、というのは途轍もなく厄介なのだけど、それでもまあ、日々なんとかなってしまうのですよねー。そんな日々にも、一応愛着はあるし(苦笑)。

2008 年 7 月 12 日 だから、そういうものです

 友人と飲みに行って(といっても飲み放題ではないのであまり飲んではいない)、ぐだぐだ話して、明日はカラオケ行ってきますー!
 …なぜ私はこう、予定、詰まってるときは詰まってないときはないんだろう。

2008 年 7 月 13 日 結局、そうなる

 カラオケ行ってきましたー。六時間くらいまるっといた気がするけど、感覚としては結構短かったですよ。
 …でもあれだ、歌うより喋りでカロリー消費してんじゃないのかな(笑)。

 『ヴァン・ショーをあなたに』…あるフランス料理店(というかシェフ)が舞台のちょっとした不思議、の話。
 …これ、途中からその回限りの人の一人称になってるのはネタが尽きたの…?(それまではその店で働いている人が語り手だった)
 きちんとまとまっていて面白いのだけど、さらさらとしすぎてそのまま忘れてしまいそうな感じ…いや、それはそれでいいことですけど。

 そういえばカラオケで歌いたい曲があったのだけど、曲名忘れて歌手名忘れてこれの主題歌だった、ってのは覚えてたけどそれでの検索では引っかからず。
 最終的に、題名を朧に思い出してなんとか見つけましたよ!(執念)
 いやーもう、英語ってだから駄目なんだ。日本語だったらきっと、もっと早く思い出せていたよ!(映像で残っていたりするから…いや今回も、r が入ってた、ってのは覚えてましたが)

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 よくあると言えば、よくある光景だった。見るからにぐったりとした少女は、チンピラじみた青年二人に何やら威嚇されているようだった。
「わかってんのかテメエ!」
「…っるさい…っ、テ、出したのそっち。モンク、いう、なら、ガキにさかってんじゃない」
 途切れがちで却って素っ気無い言葉は本人が言う通りに、子どものものだった。青年たちは、それで余計にいきり立つ。よく見れば、一人は股間に手を当てて眉間に皺を寄せている。蹴られたのか。
 ふっと、少女の視線が辺りを彷徨った。目が合う。てっきり助けを求められるかと思ったら、何も見なかったかのようにそのまま逸らされた。
 少女が探したのは、気遣う目や警察だと、後で知った。必要としてではなく、ないことを確認するために。
「うる、さい」
 倒れ込むようにして少女は、正確に青年たちの急所を――男限定の急所を、叩き潰した。言葉にならない声を上げて、二人が泡を吹く。
 そして少女も、その近くに倒れた。
「…おいおいおい」
 期せずして目撃者になってしまった黒木は、呆然と呟いて、助ける奴はいないのかと見回して、誰もいないと知って溜息を落とした。
 俺の知ったことか、と思うが、後味の悪さは残る。
 青年二人は放って置いていいだろう。いくら日本が以前より物騒さが増したといっても、灯が落ちるには十分に時間のある飲み屋街で、倒れていたところで臓器を盗まれたり連れ去られたりすることはないだろう。ただ少女は、不埒な下心を持って近寄る奴や青年たちが意識を取り戻して何かしないとも限らない。
 溜息がこぼれた。
「おいガキ、意識あるか?」
 近付いて声をかけると、上手い具合に自分のものだろう大ぶりのカバンの上に倒れ込んだ少女は、目も開けずに、辛うじて口だけを動かした。
「すこし、やすめば…」
「そう見えねぇから言ってんだろが。っとに、家どこだ」
「…ない」
「はあ?」
 家出かと顔をしかめると、少女は、起き上がろうとでもしたのか、手をついた。体は持ち上がらない。
「あんな、とこ…」
「…おい?」
 くたりと完全に力を失った細い体を眺めて、黒木はもう一度、深々と溜息を落とした。今日は厄日だ。

 朝日の中で黒木は、人が倒れるような音で目を覚ました。
「…っだよ…?」
 寝不足の頭を抱えて重い眼を開ける。即座に、昨日背負い込んだ厄介者のことを思い出して明け渡した布団を見れば、誰もいない。
 さてはトイレにでも行こうとしてすっ転んだな、と起き上がる。あれだけの高熱では無理もない。
「なんだって俺がこんなこと」
 ぼやくが、放ってもおけない。おまけに、万が一ここで死なれたり入院騒ぎになれば、黒木は誘拐犯にでもされてしまう。
「おーい、無事か?」
「…こないで」
「はあ?」
「きがえてる、から」
「あのなあ。ガキの裸見てさかるほど飢えてねぇ。それよりもお前、頭打ったりしてねぇだろうな」
 昨日よりましになったとはいえ、喋るのさえだるそうだというのに、着替えてどこに行くつもりか。それ以前に、昨夜、あまりの汗のかきようを見かねて、黒木が服を着替えさせていることには気付いていないのか。
 返事はなく、風呂場から聞こえた声に、問答無用で戸を開けようかと思ったところで、向こうから開いた。
 そこに立つのは、白いワンピース風の制服を身に着け、長い黒髪を束ねた少女だった。心なし、顔が赤いのは熱のせいだろう。
「…学校、行くつもりか」
「むだんけっせき、うるさいから。たすけてくれてありがとう。おれいは、ごじつ」
「いーやいやいやいや、待て。行っても悪化する、ってかたどり着けるかどうか怪しいだろ。白百合台まで、バス乗っても四十分くらいかかるぞ」
 お嬢様学校で有名な白百合台高校の生徒だというのは、荷物に制服があったから驚くことではないが、そのお嬢様が何故、夜の盛り場にいたのかという疑問は残る。
 少女は、警戒するように黒木を睨みつけた。熱のせいだろうが、目が潤んでいる。
「あなたにはかんけいない」
「このまま行き倒れられたら、わざわざ寝床譲った意味がないだろ。休め、連絡入れてやる。兄はいるか? いやその前に家か」
「…がっこうさえいってれば、あのひとたちはきにしない。だから、いかないとだめなの」
「……連絡入れてやるって言ってるだろ。兄がいないなら、父親は?」
「なにかあったら、でんわするのはおばさん」
 素っ気無い喋りは、熱のせいか元々の性格か。とにかく、複雑な事情がありそうで少女が強情なのは判った。
 溜息を落とすと黒木は、携帯電話を取り出して、仕事場の受付嬢の個人番号を鳴らした。
「あー、早苗さん? 朝早く申し訳ない、わけありで、白百合台1−Bの楽螺夕凪、熱で休みって連絡入れてもらえます? ――わかってます、ケーキ二人分、買って行きます。旦那はあられね。――じゃ、お願いしますね」
 通話を終えると、立っているだけでふらついている少女を見下ろし、黒木は頭を掻いた。
「ってことだ。休め」

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 ふとした思い付きで、少し前に題名だけ挙げていた「黒の世界(仮)」を、舞台を現実にして魔術とか異世界とかがない話にしたらどんなのかな、と思って書いてみました。…別物だ(爆)。
 いやまーそりゃそうか、世界が変われば生い立ちも変わるものなあ、性格だって多少変化するし。
 ちなみに黒木は高校生(とたまに中学生)担当の塾講師で、夕凪は黒木の家に入り浸りになるようになるという。
 …しかし、楽しいのは私だけです(いつも)。
 

2008 年 7 月 14 日 だから…それは敢えて掘らなきゃならない墓穴なんだ

 えー…カレンダーを見誤っていて(?)、明日、休みの予定が出勤に。…今月、一日有給入れてたから代休もなしなんだぜ…ちぃっ、ばっくれてりゃ良かったのか!←
 いやしかし私、ほんっと抜けてるなー。むう。

 そんなわけで、「マジックアワー」が観に行けるかどうかが怪しい…観念して、割引のない日に行くか諦めるか仕事終わってから行くか。…面倒になって公開が終わるに一票…(没)。
 うううー、時間取りにくくって厭だなあ。

2008 年 7 月 16 日 …あれ?

 そっか昨日ここ書いてなかったのかー。←今気付いた
 PC開いてた記憶はあるのですが。…ああそうだ、ひたすらに打ち込みやってたんだ。

 『警視庁特捜科ドットジェイピー』…警視庁がイメージ戦略で戦隊者を始めたよ、という話。
 うーん…楽しんでそうだなあ、という。ノリはいいけど、突っ走りすぎて(?)私はちょっと苦手…。

 次の日曜に友人と京都に行くのですが、その日から青春十八切符が使えるようで、それで行こうかと。
 ただ、一緒に行く友人は通常の切符を購入するらしいから、さて四回分、どう使おうかと(苦笑)。父が仕事で使うかもしれないのくらいしか、今はあてがない。
 まあ、どこか遊びに行く予定が立たなければ、ふらりと沿線沿いの古本屋めぐりして来てもいいし(え)、京都や岡山にほてほてと遊びに行ってもいいかもしれないですね。一月二月は余裕あるし。奈良とか和歌山もいいなー。

2008 年 7 月 17 日 だからって…

 台風が近付いているそうで。…蒸し暑い。暑すぎる。
 昼間に、息するのすら苦しいってどうなのー!
 あれです。仕事してるときはクーラーがきいてるけど、休みの日は…うち、クーラーあるけど部屋と部屋がほとんど区切られてないからつけてもあまり意味ないんよ…。そもそも、クーラー嫌いです。扇風機や氷(え)はいいけど。

 『歴史探偵若月宏治おぼえがき』…歴史ものを書くフリーライターが過去を覗き込む話。
 長岡京と、没落した平家との話。雑誌の企画で歴史探偵、と銘打たれたフリーライターが、原稿をまとめるために取材に行って不可解な「もの」から過去の話を聞く、という話。二本収録だけれど、一本目の方がまだ好きだなあ。
 歴史もの、ということでいいのかな。新解釈めいた謎を断言せずに提示しているのは、まあ定型。

 明日はようやく(笑)、お休みです。図書館行って来るー。本屋も。…まあ、いつもの通りです。

2008 年 7 月 18 日 だからって、どうなるものでも

 「夏休みいいなー」と、今日何度呟いたことか(苦笑)。
 近辺の学校、今日から夏休みなのですよね。羨ましい。そして、平日の休みでも子どもがうろうろしていると…鬱陶しいなあ…(ぼそり)。

 『PARTNER』二、三…ニューヨーク市警殺人課の男女のコンビの話。
 男女の友情は成立するか、というのがそもそもの話の基本だそうで。んー、どうなのですかねー。私、男友達悲しいくらいいないからな…中学で色々転んだ(?)から…ていうか、制服がさ!
 閑話休題。
 殺人課の日常、つまりは殺人事件の調査をしながら、突っ込んで気まずくなって引いたり、というやり合いをしている二人。女性の方には、長く付き合っている恋人がいるから、早く結婚してくれ、といったり。
 最後、どう締めるのかなー、というのが気になるところ。全十巻で、この間最終間が出たのですが。そしてそれが一挙に押し寄せそうな感じ(図書館の予約の都合)。

 『ギフト』…幽霊が見える少年と、元警官の出会い。
 お互いに、出会えて良かったね、と言いたくなる。本当にさ、もう…。短編集の体裁ですが、「いい話」だけじゃないのが唸り所。そして弱いのだよね、二人とも。弱いのに強くって。
 映画の『シックス・センス』が小道具に使われています。他にも、映画が何本か取り上げられていて(これは本筋には関係なく)、何か楽しい。
 うん、この話好きです。続編ないのかな…でもここで終わった方が綺麗なのかも。

 しかし今日は(も)暑かった…。
 四半日ほど連続でPCを使っていたのだけど、かなり熱くなって、壊れやしないかとびくびく。…ご、ごめんよ精密機械…!
 夕方になって、うとうととしていたけど汗が凄かったです…夕方なのに…(没)。

 …あのですね。独り言が増えてしまった(ずっと実家暮らしなのに!)のはもう措いて。
 ………ちょっと驚いたときに「わー」じゃなくて「わーお」ってどこの国の人だよ私…。最近、そう呟いてることに気付いて本気で自己ツッコミしました。や、ほんと、なんで?

 そう言えば、うっかり見つけて気になってしまった一分半劇場…DVD予約(八月発売だった)しちゃったよEさん!(笑)
 私信でした(苦笑)。

2008 年 7 月 19 日  だからどうしてそうなる

 時計を見失いました。
 この頃暑くて、腕時計は会社の机に放置、持ち帰りは鞄の中、という状態だったのですが、出した記憶がある気がするのにどこにもない! というので、あっれー?と探し回り、まさか落ちてないよなと机の隙間や引き出しを捜し、同僚に訊いて…。
 訊きながら、前科(傘がない!と探し回ったら実は自転車に引っ掛けたままだった)があるものだから、もしかして家ですかねー出したつもりなだけで、と仕事を続けていたら。
 ロッカールームに落し物が、と差し出された時計(爆)。
 うん、まあ、これも前科に…。

 『1/2』という漫画が終わってしまった、と残念がっていたら、同じ舞台での漫画は続いているのだとか。そ、それもちゃんと単行本になるよね?
 この人の漫画好き。絵が好きなのもあるけど、何だろう、うーん…好きなのです(え)。

 明日は京都行きー、でも行き先は友人に丸投げ、という状態(爆)。
 しかも明日、気温凄いらしいですね…あそこ盆地だしね…帽子とペットボトルは必須でしょうか、やはり。そして(長)ジーンズは無謀でしょうか。←誰に訊いている
 とりあえず、会社行くより早起きです。電車で遊びに出るときって大体そうだなー。

 会社と言えば。
 再来週、六連勤だー。…や、まあ、家いるよりゃ涼しいですけどね…あー、面倒。休みを割り振るとそうなってしまった。有給をねじ込む余地はなさそうだったし。
 しかし、免許更新のための講習を受けに行くのが八月末になってしまって冷や冷や…。珍しくそれまでの三週が他の人で埋まってしまっていて、間に合うことは間に合うので交代もお願いしませんでしたが…うっかり行けなかったら免許が…!(汗)
 …でもあれだ。講習を受けられるのは月曜日なのに、免許の期限が違う曜日って…意味ない、意味ないよおまわりさん…!

2008 年 7 月 20 日 まさか、そんなことになるとは

ある意味唯一の自分への土産(苦笑) えーっと、京都に行って来まして。
 何をどうしてだか(苦笑)、新撰組の隊服着て八木邸と壬生寺行って来ました…(笑)。
 いやー…あっ…つかった…(没)。生地がナイロン系で補強の為に一部ゴム(?)コーティングでして。でもまあ、袴はスカート状だったので逆に涼しかったですけども。
 一緒に写真とってください、と言う人もちらほら。むしろそっちのが勇気あるかもしれない。というか、隊服着てますが、見知らぬ人を写真に収めてどうする(苦笑)。
 人の目自体は、実のところ私は、見えてない(裸眼の視力はコンマ以下)し感じられない(視線を感じたことなど今だ嘗てない)ので、気付かないのですよねー。良いのか悪いのか知らんが。

 で、レンタル衣装を返してお昼食べて、金閣寺。
 え…あんなに安っぽく金ぴか? 燻し銀じゃないけど、もうちょっとこう、曇りのある金じゃないの…?

 そうしてバスで移動して、清水寺。
 時間外で、胎内巡りはできず。…めっちゃ入りたかったのですが! そのためだけにも今度行こうかとちょっと思ったり。(暗いところ好き)
 しかし景色よかったのですが…あの、あそこ本当に、飛び降りでの死者いないの?(下の木がクッションになって案外無事に済んだらしい)

 更に移動して、都路里に。京都行くなら!と、何年か前(爆)の京都行きの計画を立てていた時に、偶然出会った京都の大学に行っていた友人に勧められたお店。
 店からはみ出してまで並んでいて、しかも待っている間にお絞りやうちわまで渡してくれて、吃驚。
 そして、おいしかったです。抹茶苦手なのだけど、お茶屋の甘味処なら、とたのんだら当たりでした(というかそもそも年を経て苦味平気になってる気がする)。…カキ氷をたのんだら思っていたより多くて、寒くなって完食はできませんでしたが…(没)。

 店を出てから、夕飯(苦笑)。
 でもお腹そこそこ膨らんでいるしねーと言いつつ、一銭洋食というところが雑誌に載っていて、近いから、と行ってみたら。昭和の空気と屋台の空気の漂うお店でした。
 食品メニューは、お好み焼きのような…名前忘れたけど、それ一品のみ。ちょっと味が濃かったけど、おいしかったです。

 とりあえず、新撰組ネタで何か見つけたら、今日一緒に行った友人に振ればいいと判りました(笑)。
 今まで、あまり回りに新撰組に興味のある人が居なくて。大学のときは、多分捜せばいたのだけど(ゼミの子も好きだったらしいし)。…いやその前に、一緒に行動していた友人が好きだったなそう言えば。それなのにどうして一緒に京都行こう、とかいう話にならなかったんだろ…?
 安倍晴明は未だいないなー、振れる人が(笑)。

 それにしても、喋り倒して来た。
 まあそれが目的だったのですよね、ひとつには。それぞれの誕生祝に(?)会おうぜー、と言っていて、どこかで駄弁るかちょっと外に足伸ばしつつ喋る?と振ったら喰いついてくれて(笑)。…誕生祝、ってのはまあ、きっかけですけどねー。何か理由つけないと案外会わないものです。
 …内容が妙にオタクじみていたのはこの際目をつぶっておこう…(苦笑)。
 そう言えば、話していてはっきりしたのだけど、私、「ジャンプ傾向の強い」漫画、好きじゃないんだ。さらっと読む分にはいいけど、時間を置いて読み返すと腹が立ってくる。えーまあ、傾向っても色々ありますが、あれだ。死んでるはずなのに死んでない。しかもそれを何度も繰り返す。
 話の流れ上、死を避けられないというのはあるはずなのに、あっさり「無事でした」と済ませてしまうのってどうよ。一度二度ならともかく、何度もって。生かしたいなら、そう持っていかないようにもできるはずなのに。緊迫感を持たせるだけに流れをそう持って行って、終わってから大丈夫でした、って、どうなの。
 キャラクターものですね。悪い意味で。ギャグやコメディーならそれでもいいけど。
 ちなみに、私が購入して未だ手元に置いている漫画は、富樫さんのもの(『幽々白書』以降)と『封神演戯』と『MIND ASSASSIN』くらい。そもそも、あまり読んでないからなあ(借り物以外)。『BLEACH』は、途中まで借りていて今微妙な集め方をしているのだけど、これも途中から典型で…どうしようか悩み中。
 サンデー系の方が多いです、持ってるの。こっちはこっちで、長くなるものが多くて、話がたるんでたりするのだけど…(苦笑)。

 …気付くと、語り入るよなあ…(没)。

2008 年 7 月 21 日 いっそ、自分で感心

 暑くって暑くって、何もやってなくっても暑いよ誰かどうにかして!と思った一日でした。
 夜になったら、ましになる分だけいいほうなのかな…空調効かせなくても眠れるくらいには(え)。いやまー自室のクーラーなんて、年単位で使ってない(去年ぶりとかでなく)ので、果たして動くのかどうか、動いたところで空気は冷やされるのか、謎なところですが。そして一階だから、窓開けないようにしてるけど、今夏、それでもつかちょっと不安。いや、開け放していても窓からすぐベッドなので、誰か入ってきたら気付くと思うけど、いくらなんでも。…って、逆に危ない?
 しかし、その暑い中、気温が最高潮になる時間帯に眠ってて…目が覚めたら汗が。びっくりした。

 …ところで今、もしかするとあまり体調が良くないのかもしれない。
 たまーになるのだけど、テレビが駄目。電波が駄目なのか、映像が駄目なのか…でもPCもちょっとあれってことは、やはり電波? いやでも小説もちょっときついし…やはり視覚の問題??
 そう言いつつ、気になるので今からニュース見るつもりなのですが。特に気になる事件があったわけでは…そう言えば、女子中学生がテントを押していた熊を蹴って撃退、のニュースに、「郁?!」(by『図書館戦争』)と、朝一で反応。知らなかったからこその反応(妹の悪戯と思ったとか)ではあるけど、双方、被害がなくて良かった。ネタになるしね!(どんな)
 脱線断線。
 えーと…話を本筋に戻そうにも、本筋って一体(今更)。
 しかし、私からPCとテレビと本を取り上げたらやることがない。あ、何か手書きしてればいいのか…書きかけのやつどこやったっけ…?
 就職してというもの、空き時間はほとんどが上の三者に費やされているため、多分私、読書量大学のときより増えてますよー。あの頃は、何だかんだ言ってもバイトと友人と喋ったりするのに時間費やしてたし。あと、講義の予復習やら課題。
 はー…明日仕事行くの面倒だなー…(まさかの結論)。

2008 年 7 月 22 日 だからって…

 …やっぱ職場のが涼しい。いやでも家のが好きですが!

 二連休取ったら仕事が溜まってました。仕事というか、片付けと整理がほとんど。…それでもかなり時間を取られるー。
 というか今日は、無駄に残業だったんですよー。委員会とかもう本当、いいし。いや別にさー、残業した分お金もらえるから私はいいですけどね? 何か間違ってるような気がしてしまうのですよねー。

 『PARTNER』四・五・六…ニューヨーク市警殺人課の男女の刑事の話。
 一気に読んでいるせいか、何かな…本筋だけ追っているような感じになってしまっています(汗)。起きる「事件」が、推理ものというよりも社会派ものっぽいから、というのもあるのかな…理解を一部放棄してしまうところがあるから(私の場合)。
 それにしても、セシルはある意味、良い男過ぎないか?(苦笑)

 『天上の羊 砂糖菓子の迷子』…突然の姉の死の真相を探ってください、という依頼と天狗の噂。
 …前作よりは好き、かな…。でもやはり、何と言うか…悪い意味でシリーズもの、という感じがするというか…。この人、どんどん文章が思わせぶりで「わかる人だけわかって」という文体になってない…?
 とりあえず、高遠さん…!というそれだけが(苦笑)。

 『林檎と蛇のゲーム』…父親の出張で見知らぬ女性との共同生活、そして逃走。
 さくっと読みやすくてさわやかでそこそこ軽快。
 …とてもどうでもいいことだけど、作者、別名義でジュニア小説家として活躍、とあったけど…谷原秋桜子、ではない、よね…? 物語の感じが似ていて連想してしまったのだけど。あと、筆名が似通ってるところとか。

 そう言えばこの頃、途中放棄する本が増えています。…地味に危機感…(没)。
 面白くなさそうと思っても、とりあえずは読み通す、が身上だったのに。あ、誤字ではなく(苦笑)。よほど読めない文体か、表現がエロかグロに露骨過ぎて駄目とか、そういうのでない限りは、と思っていたのに。だから、途中放棄は年に数冊あるかどうか、というくらいだったのになあ。この頃、月に何冊かありそうな感じ。
 うーん、堪え性がなくなっているのか、それほど本が読めなくなってしまっているのか…。
 本読まなくなったら何していいのかわからないよ私! 世間の人が余暇に何してるのか結構本気で不思議なんだ。

2008 年 7 月 23 日  だから、もうどうでもいいよ。

 …だるいから片付けなきゃなことだけとっとと片付けて帰ろう、と思ったら、予想外のことがぽこぽこと起きた日でした。
 もう知らーん、わけわからんー、と呟いておりました…。

 『PARTNER』F
 「転」の巻、という感じ。私生活に波風立って、まあ。フェイが好きだから、パートナーの二人は是非「友人」でいて欲しい(苦笑)。

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「だからって殺されるわけじゃないし」
 へらりと笑って見せると、渋い顔をされた。それは、物騒な言葉を使ったからというわけではないだろう。
 加藤俊哉。制服姿のままのんびりとハンバーガーやポテトを食べているが、実は、殺人稼業をこなしていたりする。
 通りの窓ガラスに面したカウンター席で俊哉の隣に座る諒一も、多分同業者だ。多分、というのは、俊哉が必要なものを受け取ったり依頼を受けたりといった補佐をしてもらったことしかないためだ。
 やり手の若手経営者じみた諒一は、こちらもハンバーガーを齧りながら顔をしかめた。
「そんな成績で、どんな大学に行けるっていうんだ」
「大学?」
「行かないつもりか? 要望としては、いくつか上がってるんだが」
 そう言って挙げた名は俊哉ですら聞いたことのある有名大学ばかりで、高校を隠れ蓑としてしか使っていない俊哉の偏差値では、間違ってもひっかからない。
 今度は逆に俊哉が顔をしかめると、諒一は、冷たく見える笑みを返した。
「高校生の肩書きより自由が利くぞ、大学生は。難関ともなれば、結構な身分保障にもなる」
 俊哉の眉間の皺が取れないのに気付いてか、くくっと、押し殺すようにして笑い声をもらす。
「そう言う諒一さんは、さぞかし立派なところを出たんだろうね」
「まあな」
 余裕たっぷりに切り返され、むっつりとジンジャーエールをすする。食べ尽くしてしまった。
 もっと買って来ようかと迷っていると、まだ半分以上が残るポテトが差し出された。遠慮なく、受け取ることにする。
「大体、要望って何。俺がどこの誰でいようと、やることさえやったら関係ないだろ。学費出してくれるとでも?」
「そのくらいは稼いでるだろ」
「自腹なら余計、学費払えば入れてくれるところでいいって」
 ふうん、と、諒一は鼻で笑った。そういった仕草が似合うのだから、見ていて厭になる。そういえば、噂は本当だろうか。
「さっき挙げたうちのどれかに通うなら、公立との差額分くらいは出してくれるらしいが?」
「…いや、今更無理。勉強なんか無理」
「見てやろうか? 勿論有料だが」
「諒一さん、本業教師のバイトでホストのときにスカウトされたって本当?」
 おや、と言いたげに諒一の眉が動いた。事実であれば、さぞかし稼いだだろうと思う。しかし、教師は似合わない。
「半分当たりで半分はずれだな。本業は塾講師で、今も、そこの塾からの斡旋を受けて家庭教師業を満喫中だ」
「塾講師とホストって活動時間被ってない?」
「さてな。どうする? 見てほしいなら、一人分くらい時間調整してやるぞ」
 俊哉は、ふいと視線を逸らした。窓ガラスには、俊哉と似たような制服の少年少女が、それぞれの話に盛り上がっている。そこに混じるスーツ姿は、営業マンの休憩だろうか。
 そんな、ありふれた和やかな人たち。俊哉と諒一の会話にしても、何も知らなければ、ただの進路相談に聞こえるだろう。
 のどかすぎて平和すぎて――眩暈がしそうだ。
「いいけどそれ、うちでやるの?」
「まさか。毒蛇の巣に潜り込むほど、俺は自殺願望なんぞ持ってないぞ。ファミレスか図書館の自習室でも借りればいいだろう」
 込み上げていた殺意が、不意と凪ぐ。それができるからこそ、諒一は俊哉の補佐をやってのける。
「そのわりによく、平気で一緒にご飯食べたりできるね」
「人目のあるところではとりあえず保身が働くくらいには打算があるだろ、お前は」
 彼は、俊哉が無感情に無感動に人を殺めることを、その対象に己も入っていることを、知っている。知っていることを、隠そうともせずにむしろ、見せ付ける。
 そのことが、俊哉を落ち着かせる。まるでそれは、鏡を見せられたメデューサのように。
「じゃあ、頼もうかな。センセイ?」
「わざわざ呼び方変えなくていいぞ。そうと決まったら、今までのテストとノート、一通り見せるように。よろしくな、新米生徒」
 にっと、二人の人殺しは笑った。

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 えーと、かなり前に書いた殺人屋の少年。
 殺伐と甘い(色恋側にでなく)を書きたいなーと引っ張り出してきたら…さ、殺伐としない…(没)。


 …本当、地震大国ですね…。

2008 年 7 月 24 日  いやはや…。

 発注に振り回され、製造課長と「そんなの知らんって言いたいなー」「言いたいですねー」などと話していた日でした。
 …いやもうほんと…立て続けだっただけにきつい。というか面倒。
 そしてお盆に、もう一日休みねじ込めないかなーと思ったけど無理でした。…いや、出勤するのはいいのだけど(きっと家より涼しい)、やることがなさそうで困るんだ(汗)。溜まるときは溜まるってのにさー。なるべく、お盆目掛けて仕事を溜め込んでおこうと思います(それもどうなの)。

 先日の京都日帰りで、友人がバスの中からちらっと見た「百鬼夜行」の字の含まれるポスターの正体が判りました!(笑)
 これ、本当に一瞬友人が見かけて、好きそうなのがあったよと教えてくれたのだけど、そこ以外で見かけず一体何だったんだ、どこで何をやってるんだ、と言っていたのですが。今朝の新聞折込チラシで発見。よくやったJR!(JRの広告だった)
 いやあ、為せば成る。っていうか何もしてない。
 とりあえず、友人たちに声かけてみて、誰も興味なかったらふらっと出かけてきます。多分(…一人だと面倒になってしまって…)。まあ誘う前に、その近辺に他に見所何があるか調べよう〜。

 明日も暑くなるそうで。いっそ、午後から図書館に篭ってこようかとか…ああ、でも人多そうだなー。高校生と大学生とその他。
 …私、図書館で勉強とか涼みに、といったことをした覚えがないのですよね、ほとんど。あ、大学の図書館は別ですが。さすがに数回程度、調べ物するために友人と本を抱えて机に陣取ったりしたことはあるけど。
 私にとって図書館って、とにかく、本がたくさんあって好きな本を手に取って家に持って帰れる場所、だったですよね。基本、借りて返す、返して借りる。
 だから結構、大学の司書課程で児童書担当されていた方の話で、気になる子がいたというのや、小説の中である程度の年齢まで図書館は涼むことろだった、と書かれていたのを見てびっくりしました。
 だって多分私、職員さんの記憶に残るほど居座らないし(そもそも幼い時分は市立図書館に行く、というのはあまりないことだったなそう言えば。中学生くらいから通いだした)、冷房あまり好きじゃなかったし(そういう問題?)。未だ、居座ってのんべんだらり、というのはないなー。家の方が寛げる。

 今、全く関係ないところで…個人ブログのこの間のコードギアスの感想のところで(本当に関係ない)、世界の夢を見る蛤の話が出ていまして。そうだそれ調べたかったんだ、と思い出したのだけど、ネットは膨大すぎて逆に調べにくいことだけが判明。いや、キーワード絞れば絞れるのだけど、面倒になったので手持ちの本で調べようか。載っているかなー。
 しかしそうだよ、それだよ。
 中国の伝説だの伝承だの小話だの、面白いの多いのですよ…! 『太平廣記』の龍の項目の自己訳も止まっているけど。というか『太平廣記』を丸っと放置してしまっているのだけれど。
 ああ…それなのにどうして、現代小説ばかり読んで時間を潰していっているのかな私。それも好きですけど。うーむ。 

2008 年 7 月 25 日 もしかすると

 日中、我が家で一番涼しいかもしれない場所。風呂場。
 …残り湯(と言ってもさすがに水並みの温度になっている)に足を浸して本を読んで。しっかり光も入る(直射日光は少ない)ので、本を読むにも向いていて。湯船の縁に腰掛けて、ってのが少しだけ疲れるけど快適。
 ところで夏は、ノースリーブに惹かれすぎて困る。あまり似合わないのですが…多分。しかも、家の中や外にいるときはいいけど、建物内に入ることもあるときに困る。上着必須。

 『神様の愛したマジシャン』…少年がプロのマジシャンを目指すまで。
 プロマジシャンの父を持つ息子の、主に、大学の手品同好会での出来事の回想。特別に何かがあるわけではなくて淡々としていて、説明だって多いのに、とっても読みやすいし面白い。
 手品師や手品に関わる人にも、というか人って、色々いるなあ…と思ったり(あれそこ眼目?)。面白かった。

 歯医者、行ってきました。
 …いやもうほんと、歯医者怖すぎる。酷い目にあったことはないはずなのに、虫歯だらけだった子ども時代があるせいか怖すぎる。さすがにもう、逃走するとかないですけどね!←一度姉と一緒に
 でもこのまま放置したって、と、電話予約入れて行った(家から自転車五分)のだけど。…様子見るしかないねー、と言われて、歯垢取りだけで終わりましたよ…。
 生えたのが横向きすぎて、抜くには切開しないといけないのだけど、どうにも歯の根元付近に太い神経と血管があるようで、簡単にはいかないとのことで。…えっとでもそれ、虫歯になったりしたらもっと恐ろしいことになるということでは?(青) で、でも切開も厭だーっ!!(泣)
 う、ううう…もう一軒くらい行って話を聞いてみるべきか言われたとおりに様子を見るか…でも歯医者行くのって気力振り絞らないとできないんだよっ。
 医者にはそこまで苦手意識はないのですが(と言っても小児科以外はろくに行ったことがないのだけど。風邪引いても寝て食べて治すし)。歯医者は…やはり、あの音のせいでしょうか。

 何かうっかり、緑川ゆきの漫画を読み返しています。…ドリィ…っ!
 ほんわかするのに切ない話が多くて困ります。
 そして今日行った本屋の何故だか子供用の遊びコーナー(?)付近で、『夏目友人帳』のアニメのCMがエンドレスで流れていてちょっとびびった。あの、ちっちゃい子はそんな深夜にやってる番組見れないと思うよ…?(ちなみに私は京都案内の本でいいのがないかと探していたのだけど)

2008 年 7 月 27 日 

 友人と、歴史博物館の『夏・甲子園』展を観に行ってきました。今日まで。
 甲子園(夏の高校野球)に関した色々を集めた展示。私は詳しくはないのだけど、結構楽しかったです。投球フォームが違うとか、坂東さんの記録ってこれか!とか。映像展示が多かったのも印象的でした。
 そして、体験コーナー(?)に、高校を先導するプラカードと、実際に使われているベースや椅子が置かれていたり。で、一緒に行った友人二人がプラカード持っていたら、係りの人が帽子も貸してくれた…写真まで撮った…(笑)。←何故か私まで
 最後にひっそりと、おまけのようにあったポスター展示が良かったなあ。あれ、キャッチコピーも公募なのですよね、確か。友人たちは美術部だったので、出品もしたそうな。

 その後、お茶してふらふらと靴やらベルトやらカバンやら見てました(主に友人が)。
 お茶…うっかり、札が一枚もないのにお金を入れて行くのを忘れ、店に入ってから気付いたという(馬鹿)。慌てて、友人に借りて店出てすぐ返しました!(汗) 便利だねATM!(爆)
 帰りに回すと閉まってるかもしれない、と先に寄った図書館で借りた予約していた本が重かった(苦笑)。大学以来じゃないかなー、この重さでの持ち歩き。

 『釘男』…釘男がうろついている、という噂のあったところで殺人事件が起きて。
 都市伝説と無邪気な悪意と警察とマスコミ報道の無責任と、を詰め込んだような話。わざとだろうってのは判るのだけど…読んでて苛々した…。悪意とか身勝手さとか独り善がりとか、もう、いいよ…。
 いやもう読後感悪いし。文体が口語混ざってるのが気持ち悪いし(多分これはわざとじゃない)。
 とりあえず、私は苦手だなーこれ。さっさと忘れておくことにします。敢えて厭な言い方すれば、萩原浩の『噂』の劣化版のような。…あれも、読後感が厭な話だった…(没)。

 『図説古事記』…古事記のあらすじ総まとめの本。
 読んでいて意外に、上巻の内容(『古事記』は上・中・下の三巻)は知ってるのなー、と思いましたよ。大学でやったけど…でも、上巻分全部はやってない、はず…なのだけど。どこで読んだのか。
 うーんでも、あまりにあらすじで面白みはなかったな…。写真は綺麗だったけど。興味を持ってもらう入門書として、ということで作られたとあったのだけど…何も知らずにこれをはじめに読んだら、興味持つかな逆に…? いやまあ私の感覚があまり一般的でないというのは日々実感しているので不明ですが。

 …『ジパング』を単行本で購入中なのですが、二十巻のあたりで読むのが止まっています(苦笑)。父が読んでいるから、購入自体は継続しているのだけど。
 話がこんがらがってー。
 完結したら読もうと思っているのだけど、そのため、どこまで持っているのか忘れてしまったり。早く完結してくれないかなー。読めない(苦笑)。

2008 年 7 月 28 日 

 暑中見舞いを…さて今年はどうしようか。
 怪談ネタか爽やかかほのぼの、と思ったのですが…どれも中途半端に思い浮かばないー。小学生の誘拐(ほのぼの)を考えていたのだけど、オチがうやむやになってしまって放棄。うーむ。
 今、怪談・怪奇系統の短編を借り込んでいるので、そのあたりで何か触発されないかなーと思ったりしてますが…文体が良すぎて私には真似できない世界だ!!(汗) 近代と現代の境あたりの文体って物凄くいいですね。いつの間に味気ない文体が主流になったんだ。
 
 そう言えば、昨日、かばんが破れやしないかと中途半端な抱え方をしていたせいか…二の腕が筋肉痛(没)。
 そ、そんな部位が筋肉痛って…初めてではないかもしれないけど滅多にはなかったよ。

 昼過ぎから何度かあった夕立(?)に、わー雨久々ー雷すっげー、などと微妙にテンションが上がっていたのですが。…人が亡くなる事故とか…私がうっかりはしゃいだ天災は大事になる傾向があるのかもしれない(汗)。

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「俺、あんたのこと嫌いだから。ああ、別にだからって、俺のこと嫌いにならなくてもいいよ?」
「…、最ッ低…!」
 ばたばたと足音が去って、俊哉は面倒げに溜息を落とした。
 ああ、疲れる。
 言うつもりがなかったことをうっかりと口にしてしまったのは、それだけ彼女に苛ついたのか元々疲れていたからか。どちらにしても、ストレス解消にすらならず、むしろ、「目立たない高校生活」には支障が出るかもしれない。
 何か仕事でもないかと、俊哉は携帯電話を開いた。
 がこ、と、音がした。誰かが教室のドアに頭を打ち付けたような。
「…よう」
 いかにも気まずげに引き戸の向こうから顔を覗かせたのは、部活のユニフォームだろうジャージを着た男子生徒だった。聞かれていたらしい。
「その…忘れ物」
「部活、お疲れー」
 やる気なく言って立ち上がる。とりあえず帰ろうとすれ違い様に、呼び止められて、溜息を押し殺して振り返る。
 適度に気安く、適度に近寄りがたく。良くも悪くも目立たないのが俊哉の学校生活の基本だ。
「なあ。今の…ちょっと酷くないか」
「好き嫌いはどうしようもないものじゃない?」
「でも、もっと言い方とか」
「好きです、でも気持ちを伝えたいだけだからあなたが好きじゃなくてもいいです、って言うと微妙に良い話なのに、嫌いだと怒られるのはどうして?」
 どうにも面倒になってしまって、それでも半ば癖でさらっとあまり感情を込めずに言葉にする。クラスメイトらしい生徒は、ぽかんと、間抜けなかおをした。
 少し待ってみたが続きはなく、教室を後にした。校門を出て再度、携帯電話を開く。
「もしもーし、俺だけど。何か仕事、ある?」
 お菓子でもねだるように、俊哉は電波の向こうの相手に問いかけた。

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 冒頭の台詞と俊哉の疑問は、いつだったかから私に付きまとっていた懸案(?)でした(苦笑)。方向違うだけで同じこと言ってるのに、多分反応はえらく違うよなー、と。
 この頃ぼやっと俊哉の話を考えていたのだけど、まあ裏社会だの法律だの警察だのを突っ込んで調べるつもりはないので(特に一番目)、形にはなりません。というか、真面目に長い話書いたらまずハッピーエンドにはならないだろうしなあ。
 俊哉がこのまま壊れて終わるか、誰かを大切と思うようになるかは考えていないのだけど。思い直すきっかけがあるとしたら、友達か、標的の女性か標的の奥さんといったところかなあ。恋人、ではない気がする。女性なら初老のイメージ。
 諒一は、やるとしたら、下っ端(?)のふりして実は頭とかそんな。面白そうなのがいるってのでちょっかい出してるうちにいつの間にか保護者代わり、という。でも、切るとなったらばっさり切るだろうから、最大の敵になって。
 やー、殺伐ものは、書いていると落ち着きます(どんな)。読むのは向いてないのですが。…「嘘つきみーくん〜」シリーズの読み時を間違えて滅入ったりするくらいには。やはりそこは、発散の場ということなのですかねー。
 ちなみに冒頭のクラスメイト(女子)とのやり取りの前段は、告白ではなく委員会だとか日常生活だとかで注意されたか難癖をつけられたからかと。←決めてない

2008 年 7 月 29 日 あのさ、予想はできただろ?

 眠いとこにアルコール入れると本当、このまま眠れるー…(没)。
 たかだか梅酒一杯なのですが。ううう、だからお酒強くはないというのですよ…強い方が嬉しいのだけど。眠い。とにかく眠い。今日は早く寝よう。←いつも言ってる

 日記(数割方読書日記)を読みにほぼ日参しているサイトがあるのですが、そこの管理人さん、本当に面白い本をたくさん読んでらして。
 つられて本を探す→ベストセラーとか新刊よりも古参の本が多いためにすぐに借りられる→返す間もなく本が溜まる、という図式が成立しています(汗)。読むの早くないのに…本気で速読を習得したい。でも出来る気がしない(爆)。
 読書ペースを上げねば…。

 …眠いです…。

2008 年 7 月 30 日 

 やることがいっぱいあるのは喜ぶべきか面倒がればいいのか…(会社の仕事の話)。金曜は残業できないので、明日で何とか片付けたいものです、月末決算。

 『幽談』…奇妙な短編集。
 怪談、ではないです。んー、いや広い意味ではそうなるのかもしれないけど…厭な気持ちにはなるけど、怖くはないなあ…私の感性の問題かもしれないけど。どちらかというと、「精神を病んでいそう」で怖い話。
 「下の人」はちょっと好きでしたが。
 文体は良いのだけどなー。うーん、あまり好きじゃないな、全体的に。改行が多いせいかもしれないけどね!(苦笑)…今読んでいる短編、ほとんどがみっしりなものだから。改行が驚くほど少ない。

 さっき、橋から河に飛び込む、という話を聞いて思い出した。
 私、泳げないのですよね。クロールなんて、息継ぎしたら沈む。
 泳げた時期もあったのだけど…一度きり。小六の学校水泳で何故か泳げて、喜んでいたら翌年、手術して水泳には縁なく一年過ごして翌年、泳ぎ方を忘れていたという(爆)。今では、あの「泳げた」瞬間は何かの間違いじゃなかったかと思います(苦笑)。まあそれも、クロールではなく平泳ぎだったのだけど。
 そんなわけで、泳げません。息継ぎなしで二十五メートルなら泳げるけど!(爆)←小学校での訓練の賜物。違う方向に強化されている。
 浮き輪で流されるのは好きなのですけどねー。流れるプールとか。ああ、でもプールなんて、もう何年行ってないんだ。行かなくて良いけど。

2008 年 7 月 31 日 ですから、ここは思い切って(自棄との説も)

 友人に渡そうと、「土方歳三最後の一日」をコピーしています。その傍ら、流し見。
 …いやだってうっかりがっつり見てしまうと、母とか父とかが近くにいるのに泣きそうで厭なんだ…! 
 それでも、冒頭の土方さんが山南さんを語るところでちょっと泣きそうになった。これは飽くまで作り物だけど、私もそうであってほしいからさぁ…。

 えーと、ここも明日で新頁に移るしやってしまえーということで、四月に一日だけ載せていた話の一章をば。
 これは別に、やばい(苦笑)表現とかない、はず…えっと、人が燃えるのって大丈夫…? いや私のことだからリアルな描写なんてもちろんないですし。
 ついでに余談ながらこの話、全六話予定。一章ごとに、視点人物が変わります。…そして、その六章を書き終えたところで、実は「始まりが終わった」だけではないか、という話…。
 もひとつ蛇足に、かなりわかりやすく『ムシウタ』に触発されて書いた話でもあります(苦笑)。あれほど「Cool」でないのが来条の来条たる由縁(何)だと思います。
 ちなみに、まだちゃんと見直しをしていない(つまりはほぼ書きっぱなしの状態)なので、おかしいところがあるやも…発見次第、ご指摘いただけると喜びます(爆)。

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 朝、奈良山飛鳥は悲鳴で起こされた。
 飛鳥にとって予定の入っていない夏休み初日は惰眠をむさぼるに決まっていて、どうせ両親もいないのだから、暑さに叩き起こされるまで布団にしがみついているつもりだった。
 それを打ち破ったのは甲高い必死の声で、はじめはそれが何なのかすら判らなかった。ホラー映画を大音量で流しているのかと思い、頭から布団を被って一、二分。それが家の中、どうも階下から聞こえると気付くまでに更に一分前後。妹の声と疑うまでに数十秒かかり、何事かと階段を下りるまでに合計で数分がかかったというのに、悲鳴は途切れながらも続いていた。
 京(みやこ)は、日本人形の如くに伸ばした真っ直ぐな黒髪の似合う、小柄な少女だ。中学二年生で、外面はいいが身内、とりわけ飛鳥には容赦のない妹でもある。しかし基本的には物静かで、天敵のゴキブリを発見したときにも一声上げて逃げ出すくらいで、ハリウッド映画張りの悲鳴は、飛鳥が知る限り聞いた覚えがない。
 ただ事ではないと、さすがに眠気も吹き飛んで駆け下りた飛鳥はそこで、見えない何かから一身に逃れようとする少女の姿を発見した。作りかけていた朝食らしい卵が飛び散り、フライパンもひっくり返っている。ガスコンロの火もついたままで、消さないと、と思ったことも覚えている。
「京…?」
 伸ばした手が少女の肩に触れた瞬間に、殴られたような衝撃があった。
 ひとつが、視界が赤く染まり、己の体が、逃れようなく炎に包まれ、焼かれている感覚。もうひとつが、あまりにくっきりと澄み渡った思考の中に浮かぶ、言葉――言葉と呼べばいいのか、あるいは情報の塊とでも言えばいいのか。とにかく、天啓めいた、確固たる厳然たる事実。
 後者のおかげで、飛鳥は炎を押しのけられた。それは、鮮明な熱と痛みが幻覚であり、引き起こしているのは京だと告げていた。  

 その夏は飛鳥にとって、高校生になって初の長期休みだった。
 とりあえず七月末に高校の友人数人との海行きを計画しており、続く八月も目一杯遊ぶ、はずだった。今朝までは。
「どーなってんだかー」
 ぼそりと呟いた声は、風に流れて消えた。まだ朝の八時だというのに暑さにしおれた人たちは、誰一人として聞き咎めない。
 奈良山飛鳥。昨日で十六歳。
 癖のない黒髪に、どちらかと言えば狐顔。これで眼鏡でもかければ、絵に描いたような優等生(腹黒上等)だが、生憎と学校の成績は良くはない。
 今通う高校は、市内ではおそらく三番から五番目くらいの偏差値で、合格には家族親戚友人どころか知人にすら、一生分の運を使い果たしたな、と言われた。誰一人、実力とは言ってくれない。
 教師には散々、スポーツに力を入れている私立を勧められた。そこならば、内申書を有効活用できるというのだ。飛鳥は特待生になれるほどではないが、部活や市民大会では好成績を残している。
「っはよーございまーす」
 マウンテンバイクの速度をあまり落とさず曲がり、角に立つ警備員に挨拶を置き去る。既に飛鳥は顔パスで、初老の警備員も、おはよーさん、と、のんびりと声をかけただけだった。
 声を背で聞いて、飛鳥は駐輪用スペースにマウンテンバイクを滑らせる。施設内に入ってからはペダルはこいでいなかったとはいえ、まだ勢いのあるマウンテンバイクから体だけ飛び降り、ハンドルを掴んで前輪を空転、後輪を摩擦で止める。
 スタンドを立てると、鍵をかけようと屈みかけて、思い直してやめた。荷物はズボンに突っ込んだ携帯電話くらいで、そのまま歩き出す。
「ようボウズ、どうした朝っぱらから」
「ちょっとなー。おじさん、居ます?」
「ああ、五十崎先生なら、いつもみてーにこもっとるわ」
「そ。ありがとーございます」
 いつもなら笑えば腕白坊主になるところが、今日は、引きつったような笑みしか浮かばない。警備員が怪訝そうに首を傾げたが、飛鳥は何も言わずに建物に入っていった。
 門の横には、「タシロ褐、究所」の板(プレート)がある。
「おはようございます」
 冷房の効いた空間に、女性の涼やかな挨拶で迎え入れられる。さっきまでの運動で汗の止まらない飛鳥は、しかし拭おうともせずに、真っ直ぐに受付に向かった。
 受付に座る事務服の若い女性、田代恵梨奈に軽く目礼する。
「おはよーございます」
「おはよう、随分早いのね。五十崎さんなら、研究室にいらっしゃいますよ。今日はまだ三日目」
「…ありがと」
 叔父がしょっちゅう仕事場に泊り込むため、三日程度では誰も驚かない。行き過ぎた福利設備の一環として、浴室があるのもそれを助長しているだろう。
 普段なら田代と多少の会話を交わしてから向かうところだが、今日ばかりはそれだけで切り上げてエレベーターホールに向かった。目的地は五階建ての最上階で、飛鳥は、エレベーターの位置を示す電光の階数表示を睨みつけると、近くの非常階段に足を向けた。
 足音がいやに響くが、薄い防護壁を隔てた向こうからは、これから仕事を始めようとするかすかなざわめきが感じられた。もっともまだ八時前で、八時半が定時なのだから出社していない者もいるに違いない。
「おじさんっ」
 五階分を一気に駆け上がりそのまま、階の東端にある叔父が若くして主任についている――というよりも叔父しかいないその部屋の扉を開け放つと、そこには、カップラーメンをすするくたびれた男がいた。
 まだ三十にもなっていないというのに妙なところでおじさんらしさが板についているせいで、身なりを整えさせれば結構捨てたものではない外見をしていることにも、気付く者は少ない。
 今時見かけない大きなガラスレンズの向こうで、どこを見ているのかもよくわからない眼が、ややあってようやく、飛鳥に焦点を結んだ。しかし、その片方は、カップラーメンの湯気に曇った眼鏡に阻まれて見えない。実はそちらは、相変わらず違うところを見ているかもしれない。
「…おはよう?」
「なんで疑問形? って、そんなんどうでもいい、おじさん、俺らおかしくなってもた!」
「えーと……お前も食うか?」
「なんでやねん!」
 控えめに軽く示されたカップラーメンの容器を、距離があるのに払いのける仕草をする。そんな場合じゃないのに、体が勝手に動くのはどうしようもない。飛鳥は、はあぁと、魂ごと出て行きそうな盛大な溜息をついた。
「俺も、どう説明したらいいかわからんのやけど。今朝急に、京が…」
 わけのわからない現状で、まともに取り合ってくれそうなのはこの叔父くらいだというのに、上手く伝えられる自信がなくて、言葉に詰まる。
 飛鳥は、焦って家での出来事を思い返した。どう言葉を並べれば、この現状を正確に伝えられるものか。一歩間違えれば冗談ととられかねないだけに、頭を悩ませる。この叔父が飛鳥の発言を、信用できない、と一笑に付すことはないとしても、冗談だと疑うことはありうる。
 だが、どうにか布団に寝かせてきた京のためにも、なんらかの解決法を叔父に見つけ出してもらうしか、飛鳥に残された道はない。
「その…幻覚見せられるようになって…」
 チクショウ要らん軽口ならいつでも待ったなしで出てくるのに、と歯噛みする飛鳥を置いて、着々ともうひとつの事件は起こっていた。
「きゃーッ!!」
 階(フロア)一杯に響き渡る悲鳴。そして、それらと前後して、階下や建物の外、叔父がつけっ放しにしていたテレビなど、あちこちから似たような悲鳴が聞こえた。どれも、極限までに肺を酷使している。
 飛鳥と叔父は、緊迫した眼差しを交し合うと、廊下に近い飛鳥が扉を開け放ち、カップラーメンを置いた叔父がテレビ画面に向き合った。
 廊下に飛び出した飛鳥は、何かから目を逸らせず、今朝の京のように、窒息しそうになりながら悲鳴をほとばしらせる女性の姿を発見した。その女性の視線の先を追うと、部屋の中から、火柱がよろりと出てくるところだった。
 しばし、金縛りにあったように立ちすくんだ飛鳥はしかし、火柱が床に倒れこむと同時に我を取り戻し、廊下に据えつけられた赤い消火器を引っ掴んだ。
「救急車! 電話して!」
 白い消化剤を撒き散らしながらそう叫んだのは、倒れ伏してもなお執拗に燃え盛る火柱が、人を核にしていると知ったためのものだった。だが女性は動かず、炎は、消化剤を使い切っても鎮火しなかった。飛鳥は、炎に包まれた人がほとんど身動きもしなくなっていると知りながら、開け放されている部屋に入り込み、窓際のカーテンをむしり取った。
 天麩羅火災、つまりは揚げ物の最中に油を放置してしまったといった理由で熱の温度が上がりすぎ、炎が生じて火事に至ることがある。その際、吹き上がった炎は蓋を被せればどうにかできる。あるいは、厚い布を被せてもいい。炎から空気を切り離せば、とりあえずは収めることができるのだ。
 本当はカーテンを濡らしたいところだが、給湯室は西端で、火柱を折り返し地点にした逆側だ。数十メートルの距離もないとはいえ、今は、それが途轍もなく遠く思えた。
「水! 水持ってきて!」
 がくがくと震える女性に駄目元で声を放ち、飛鳥は躊躇なく、カーテンを広げて炎の塊に抱きついた。
 熱が痛みを伴ってやってきたが、それは既に今朝に経験している。しかも、京のものよりもはるかに弱い。無我夢中で押さえつけていると、どのぐらい経ってからか、水が浴びせられた。始めは何かがぶつかったとしか感じられなかったが、二度、三度と繰り返されるうちに、ようやく気付くことができた。
「飛鳥――」
「…おじさん。何、これ…」
 何度となく水を浴びせられ、強い熱も感じなくなり、濡れて重くなったカーテンの下にあったのは、人の形をした炭だった。
 信じられない光景に呆然と呟く飛鳥に、叔父は、言葉もなく首を振った。そっと、飛鳥の肩に触れる。
「水島さん。水島さん、悪いけど、総務の萩原課長にここのことを知らせてくれるかな」
 壁際で、燃え尽きた男と飛鳥をなす術もなく見つめていた女子社員は、叔父の静かな声に弾かれたように立ち上がり、ちらりと飛鳥たちを見て、逃げ出すように駆けて行った。
 それを視線で追って、叔父は、飛鳥の片に置いた手に力を込め、立ち上がらせた。
「とにかく、着替えなさい。俺の服があるから」
「俺――京、が…」
「京ちゃんにも連絡する」
「あかん! 京、寝てるんや、起こしたら、また幻見る!」
 咄嗟に滑り出た言葉に、叔父は一瞬戸惑ったようだが、わかった、と頷いた。
「とりあえず着替え。その後で、お前らに何があったんか、聞かせてくれ」
 実験の最中のような厳しい顔をする叔父をみて、飛鳥は、これで大丈夫と、まだ何一つ終わっていないのに安堵した。

 飛鳥の叔父、五十崎一郎は、実のところ飛鳥と血のつながりはない。だが、五十崎というのは飛鳥の母、香里の旧姓でもある。この両者に血縁はない。
 話は、飛鳥の生まれる前、母の香里が十五歳だった二十二年前の夏にまで遡る。
 夏休みのある日香里は、天文部の活動からの帰りで、明け方の町内を歩いていた。送って帰ろうか、との男子部員の申し出もあったが、兄に迎えに来てもらうと突っぱねた。ところがその後で、当時大学一回生の兄は飲み会で潰れて携帯電話に出ても寝言めいた言葉しか発しないことが判明したのだが、後の祭り。
 まあいいかと、香里は一人、てくてくと歩いて学校を後にした。普段通学に使っていた自転車は、夏休みに入ってパンクしたままなおしていなかった。
 そして香里は、通りがかった児童公園で、真剣な面持ちで水を飲む少年に出くわした。
 第一印象は最悪だった、とは、後に香里が語ったものだ。少年は、香里の視線に気付くと、ぎろりと、当時六歳という年齢には似つかわしくなく、険しい、いっそ縄張りを荒らされた獣じみた敵意のこもった視線を寄越したのだという。
 そこで香里が、そそくさと視線を逸らす、あるいは不気味がるような少女であれば今頃、五十崎一郎は存在しなかっただろう。
 香里は、自分の半分ほどしか生きていない、それどころか当時では三分の一にも満たない年齢ではないかと思わせるような成長具合の一郎少年に対して、真っ向からメンチを切り返した。
 しばし、本来であれば子どもの無邪気な声の響き渡る児童公園に、狼対虎を思わせる気迫の篭った睨み合いが続いた、らしい。
 結果として、睨み負けたのは少年だった。ふいと視線を逸らし、無表情のまま水飲みを再開させようとした少年に、香里は勝者の余裕で声をかけた。
「なあ、喉渇いてるん? うちに何か飲みに来る?」
「…ブス」
「ほほぉ。いいやろう、朝ごはんも食べさせたるわ。うちの作るご飯は、テロの域にあるって有名なんや」
 自慢にならないことを口走って、香里は見ず知らずの少年を拉致した。
 後に語ったところに拠れば、なんでも、ほぼ徹夜の天体観測に、妙なテンションになっていたのだという。しかしだからといって、子どもを攫っていい理屈にはならない。
 ところが、この拉致事件には長い長い後日談がつく。
 香里の手料理を食べさせられた少年は気絶し、まさかそこまでの破壊力が、とさすがに慌てた香里が両親を叩き起こし、とりあえず病院に運ぶことになった。そこで少年の体からは、有り余る虐待の数々が発見されることとなる。体の成長状態も著しく悪く、虐待問題が取り上げられ定番化されつつあった当時の対応として真っ当なことに、親からの養育権が取り上げられることとなった。
 それから色々な出来事を間に挟み、一郎少年は、十八歳までは養育者が養育費を受けられる保護養育対象として、その後には養子として、五十崎家で暮らすこととなった。ちなみに、一郎少年が養子になることを長々と拒んだのは、養子に入ってしまえば養育費が打ち切られるためだったという。しばらくしてそれを知った香里は、一言、「頑固者め」と、自分のことは棚に上げて口にした。
 以上が、飛鳥の知る「一郎少年が五十崎一郎になるまで」の概略なのだが、今度ばかりは、飛鳥は母の強引さに感謝した。
 これまでにも、血のつながった伯父たち以上に何かと飛鳥と京の面倒を見てくれた叔父だが、今回、この人がいなければ悲惨なことになっていたに違いない、と飛鳥は確信する。
「一応精神安定剤を出しておくけど、なるべくなら、飲ませないようにしてやれ。お前かザキがいてやるほうが落ち着くだろうし、その方が復帰もしやすいだろう。まあ、それにしたって、度を越すようならいつでも言えよ。無事なカウンセラーを探すからな」
「はい、ありがとうございます。あの…」
「うん?」
 いっそ着ない方がましでは、と思える赤黒く変色した血のついた白衣を纏った医師は、ごま塩頭の上に被ったニット帽の先のボンボンを揺らし、真っ直ぐに飛鳥を見つめた。
 あまりに異様な光景なのだが、この一日たらずで大きく変化してしまった世間を考えると、まともかもしれないと思ってしまう自分が恐い。
「ザキ…って、叔父さん、ですか?」
「ん? ああ、五十崎ってのも長いからな。イカ、って呼んだら返事をしてくれなかった」
 ザキも嫌がってそうやけどなあ…と暢気に、暢気な疑問の解決を得られた飛鳥は思った。しかし、さすがは叔父の友達だと、深く納得する。
 妙な医師は、にやりと笑った。凄味のあるそれは、剣豪のそれのようだった。もっと飛鳥は、剣豪などというものには、生まれてこの方、お目にかかったことはないのだが。
「さすがは、ザキの秘蔵っ子だ。図太い神経をしている」
 それは褒め言葉か、と突っ込みかけたがさすがに思い留まった。初対面の上に年上。更には、(多分無料で)診察もしてもらっている。いくらなんでもそれは失礼だと、疲弊しきった理性が訴えた。
 医師は気安く飛鳥の肩を叩くと、立ち上がるよう促した。
「今日は泊まってけ。それと、ザキを呼んでくれるか」
「はい。ありがとうございます」
「おう」
 満足そうに頷く様は貫禄があり、これで叔父さんと同い年なんて…老けてるなあと、至極失礼な感想を抱く飛鳥だった。
 診察室を出ると、すぐ外の待合室のソファーに座っていた叔父が、視線だけ寄越した。その肩に寄りかかる京は、眠っているのだろうか。
「叔父さん。来てくれって」
「ああ。代わって」
 そっと、いたわるような手つきで京の頭を少しだけ持ち上げ、体を移動させて飛鳥に場所を譲る。
 すぐ戻る、と言って去る背中を見つめ、飛鳥は、深く息を吐いた。本当に、叔父がいなければどうなっていただろう。
 突如日本各地で相次いだ、人体発火。それは今なおおさまらず、思い出したかのようにどこかで火柱が上がる。一度火を吹けば、考えられない速さで炭化する。それ自体の死者はさることながら、それに巻き込まれ、火傷をした人や火事になった建物も多いらしい。
 飛鳥や京、叔父に、あの医師も。いつ何時発火するかわからないのだが、そのことを考えてしまえば恐くなるだけだと、飛鳥は無理矢理にそこにつながる思考は断ち切っている。それが成り立っているのは、不可思議な現象に対するもの以外の現実的な対処を、叔父が一手に引き受けてくれているおかげだった。
 だが、京や飛鳥自身に現れた妙な能力に対してはいささか事情が変わってくる。
 一通りの診察で結果が後日に回ってしまうものはあるが、体に異常は見られないということだった。脳に一部通常の人よりも活性化している部分があるらしいが、それが以前からなのか今日からなのかは、比較対象がないためにわからないらしい。
 そしてそれらとは別に、飛鳥は、自分の能力に対して、ひとつの仮説を立てていた。これは、妙な能力の働きを見破るものではないか。
 飛鳥がはじめて人体発火を目撃してから、叔父と話をしてとりあえず車で京を迎えに行き、ひたすらにテレビを見続け叔父が各所と連絡を取り、たまに外の様子を窺い。その間に、気付いたことがあった。
 数が少ないなりにも、外を歩く人はいた。その中で稀に、京のときと同じように、唐突に「悟る」ことがあった。あの少年は暗闇でも物が見える、彼女は温度を変化させられる、といったように、そして彼ら彼女らを見続ければ、朧に、どうやればいいのかも「悟る」ようになった。
 それが一体何になるのか、何故そんなことが起こるのかは皆目見当もつかないままだが、何一つわからないよりは一歩進んだと、思いたいところだ。
「…お兄(にい)?」
「起きたか。腹、減ってへんか?」
 家を出るときに、ざっと食料や日用品はかき集めてある。人体発火で混乱し通しの世の中で、次に何が起こるかもわからない。貨幣が通用しなくなる、食料の入手が困難になる、といったことは十分に考えられるための、叔父の指示だ。
 いくつか転がっていた菓子パンは手軽に食べられるからと、今も持ち歩いている。他は、叔父が無断拝借した会社の車のトランクだ。
 京は、小さく首を振った。
「何が…起きてるん…?」
「俺にもわからん。でもな、京。お前が朝見たのは――」
 まずい、と気付いたときには遅かった。
 朝から寝たり起きたりを繰り返していた京にとって、朝の出来事は直結のものだったのかもしれない。とにかく、見開かれた瞳に、今朝見たものをもう一度映していると悟った飛鳥は、咄嗟に華奢な体を抱きしめた。
 京の能力は、幻視。接触した他者に幻を見せるものだが、今は混乱しているためだろう、己でも幻を見て、現実との区別もつけられていない。
 以前叔父に聞いたことがある。人間は、焼き鏝を押し付けると思い込ませられれば、水差しに触れただけで水ぶくれを起こしてしまうことがある生き物なのだと。あんなものを幻視し続けたら、京が火傷で死んでしまう。下手をすれば、人体発火も起こせるかもしれない。
 襲い来る炎の幻を必死に押さえ込み、飛鳥は、力いっぱいに声を振り絞った。
「京! 聞け、あれは幻や! お前はここに居る! 何にもない、いつもと一緒で擦り傷ひとつない! 京、俺がおるから!」
「…………お兄……?」
「何や」
「…さっきも思ったけど、お兄がおるとか、かすり傷とか、炎と関係ないし」
 ぎこちなく笑う。飛鳥は、力が抜けて大きく息を吐いた。抱き合った格好のせいで、京の小さな笑い声が耳元で聞こえた。
「うーん、大物だな、彼。国境無き医師団にでも放り込みたくなるんだけど、駄目か?」
「その前に、医学免許取らせる必要があるで? 飛鳥とお前にやる気があるなら、俺は止めへん」
「あーっ、一郎兄さん! ちょっとお兄、放して、放してっ!」
 暢気な叔父とその友人の声を背後に聞き、実の妹に邪険に扱われ、飛鳥はぐったりと、待合室のソファーに撃沈した。無事でよかったのに、報われない気がするのは何故だろう。

「改めて、自己紹介でもしましょうか? 株式会社タシロ創立者の孫に当たります、田代恵梨奈です」
 そう言って、受付嬢は笑った。ぽかんとした飛鳥を見て、大人びながら若々しい恵梨奈は、悪戯が成功したように小さくガッツポーズを決める。
 叔父の勤務先、田代の第二研究所、尼崎支部でのことだ。
 叔父を訪ねるたびに言葉を交わした女性は、いつもは肩に垂らした長い髪を紐一本で結い上げ、制服の白いブラウスを肘まで捲し上げていた。
「こっちは、ほんとにはじめまして、やね。京ちゃん?」
「…叔父が、お世話になってます」
「いえいえこちらこそ。うん、五十崎さんが自慢するだけあるわ」
 そう言ってからからと笑ったと思うと、笑みを収め、真面目な顔つきになる。すっと上げられた視線は、飛鳥と京の後方に立つ叔父に向き、再び飛鳥たちを捉えた。
「昨日の今日やし、正直、私も何がどうなってるのかよくわかってない。噂段階やけど、父が焼死したとも聞いてるし」
「え」
「気にせんといて。元々私とあの人は親しかったわけでもないし、ほんとのところどうなのかもわからへん。電話やって、通じるだけ大したものやってわかってても、こうも通じへんとねー。ただ、兄が社長代行になったとは聞いたし、こっちでは私の好きにしていいって許可も取った」
 ふうと、束の間天井を見上げて、恵梨奈は肩をすくめた。妙にそんな仕草が似合って、飛鳥はどきりとした。それでなくても、いつものかっちりとした格好ではなく着崩した服装に、どぎまぎしているというのに。こんな状況でも、飛鳥は青春真っ只中の青年なのだ。
 だが恵梨奈が向けた視線は、冷酷なほどに冷静だった。
「さっきまで、出来る限りのここの社員の生存確認は取った。うちで燃えた人も数人いるし、それどころじゃないのと連絡が取れないのとでここに来れそうもない人が大半。人手は、あればあるだけありがたい。少なくとも私と同程度、あなたたちの衣食住を確保する代わりに、協力してくれる?」
「何にですか」
 京が、こちらもどちらかと言えば冷たい声音で訊き返す。飛鳥は、いつもとどこか違う様子に、昨日急に表われた能力のこともあり、一人はらはらする。
「原因を突き止めたい。阻止できるものなら、阻止する。私もいつ燃え出すかわからへんから、慈善事業なんてつもりはないよ」
「具体的には、何を?」
「さあ。もう少し落ち着いてくれな見当もつかへんけど、五十崎さん、お医者様のご友人がいらっしゃるそうで?」
「ああ、さっきまでそいつのとこにおった」
「良ければ、ここを使ってもらっていいから、協力していただけませんか。他にもいくつか、既に声をかけています。これでも顔は広いんですよ。老舗は老舗ですから、うちは」
 そうにっこりと三人に笑いかけ、恵梨奈は、半ば睨みつけている京に視線を戻した。
「今考えてるのは、生き残ってる人たちの検査と焼死した人たちの検査。比較して、何が違ってたのかを調べたい。まずはそこが第一歩、やね。もっとも、具体的にどうしたらいいかは、私にはわからへんのやけど」
「人任せってこと? いい加減ですね」
「うん、まあね。その代りに、私は私に出来ることをする。そのためなら、タシロの人脈でも資金でもコネでも、何でも使うわ。もっとも、それがどのくらい有効か」
 余裕の笑みを浮かべる恵梨奈に対して、強張った表情の京は、どう考えても分が悪い。一体何にそこまで頑なになっているのかと考えかけた飛鳥に、はたと閃いたものがあった。
 京は叔父が好きだ。
 それが肉親(もっとも血のつながりはない)に対するものなのか、それを超えてしまっているのか、実のところ飛鳥にはわからない。ただ、兄の自分よりも確実に慕っている、というのだけは情けないながら自信がある。
 そして恵梨奈は、京よりも余程、叔父の隣に並ぶのにお似合いだ。
 まさか、まさかこんな事態の最中に嫉妬か。
「俺は協力しますよ。途方に暮れてましたから、渡りに船で丁度いい。二人はどうする?」
 気付いているのかどうか、叔父はしらっと、さわやかと言えないこともいえない、いつもの何か考えていないふりをして何か考えているかのような様子で恵梨奈に協力を申し込み、飛鳥たちに話を振る。
 京がどう反応したものかとはらはらして様子を窺うと、飛鳥をちらりと一瞥して、視線を俯かせた。細い指がわずかに、飛鳥の服の裾を引く。
 それは、幼い頃から変わらない飛鳥への判断の完全委託で。
 久々やなと、飛鳥は半ば状況も忘れて苦笑した。
 幼い時分から決して人見知りでも引っ込み思案でもなかった京が飛鳥に丸投げするのは、本当にどうすればいいのかわからないか、どうすればいいかはわかっていてもそうしたくないとき。これを頼られていいと取っていいのかは迷うところだが、飛鳥は、厭ではなかった。
 京がその態度を取るのは飛鳥だけで、それなら、ここにいていいと思えるから。
「確認なんですけど、断ったらどうなりますか? それと協力って、俺らに何ができますか?」
「断られたら、悪いけどここで面倒を見るとは言えへん。五十崎さんの身内やし、無事でいてほしいのはやまやまやけど、実のところ、ほんとは自分一人養っていけるとも断言できへんのが現実やし。余裕があればおってもらってもいいけど、いつまでとかの保障はできへんわ」
 さばさばとした即答は、あらかじめ回答が用意してあったのか、既に他の誰かに訊かれていたかなのだろう。恵梨奈がおそらく無意識に前髪を払った仕草が、わずかに感情を表しているようにも見えた。
「君たちにやってもらいたいのは、まずは検査を受けること。データは、多いほどいいから。あとは、そうやねえ、交代で家事と検査器具や病院の機能を持ち込んでくるなら、その手伝い、かな。雑用が中心になっちゃうけど」
「ああ、それは問題ないです。…俺らも協力したいですけど、ひとつ、条件出していいですか?」
「…言ってみて?」
 慎重、というよりは訝しげな恵梨奈に対し、飛鳥は短く息を吸った。さて、説明できるほどに落ち着いただろうか。そもそも説明は苦手だ。
「俺ら、昨日の朝から妙なことができるようになったんです。多分、超能力みたいな」
「えっ、と…テレパシーとかテレポートとか、ってやつ?」
 あまりに予想外だったのか、ぽかんとした顔には呆れの色すら見えない。その表情が幼く見えて、少し、飛鳥の張り詰めすぎた緊張が弛む。
「俺らはできませんけど、多分、田代さんが思ってるのとそう違ってないと思います。今はまだ…危ないから、証拠とか見せられませんけど、信じてもらえます?」
「…それが、条件?」
「いえ、これは前提」
 不思議そうな恵梨奈を見つめたまま、飛鳥は先を続けた。叔父や京の反応を知りたい反面知りたくなくて、いっそ不自然なほどに、恵梨奈の眼だけを見つめる。
「この能力は、人体発火と関係があると思うんです。それに、超能力を持ったことでどれだけの負担がかかるかも判りません。そのあたりの解明とフォローも、並行してやってもらえませんか」
 沈黙が降りたが、飛鳥は恵梨奈から視線を切らなかった。切れなかった、と言う方が正しい。言うことは言ったが、笑い飛ばされるか気味悪がられるか。呑んだふりをして誤魔化すくらいなら時間をかけて説得もできるかもしれないが、相手にされなければどうしようもない。
 一通りの検査は叔父の友人の岩代糺のところで受けたが、継続して受けられるかはわからない。岩代は小さな個人医院の主でしかなく、もし要請を受けて協力するようになれば、恵梨奈を無視して話を進めるわけにはいかないだろう。
 飛鳥が恐れているのは、恵梨奈に言ったうちの、体への負担だった。
 能力の制御(コントロール)も必須だが、人のいない広い空間くらい探せば見つかるだろう。何しろ、昨日から日本の人口は激減しているのだ。その上、急遽内外の人の移動を禁じる鎖国体制も取られている。これは、他国が警戒しての半ば外国からの強制でもある。今のところ、人体発火は日本列島限定らしい。
 これらの情報を把握しているのは、驚いたことに、水道や電気、ガスといった生活基盤の諸々をはじめ、放送やインターネットなどまでもが保持されているためだ。さすがに通常通りとはいかないが、地震や台風の直撃といった被害ではないためか、火事に巻き込まれたり突然のことに事故が起こったのでなければ、人手不足なだけで依然として設備自体は保たれている。
 だから今のところ、国としての体裁を保ち、各地での大規模な略奪や強奪は起こっていないということだ。もっとも。そのあたりは時間の問題だろう、とは、岩城医師の言だ。
 その混乱の中に放り込まれ、更に得体も影響も計りがたい超能力を抱えるのは得策ではない。混乱しているからこそ、京の能力は使いように寄っては防衛に役立つだろうが、使って体がどうなるのか判らないのでは話にならに。
 超能力ものの定番では、負担や原因は脳に集中している。何かあれば、そのまま生死に直結しかねない。
「正直、突然そんなことを言われても信じられへんわ」
 長いような短いような間を取った後、恵梨奈は言った。
 体の強張った飛鳥を前に、でも、と、すぐに続ける。
「今は証拠が見せられへんってことは、そのうちは見せてもらえるってことやんね?」
「まあ…制御できるようになれば、多分」
「それなら、そのときまで信じるかどうかは保留させて。解明は、取っ掛かりが判らへん以上、あたしが考えてる精密検査と一緒でいいね。そして勿論、君たちには働いてもらう。それでどう?」
「はい。それと――俺たちを、モルモット扱いはせんといてください」
 超能力者は科学者に狙われる。これも、超能力ものの定番だ。京と違って飛鳥がそういった物語を読むのは主に漫画だが、どちらにしても変わりはないだろう。
 恵梨奈は、挑発するように微笑んだ。
「それも条件?」
「お願いです。…俺が知る限りの田代さんなら、ないと思いますけど」
「うん? それは、信用してくれてありがとうって言うところ? それとも、信用ないって嘆くべき?」
 さあ、といっそ開き直った飛鳥が肩をすくめると、面白くないなあと、恵梨奈が小さくふくれた。どうにか上手くいったようで、飛鳥は、内心で大きく安堵した。
 ただ、これが正しかったのかまではまだ判らないのだが。
「じゃあ、お互いに協力するってことでいいね。さて、早速で悪いけど片付け開始。…遺体はあらかた片付けたから、生活できるようにしていきましょ。あ、その前に一服。お茶入れるわ」
「手伝います」
 叔父と京を残し、飛鳥が立ち上がった。恵梨奈は、一瞬驚いたように振り向いたが、今は歩き出しているので隣に並ぶ。
 腕まくりは掃除のためかと納得した。たしかに、仕事をする環境と暮らす環境はかなり違うだろう。中には、叔父のように職場に住み着きかねない例外がいるとしても。
「遺体って、一人でですか?」
「まさか。連絡した研究機関が引き取りに来てくれて、あたしはちょっと手伝っただけ。解剖なりサンプリングなり、やるには持って行った方が手っ取り早いからね。それより良かったん、飛鳥君?」
「はい?」
「こういうときは、女の子がポイント稼ぐものちゃうの?」
 稼ぐにも相手は飛鳥か叔父しかいないが、京が叔父相手にいいところを見せたがるのはいつものことだ。そこまで見抜いているとすると凄いなと、飛鳥は、からかうように笑う恵梨奈をまじまじと見つめた。
「ちょっと、そんなに見られると照れるんやけど?」
「あ、すみません」
「んー、そこでもう一押しあると、完璧やのに。でもまあ、それもありかなあ」
「…はい?」
「前から思ってたけど、飛鳥君、もてるでしょ」
「いやないですよそれは」
 仲のいい女の子はいるが、あくまで友達の域を出ない。だから飛鳥は大真面目に言ったのだが、恵梨奈は、ふうん、と言って一層楽しげに笑った。
「なかなか一歩踏み出せへん子ばっかりなわけか。もしかして、京ちゃんへの兄馬鹿っぷりが知れ渡ってる?」
「兄馬鹿って…普通じゃないですか?」
「いやあ、ないわ。うちも兄がいるけど、あそこまで信頼できひん。君のとこは、仲がいい。信頼して、それに応えようとして。あ、紙コップシンクの下にあるはずやから探して」
 給湯室にたどり着くと、恵梨奈は慣れた手つきでコーヒーの缶を出して鍋を火にかける。電気ポットは、使えるがとりあえず線を抜いてあるらしい。
「二人は、コーヒー平気? あ、牛乳あるからカフェオレにしよっと」
「飲めます、コーヒーでもカフェオレでも。…変、ですか?」
「え? 何が?」
「俺ら。…そんなに、変ですか…?」
 飛鳥と京は、ほとんど今は亡き祖母と叔父とに育てられたようなものだ。何しろ、父は現在行方知れずで、母はそんな父を探して中東の辺りを彷徨っている。一応、母が派遣記者という肩書きと仕事をこなしているから金銭面での路頭に迷わずに済んでいるが、それにしても、半年に一度も会えればいい方だ。
 父が行方不明になったのは飛鳥が小学校に上がってすぐのことで、二歳年下の京は当時保育園児なり立てだ。その状態で半ば育児放棄されてしまい、祖母はいてくれたが、飛鳥には捨てられたとの思いが強かった。
 父のことも母のことも嫌いではないし、母は小まめにメールもくれる。だが、それとこれとは別だ。
 当時大学生だった叔父は休みのたびにまめに尋ねて来てくれたし、勤務先も近所を選んでくれた。祖母も亡くなるまで十分に愛情を注いでもらったし、伯父夫婦も、海外勤務が決まるまでは度々尋ねて来てもくれた。
 それでも、飛鳥にはすがる何かが必要で、京に必要とされることで逆に依存した。一応、自覚はある。
 恵梨奈は、淡々と粉末のコーヒーをカップに分ける。
「過保護やなあ、とは思うけど、ありちゃう? 正直なとこ、羨ましい。あたし、父と兄とあんまり仲良くないから」
 言われて、父親が亡くなっているかもしれないと言ったときの突き放した態度を思い出す。反応に迷った飛鳥に、恵梨奈は屈託なく笑いかけた。
「そんな顔せんといて? 大体、あたしもあんまり人のこと言えへんし。弟がいるんやけど、あの子にはどうしても甘くって。さ、行こ」
「持ちます」
 四つの紙コップだけが乗った盆は重くはないのだが、咄嗟に手を伸ばす。
 今度は、恵梨奈にまじまじと見つめられた。
「やっぱり、もててへんのは嘘やわ。気付いてないだけに一票」
「だからないですって」
「どこが。顔がよくって運動できて、勉強もそこそこ。その上家事ができて気が利くって、どんな優良物件よ。あたしが同いなら逃さへんわ」
「ありがとうございます。でも、そこまで言われるとさすがに気恥ずかしいです」  
「ほんまやって!」   
 呑気に雑談をしていると、今の状況を忘れそうになる。だが、ぽつりとロビーのソファに腰掛ける京を見ると、いつも人がいる状態の建物内を見慣れている飛鳥は、そうかこれは日常とは違うかった、と再確認した。
「叔父さんは?」
「電話」
 どこか不機嫌そうな京にカップを渡し、先ほどと同じように向かいのソファに腰を下ろした恵梨奈にも渡し、見回すと受付カウンターの裏から立ち上がった叔父と目が合った。頷いて、こちらに小走りに戻ってくる。
「田代さん、電話借りました。携帯電話が不調らしくって。岩代、さっき言ってた医者ですけど、いいって」
「ほんとですか。お会いしたいんですけど、どちらに行けば?」
「ああ。今は患者さんが来て身動き取れないらしいから、夜にでも。案内します」
「ありがとうございます」
 こんな状況でも互いに「仕事仲間」を保つ二人は、よそよそしいような、逆に親しいような感じがして、飛鳥はちらりと京を窺った。妹は、大人しくカフェオレを飲んでいる。
 先ほどの恵梨奈との会話のせいか、恋愛なあ、と、飛鳥はぼんやり考えていた。
 実は飛鳥の友人にも人気の京だが、もしも叔父への感情が恋心だとして、叶うことはあるのだろうか。血がつながっていないから倫理的には大丈夫…だろうと思うが、良くわからない。しかしそれ以前に、叔父が京に対してそんな感情を抱くことがあるのか。 
 人体発火よりも超能力よりも、それの方が問題で飛鳥の想像外だ。
 砂糖をたっぷりと入れたカフェオレを飲みながら、飛鳥は、これからの日常がどんなものになるのかと考えを逸らした。
 ――超能力ものの終わり方に、ハッピーエンドってどのくらいあったっけ? 

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 そう言えばこの話、飛鳥と一郎を軸に進めようかと思っていたのに、気付けば飛鳥のみになっていたという。他の章では、あまり大人組みが出てこなくって…。

 …ところで、ここまで読んでくださっている方はどのくらいいらっしゃるのでしょうか(苦笑)。
 やー、訪問者自体が少ない上に日記って。どのくらい。
 ちなみに、一日で移るし、と言ってますが、実は明日、日記すら書くかどうか。仕事の後で薪能観に行って、(多分)友人とご飯。(多分)とつくのは、本当に誰か来てくれるかが不明なためです(爆)。誰も来なかったらご飯どうしようかなー。さすがに、九時を過ぎての居酒屋一人飯は淋しい。



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