あるところに、ネズミの父娘が暮らしていました。
(娘ネズミ)空も年頃になり、(お父さんネズミ)戻、婿を取ろうと考えます。
しかし、うちの(娘)空はとっても可愛らしい。この子を嫁にやるならば、世界一の男でなければ、と、(お父さん)戻は決意します。
そこで(お父さん)戻は、この世界をあまねく照らす太陽はどうか、と考えます。
「太陽と言うと…皇帝(昌)か…」
(お父さん)戻は考えます。
「だが、皇帝なんて代物は民のためにあるものだ。つまりは、民には弱いということになる」
(お父さん)戻、更に考えます。
「民と言えば…戒がいいか…店も持ってるしな」
ところが、問題があります。
「だが戒は、店がある分逆に官憲には弱いな」
(お父さん)戻、頑張って考えます。連想ゲームになっていることに、本人は気付いていません。
「官憲…静か?」
しかしここにも、問題があります。
「だが官憲は、上司に左右されるからな。いくら静自身がしっかりしていても、生真面目なだけに問題だ。上司と言うと…あいつ(烈)か?」
(お父さん)戻、しかめっ面になっていることに気付いていません。
「いや、あんな奴頼りにはならない。風が吹けば乗っかって飛んでいくような奴だ。それくらいなら、地道に生きている奴の方がいくらか…」
「ねえ、(お父さん)レイ?」
考え事に一生懸命になっていて、いつの間にか(娘)空が近くに来ていたことにも、(お父さん)戻は気付いていませんでした。
吃驚しましたが、相変わらずの無愛想な顔で、(娘)空を見ます。
「何だ?」
「あたし、どこにも行かなくていいよ? 一緒にいるって、言ったよ?」
「…そうか」
(お父さん)戻は、静かに応えました。
そうして、父娘は、幸せに暮らしましたとさ。
お目汚し致しました!(脱兎)
らいじょうめぐむ 作
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