ひらひらと、雪片が舞い降りる。
実際に触れたところでそれほど冷たいとも感じないのだが、記憶が勝手に「寒い」と反応する。
彰は一人、高校の屋上で降り積もる雪を眺めていた。
本来は二人以上での行動が原則だが、彰の属する「月夜の猫屋」では、単独行動のようなものが多い。
複数で行動するのは、各々を監視するため。どこで、いつ誰が暴走するか判らないのだから、その必要は厭というほどにわかっている。
わかっては、いる。
「ああ、寒いなあ」
呟きをこぼして、彰は、両手に息を吹きかけた。
今日の仕事は、仲間の勧誘だ。死してもなお、強固に在り続けられる者たちに話をして、「この世」で働く選択肢を告げる。これも、大事な仕事だ。
その選定基準を、予想はしても断言できる者は一人としていないのだが。
「あ」
雪に埋もれる地上に、一人の少女が姿を現した。
彼女が、今回の勧誘対象。
彰は、彼女がこれから死ぬのを見守らなければならない。
「…寒いなあ」
ぽつりとつぶやいて、雪の降る空を見上げた。
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