とろりと、濃い闇に抱かれて、半ば眠るようだった。
あれのいなくなった世界では、起きていようと眠っていようと、死んでいるのと変わりがない。では、厭なものを見なくていいだけ、眠っていたほうがましだ。いっそ、死ぬことを許して欲しいと、そう、思ったこともあった。
「どうか――生きてください」
貴方に死なれては困るのですと、その声は告げた。感情を出さないよう努力していそうな声音で、妙に可笑しく、馬鹿馬鹿しかった。
「生きて。いつかは――貴方にも、救いがくるかもしれない」
耐え切れず歪んだ声は、そう告げた。
ただとろりとした闇の中で、確かにその声を聞いた。