「ほい、完了」
「スゴイスゴイ、ありがとう!」
小さく跳びながら礼を言う少女に、真は小さく苦笑した。まさか、自転車を直したくらいで「すごい」と言われるとは思わなかった。しかも原因は、ゴムチューブのムシが傷んでいただけという、簡単なもの。
――ま、それで金もらえるし感謝してもらえるんだから、こっちとしちゃありがたいけど。
決して嫌味ではなく、そう思う。つい、「騙されるなよー」といって頭を撫でたくなるが、ここでそれをしたら、セクハラ、あるいは変態としてとられかねない。
「すごいね、本当に何でもできるんだ!」
――いや、何でもってのはさすがに・・・・。
賢明にもその言葉を呑み込むと、真は笑顔で「ありがとう」とだけ返した。
笑うと、つり目できつい印象を与えている顔が一気に優しくなるのだが、本人はそれを知らない。少女は、一瞬動きが止まり、思いがけず良いものを見た、と内心ほくそえむ。後で、思いっきり自慢してやろう。
「あ、俺部室行かなきゃ。鷺沢さん、報酬・・・・」
「はい、これ。一枚で良かった?」
「うん。これからもよろしく。よかったら、友達とかにも宣伝しといて? じゃ」
食券を受け取ると、真はゴミと化したムシや傍らに立てかけていたかばんを手に、軽やかに走り去っていった。
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